逃げようと振り返った瞬間、窓の外から雪豹が悠然と入ってきて、あどけない表情で行く手を塞いだ。
「嫌なことほど起こるものだわ!」
逃げ道を断たれ、後ずさりした彼女の背中は、後ろにいた男の逞しい胸にぶつかった。
佐藤直樹の視線が彼女の細くて柔らかな耳たぶに落ちた。山本陽子は慌てて振り向き、化粧っ気のない幼い顔が、彼の体内の血液を沸騰させ始めた!
少女特有の香りが彼の心をかき乱し、わずかに残っていた理性が少しずつ消えていった。
前には敵、後ろには追手!
左の窓は森へ続き、狼の群れが待ち構えている!
彼女は方向を見定めて右側の階段へ駆け出そうとしたが、あろうことか、隣の男の方がさらに速かった!
逃げようとした瞬間、彼はすぐ前に現れ、彼女はその胸にぶつかってしまった!
柔らかな小娘がもがく様子に、佐藤直樹の目は細かい光を宿し、体の内側から消えない炎が燃え上がった。
知らせを受け、副官の鋭一と野村が慌てて駆けつけてきた。
リビングに足を踏み入れた瞬間、窓際で佐藤若様に押さえつけられ、弄ばれる少女の姿が目に入った。衝撃的な光景だった。
傍らでは雪豹が陽子の逃げ道を塞ぎ、虎視眈々と狙っていた。
今の陽子は、まな板の上の肉のように、どうすることもできなかった。
二人は目を見開き、この状況に完全に困惑していた。
「助け...」窓に押し付けられたまま乱暴に口づけされ、陽子は驚きと恐怖に襲われた!
驚いたのは、この男の荒々しく横暴な動きで、まるで彼女を引き裂いて丸呑みにしたいかのようだった!
恐ろしいのは、飼い主同様に悪質な雪豹の存在!
こんな未熟な少女をいじめるなんて、本当に悪党の手先だわ!
圧倒的な力の差に、彼女には抵抗の余地もない。
仮にあったとしても、目の前の雪豹がいる限り逃げられない!
二人の部下はこの状況に立ち尽くし、退くにも進むにも迷うばかり。
やっとのことで彼の熱い唇から解放された陽子は、息を切らしながら二人の部下に向かって叫んだ。「早く来て...あなたたちの佐藤若様は薬を盛られたのよ!」
野村の方が冷静で、主人の異常に気づき、慌てて鋭一を引っ張ってリビングに入った。
「出ていけ——」
直樹は体内の火を抑えながら、片手で窓ガラスを支え、陽子を押さえていた手を緩めた。
野村と鋭一はぴたりと足を止めた!
解放された瞬間、陽子は反射的に逃げ出そうとしたが、雪豹を見て足がすくんだ。
目前の男を見上げると、半分意識を失いかけながらも薬の効果と戦い、男らしい強靭さを保っていた。
一瞬、彼女はかつて雪山で彼女を救った勇者のことを思い出した。
高山病対策の研究のため、助手と共にチベット高原に向かった時、通りかかった勇者に助けられなければ、雪山に葬られていただろう。
こんな正義感のある男を、彼女は無視できなかった。
手を伸ばし、彼の頸動脈に触れた。
ツボを確認し、拳を固めて強く一撃を加えた。
野村は気を失った佐藤若様を素早く受け止め、窓際で息を整える少女を驚きの目で見た。
「あんた…うちのボスに何をした?!」
「一時的に気絶させただけよ。ベッドに運んで、医者を呼んだ方がいいわ。この媚薬は女性がいないと解消できず、薬もない場合…えっと…」
彼女はズボンの下をちらりと見て、顔を赤らめた。
言葉にしなくても、部下たちは彼女の視線で意味を理解した!