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66.66% プリンセスの条件は『可愛い』だけですか? / Chapter 14: 「鏡よ鏡、わたしの価値は?」

Capitolo 14: 「鏡よ鏡、わたしの価値は?」

アイズリンは、ただ救出を待つという筋書きが大の苦手だった。筋はわかりきっている――のんびり構えていれば、やがてアリス(=プリンス・ジャストリアン)が助けに来て、そのまま結婚一直線。それだけは避けたい。

そこで彼女は、思いつきのアドリブにヴェクサリルがどう反応するか試してみることにした。いたずらっぽく目を細め、わざと軽く言ってみせる。

「ねえ、あなた……ちょっと可愛いかも。――あなたと結婚するわ」

ウォーロックの顔がみるみる真っ赤になる。

「そ、そんなこと言っちゃダメだ!」しどろもどろに抗議し、あわてて悪役らしい威厳を取り戻そうと咳払い。「君は“真実の愛”に救われると確信してる、って言う台詞だろ? ……もう一度やり直そう。結婚か、死か。どちらを選ぶ?」

アイズリンは、**「私をどれだけバカだと思ってるの」**という顔をはっきり浮かべた。

「死は選ばないわ」平板に言い切る。「死を選んだら、救出待ちを強制される。さっき“待ちたくない”って言ったばかりでしょ」

「でもそれが話の要じゃないか!」ヴェクサリルは情けない声を上げ、悪辣な雰囲気がボロボロ崩れる。「救われなきゃ結婚できない。君はプリンス・ジャストリアンと結婚したくないのか?」

「したくない!」アイズリンは思わず語気を荒げた。「高校の頃、彼は一番の親友だったの。結婚なんてしたら……変でしょ」

ヴェクサリルはしばし呆然。それから心外だと言わんばかりに叫ぶ。

「冗談だろ? 完璧な設計図じゃないか! 君はすでに彼を知っていて、彼はおそらく勇敢で魅力的。謎がない! 相手の素顔を探る時間もいらない! 親友同士ならきっとうまくいくに決まってる!」

「そういう見方もあるでしょうね」アイズリンは肩をすくめる。「でも私は別の見方をするの。三年生のとき、アリスは読書中に、隣の子にそそのかされてペーパークリップを鼻に突っ込んで救急に運ばれたの。入れたはいいけど出せなくなってね。――私は鼻腔からクリップを外科的に取り出された男と、結婚したいかどうかは、正直確認したくないわ」

「……なるほど、一理ある」ヴェクサリルは観念したようにうなずく。「だが私に何を期待している? 私は南グリメリア大学(USG)と正式契約している。君を拉致して“救出”を可能にする――そこまでが仕事だ。結婚したくないなら王子に言え」

「彼にも決定権はないのよ」アイズリンは即答する。「誰にもない! だったらあなたと結婚してよ。そしたら彼はできない。あなたがグレロリアを掌握できる。欲しいだけ魔法杖が手に入る」

「世の中、そう単純じゃない」ヴェクサリルは渋い顔。「“結婚しろ”は台本のセリフに過ぎない。本気で王になりたいなら王子学校へ行ってたさ。私の志望職種は悪一択だ」

アイズリンはわざとらしく唇を尖らせる。

「政治力と魔術的富だけの女じゃないのよ、私」

またもやヴェクサリルの耳まで赤くなる。――この自称・大悪党を赤面させるのは、なかなか楽しいとアイズリンは学び始めていた。

「光栄だが、妻は募集していない。仮に探すとしても、もっとそそる邪悪さが必要だ」

「何言ってるの」アイズリンは鼻で笑う。「うちの姉は現役の魔女よ。あなたの十倍は悪いわ。それでいて子犬と子猫の保護施設でボランティアしてるの。本物の悪なんて、あなたには一生出会えない。だから絶世のプリンセスで我慢するのが、あなたの最善手」

「絶世のプリンセス?」ヴェクサリルが目を瞬かせる。「悪気はないが、どう見ても君は**“プリンセス顔”**じゃない」

「そっちこそ白馬の王子って柄じゃないでしょ」アイズリンが即座に刺す。

「その通り!」ヴェクサリルは両手を掲げて宣言する。「私はプリンセスと結婚したくないし、王子にもなりたくない! ――だからもういい、泣くなり怯えるなり、台本どおり何でもしてくれ。距離を置きたい。階段はあっちだ。好みでいいから空いてる寝室に入れ。私の部屋以外で」

最後の苛立ち混じりの一言に、アイズリンは思わず吹き出す。ヴェクサリルは同時に顔を赤らめ、目を白黒させた。彼が敗走するように部屋を出ていくのを見届け、アイズリンは示された廊下へ。階段を上り始めると、徹夜の負担が一気にのしかかる。――ここでぐっすり眠れたらどんなにいいだろう。

