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3.57% 俺、感情回収師。始まりは神の涙を回収したことだった / Chapter 1: 第一章:感情が死んだ僕と、神様の涙
俺、感情回収師。始まりは神の涙を回収したことだった 俺、感情回収師。始まりは神の涙を回収したことだった original

俺、感情回収師。始まりは神の涙を回収したことだった

Autore: stand_The_last

© WebNovel

Capitolo 1: 第一章:感情が死んだ僕と、神様の涙

感情に、色と形があるのだと知ったのは、いつからだったか。

僕、神木凌(かみきりょう)の世界は、他人とは少しだけ違って見えている。例えば、持ち主とはぐれた子供の傘には、淡い水色の《悲しみ》が霧のようにまとわりついているし、卒業式の後の教室には、桜色の《感謝》と、ほんの少しの《寂しさ》がキラキラと舞っている。

それは、モノや場所に残された、誰かの想いの残滓。

僕だけが一方的に見えている、この世界の秘密。だが、それだけだ。僕にはそれが見えるだけで、感じ取ることはできない。まるで分厚いガラス越しに、色鮮やかなサイレント映画を観ているように。喜びも、怒りも、哀しみも、僕の心を揺らすことはない。

医者はそれを「感情疏離症(かんじょうそりしょう)」と呼んだ。幼い頃の事故が原因らしい。それ以来、僕の心は静かに凪いだままだった。

「神木くん、そっちの棚、お願いできる?」

凛、とした声に我に返る。声の主は、この古物店『時のかけら』の店主、月読(つくよみ)さん。黒曜石のような瞳と、腰まで届く長い黒髪が印象的な、年齢不詳の美しい女性だ。

「はい、今やります」

僕は埃っぽい棚に並べられたガラクタ――もとい、古物たちに手を伸ばす。古い懐中時計からは持ち主の《焦燥》がチクタクと漏れ出し、欠けたティーカップには穏やかな《追憶》が湯気のように立ち上っていた。

いつも通りの、無味乾燥な光景。

その、はずだった。新しく入荷したという木箱の中身を整理していた、その時。

指先に、奇妙な『無』が触れた。

感情が見える僕にとって、『無』は何よりも異質だ。全てのモノには、多かれ少なかれ感情の痕跡が宿っている。それがないというのは、生まれたての赤ん坊か、あるいは――死体か。

木箱の底で、それは静かに横たわっていた。何の変哲もない、手のひらサイズの黒い石。表面には、一本の深い亀裂が走っている。

そこからは、何の感情も発せられていなかった。それどころか、周囲に漂う微かな感情の光さえも、その亀裂に吸い込まれているように見えた。まるで、小さなブラックホールだ。

何故だろう。目が離せない。僕は無意識のうちに、その黒い石をそっと手に取った。

瞬間。

世界が、反転した。

――ゴウッ、と音を立てて、景色が歪む。古物店の薄暗い照明が消え、視界は漆黒の闇に塗り潰された。

なにが――?

思考が追いつかない。次の瞬間、闇の中に巨大な『何か』のイメージが浮かび上がった。それは星々を束ねた銀河のようであり、生命の全てを内包した神のようでもあった。

そして、感じた。

今まで一度も動いたことのなかった僕の心が、無理やりこじ開けられ、直接感情を流し込まれるような感覚。

それは、途方もない《哀しみ》だった。

星が砕け、月が落ち、生命が塵に還っていく。愛する者たちが次々と消え去り、守るべき世界が目の前で崩壊していく。永遠とも思える時間の中で、たった一人、取り残される絶望。

それは、一人の人間が到底抱えきれるようなものではない。神話級の、原初の《哀しみ》そのものだった。

「あ……がっ……!」

喉から意味をなさない声が漏れる。涙が、僕自身の涙が、頬を伝った。感情を失ってから、初めて流した涙だった。

意識が遠のきかけた、その時。

【ピロン!】

頭の中に、無機質な電子音が響き渡った。

【神話級・超高濃度感情――《永久の哀(とわのあい)》を検知!】

【感情回収システム、起動条件をクリア。これより、回収を開始します】

え? 回収? システム?

僕の疑問を置き去りにして、手の中の黒い石が眩い光を放った。亀裂から溢れ出したのは、一筋の、涙の形をした青白い光。それはまるで生きているかのように僕の指先から腕を伝い、すぅっと胸の中に吸い込まれていった。

【回収成功! 『神の涙』の欠片×1 を獲得しました!】

【おめでとうございます、宿主(ホスト)。『感情回収システム』が正式に起動します】

立て続けに脳内に響く声と共に、僕の視界の隅に、半透明のゲーム画面のようなウィンドウが浮かび上がった。

【宿主(ホスト):神木 凌】

【保有感情ポイント:0】

【スキル:未取得】

【回収物:『神の涙』の欠片×1】

「……は?」

呆然と呟く僕の目の前で、光を失った黒い石はパラパラと砂のように崩れ、指の間からこぼれ落ちていった。

「神木くん?」

背後から、月読さんの声がした。いつの間にか、彼女は僕のすぐ後ろに立っていた。その黒曜石の瞳が、僕の顔と、手の中にあったはずの石が崩れた残骸とを、意味ありげに見比べている。

「あなた……一体、何を“視た”の?」

彼女の声は、普段の穏やかさからは想像もつかないほど、鋭く僕の心に突き刺さった。


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