Capitolo 12: 第12章 私のボスは百科事典
「長谷和真はどこだ？」
小林優子は長谷光臣が自分の仇を討ちにやってくるかと思ったが、逆に彼女以上に怯えた姿を見て、反抗する勇気もなくなり、上階を指さしながら苦しそうに言った。「上に……二階に……」
安藤綾は子供を抱えたまま、矢のように二階へ駆け上がった。
運転手は呆然と立ち尽くしていた。まさかこんなに簡単に二人を黙らせるとは。突然肩を叩かれ、振り向くと明石誠の姿があった。
「明石特別補佐？なぜここに？」
明石の表情は複雑だった。
先ほどの安藤綾が相手を脅す場面を全て目撃していた。数日見ないうちに、こんなに大きく変わるとは思わなかった。
「先に車で待っていろ」
運転手は「はい」と答え、外へ出て行った。
明石は床に倒れ、まだ我に返っていない小林夫婦を冷ややかに見下ろし、鼻で笑いながら携帯を取り出し電話をかけた。
……
とある海の島。
長谷修彰は電話を切った。
明石の言葉に驚いたものの、彼の心の中では別の疑問が渦巻いていた。あの女はいつからベルトをあんなに上手く解けるようになったのか？
しかも音もなく？
長谷修彰がこの深遠な問いについて思案していると、外から騒がしい声が聞こえてきた。
唐沢の声はとりわけ耳障りだった。「ハハハ……野草を少し採りに行っただけだよ。え？これらの草？食べられないでしょ？俺たちも知らないから、ボスに見せようと持って帰ってきたんだ」
「え？俺たちのボス？あの人は生ける百科事典だからね」
長谷・百科事典・修彰「……」
洞窟の入り口を覆う黒い布が外から持ち上げられ、長谷修彰が顔を上げると、興奮した表情の唐沢と松本朝陽が風のように駆け込んできた。
「ボス、本当にすごいです！マジで！本当に石油が作れるんです！」
唐沢は写真に写っていたのと同じ植物をしっかりと握りしめていた。一見しただけでは野草と変わらないが、この植物は水で栽培でき、繁殖力も非常に強い。つまり、今後石油という希少資源を長谷家では永遠に不足することはないということだ！
しかも、あの地域以外では世界最大の石油供給者になるだろう！
未来の姿を思い浮かべると、いつも冷静で慎重な松本でさえ、少し興奮を抑えきれないようだった。
しかし長谷修彰は何事もなかったかのように平然としていた。
「みっともない」
長谷家が金に困っているわけでもあるまい。
唐沢の年収も億単位だ。ただ儲かる方法を見つけただけで、そんなに喜ぶことなのか？
唐沢は長谷修彰の氷のような眼差しに触れ、唇の笑みはゆっくりと消えていった。
「すみません、ボス。調子に乗りすぎました」
長谷修彰は黙ったまま、携帯を少し操作した。
「国内の者と連絡は取れている。だが今はまだ帰らない」
松本はすぐに言った。「ボス、今のあなたの怪我では帰るのは適切ではありません。しかし長谷本家の方は……」
長谷修彰は何かを思い出したように、唇に少し笑みを浮かべた。「心配ない。乱れはしない」
松本と唐沢は思わず目を合わせた。乱れ、乱れないだって？
明石や西村が本家を守っているとはいえ、彼らがどれほど長谷修彰の側近として高い地位にあっても、修彰が行方不明になれば、以前から長谷家を狙っていた連中は彼らが長谷修彰の部下だろうがお構いなしだろう。
今、長谷家でことを任せられるのは長谷夫人だけだ。
しかし長谷夫人といえば……言わずもがな！
「ボス……」松本が何か言いかけたが、長谷修彰はすでに手を振っていた。「休むぞ」
二人はすぐに立ち上がった。「では、どうぞお休みください」
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