  * * *

夜通し、あの馬は大学からヴェクサリルの城まで彼女を運んだ。――そして翌日。アイズリンは炎天下を何時間も歩き続けているのに、見覚えのある地形がいっこうに現れない。あの馬、魔法で加速されていたに違いない。振り返っても赤土に残るのは自分の足跡だけ。城はとっくに地平線の向こうへ消えた。

歩きながら、彼女は拙速な脱出計画を疑い始める。水と食料は心許ない。この砂漠がさらに続けば、すぐに尽きるだろう。足跡は帰路の目印になるとしても、砂嵐が一つ来れば跡形もなく消え、望まぬ本当の危機にさらされかねない。――日没までに人里へ着けなかったら引き返す、と自分に誓う。

さらに数時間。遠い岩肌に洞窟の口――黒い穴――を見つけた。蜃気楼かもしれない。が、涸れかけの水筒を救う湧水の可能性でもある。アイズリンは駆け足になる。

近づけば、それは確かに実在し、岩も確かな硬さで彼女の手を受け止めた。内部はひんやりとして、灼熱の太陽からの甘い救済。彼女は誘われるように闇へ身を滑らせる。……が、水の気配はない。

ほどなくして、何か硬いものにぶつかった。目がまだ闇に慣れていない。輪郭が現れた瞬間、アイズリンは反射的に一歩退く。――像だった。しかも精巧を極めた像。片手にランプを掲げ、足を踏み出したその瞬間を切り取った男の像。造形の見事さに小さく笑みをこぼし、彼女は先へ進む。

奥へ進んでも、不思議と見える。通路の両側に像が並び、洞窟の壁自体が微かな光を放っているかのようだ。興味をそそられ、アイズリンは歩を速める。

やがて狭い通路が大空洞へと抜け落ちた瞬間、彼女は重大な過ちに気づく。

――巨大な蛇が、隅で眠っていた。全長は百フィートはあろう。だが普通の蛇と違い、後脚はなく前脚だけが太く強靭。トカゲと蛇を悪趣味に掛け合わせたような、おぞましい姿。

教本で見たことがある。メデューサはかつて地上をさまよった。髪の代わりに生きた蛇をいただく女怪。その顔を直視した者は、瞬時に石化の恐怖に陥る。多くは怪物や英雄に討たれ、残りは忽然と姿を消した。

伝承によれば、メデューサが討たれると髪の蛇は彼女から離れ、やがてコカトリスへと成長する。コカトリスは生まれつき盲目だが、その眼差しにはなお石化の呪いが宿る。ドラゴンやケンタウロス、オーガのように人と折り合いをつけ物語に出入りする種とは違い、コカトリスは独善的に生き、今も残る数少ない“本当に危険な”生物の一つとされる――。

アイズリンは気づかれぬようそっと後ずさる。逃げ切りたい。……遅かった。コカトリスが目を覚まし、巨大な頭部をもたげ、彼女の方へ向き直る。アイズリンは慌てて視線を逸らす。幸い、怪物の瞼は固く閉ざされたまま。

ずるり、ずるり――引きずり半分、匍匐半分の巨体が迫る。それが彼女を脅すのではなく、探しているのだと気づいたとき、恐怖は一段深くなる。――餌を。アイズリンは踵を返し、一目散に走る。振り返れば、コカトリスは恐るべき速度で距離を詰めてくる。洞口を飛び出しざま、振り返りざまに砂を一掴み投げつけるが、怪物の顔面は無傷。

喉奥がぱっくり開いた瞬間、アイズリンは死を覚悟した。

――燃える矢が一直線に飛び、顎を正確に貫く。間髪入れずさらに三本。甲高い絶叫を上げ、怪物は洞窟の闇へ退く。必死に呼吸を整えながら、アイズリンは背後を振り向く。救い主は誰――。

黒い翼の馬が荒れ地へ静かに着地し、ヴェクサリルが馬上から身を翻す。アイズリンは迷わずその胸に飛び込み、声を張り上げる。

「わたしの英雄! 助けてくれてありがとう! これでプリンス・ジャストリアンには救いようがないわね。ウォーロックとプリンセスの結婚なんて前代未聞だし、あなたが責任取って家まで送ってちょうだい。――まあ、残念だけど」

ヴェクサリルは居心地悪そうに彼女を引き剥がす。

「ノーだ」きっぱりと言う。「いまのは台本外の本物の危機。契約に基づけば、君の担当王子が来るまで解放はしない。――さあ戻る。急げ」

アイズリンは唇を尖らせながらも、翼馬にまたがる。今度は自由な両手で、彼の背にしっかり掴まれるのが少し嬉しい。

飛び立つ前、ヴェクサリルが振り返り、皮肉っぽく忠告する。

「二度と逃げるな。この砂漠には、コカトリスなんかよりはるかに危険なものが、腐るほどいる」


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