李慕慕は本を受け取り、本はかなり古くなり、明らかに何度も読まれた跡が残ってあることに気づく。中の注釈は力強い筆跡で、とても美しかった。
「これらの本は……」李慕慕は顔を上げて尋ねる。「誰かが残したものですか?筆跡が力強くて、とても美しいですね。」
「以前、尚卿が読んでいた本だよ。ちょうど柏遠に使わせることができったわ」顧お母さんは笑いながら説明する。
李慕慕は原作で顧尚卿が田舎者の荒々しさをちっとも持たず、詩書を腹に秘めていたと書かれていたことが思い浮かべる。なぜかについては詳しく書かれていなかった。
李慕慕はかつて作者に対して、主人公に良いイメージを付けるためにそこまで無理する必要はないと文句を言ったこともある。
しかし、主人公は確かに学問を学んだことがあるとは思ってない。
「あの頃は尚卿一人だけを学校に行かせるのが精一杯だったのよ」と顧お母さんは説明する。
顧尚勇は頭をかきながら言う:「俺と次の弟は元々勉強向きじゃない。力はあるから畑仕事をするだけさ」
顧お母さんは微笑んで言う:「尚卿は勉強の才能があって、特に飲み込みが早かったわ。本来は科挙を目指していたのよ。でも後にお父さんが体調を崩して、薬を買ってあげるため、家ではもう尚卿の勉強を支えることができなくなったの。尚卿も家の事情を理解して、何も言わずに一緒に畑仕事を始めたわ。その後、お父さんの体調が良くなって、家の状況も少し楽になった。でも尚卿はもう学校に戻らず、ただお金を貯めて本を買って独学していたの。今回徴兵されなかったら、科挙を受けるつもりだったわ」
「なるほど」李慕慕は頷ぎ、原作の主人公は作者によって博学で機知に富み、兵を使うことに長けていたと書かれていたことが納得できる。
李慕慕は『大學』から数句を選んで柏遠に尋ねると、柏遠はすべてすらすらと答えることができる。
状況を把握した李慕慕は王翠珍に言う:「お姉さん、明日は柏遠をいつも通り学校に行かせましょう。私たちはこっそり後をつけて、あの秀才が一体どういう人物なのか見てみましょう」
「明日直接行けばいいじゃない。なぜこっそり後をつける必要があるの」と王翠珍はぶつぶつ言う。
「柏遠の話によると、あの秀才は柏遠を追い出そうとしているの。明日柏遠がまた来たのを見たら、きっともっとひどいことを言うでしょう。運が良ければ、他の生徒が秀才に賄賂を渡すところも見れるかもしれない。そうしたら現行犯で捕まえる。秀才が柏遠に言った言葉で彼はひどく傷つけられているよ。それが広まったら、みんな柏遠は勉強に向いていないと言うでしょう。でも実際はそうじゃない。」
李慕慕は冷たい声で言う:「あの秀才は私利私欲のために柏遠のような小さな子供を傷つけるなんて、絶対許せないわ!彼にも苦しい思いをさせないと!今後誰が自分の子供を、人柄の悪い人のところに送って勉強させるでしょうか。そんな人が何いい事を教えると思えるの?」
「まあまあ、私はただ柏遠のために正義を求めたいだけなのに、あなたは秀才の生計を断とうとしているのね」王翠珍は無意識のうちに後ずさりする。
義理の妹は本当に恐ろしい!
今日、彼女は李慕慕を怒らせるようなことを言ったり、したりしていないね?
いや違う、今朝は李慕慕が働かないことに不満を持っていたのでは?
李慕慕:「……」
なぜ王翠珍がこんな恐れの表情を見せるのだろう?
「へへへ……」王翠珍は無理に笑い、慎重に李慕慕の方へ二歩近づく。明らかに恐れながらも近づいて機嫌を取らなければならない様子で、「あの……慕慕ね、私はただ性格が荒っぽく、考えずに物を言うタイプなの。もし何か言ったり、したりして機嫌を悪くさせたら、気にしないでほしいわ。素直に私に言ってくれれば、やり直すからね!」
李慕慕:「……」
「お姉さん、何を言っているんですか。あれは秀才が柏遠をいじめたから、私たちは柏遠のために正義を求めようとしているだけじゃないですか?」李慕慕は弁解する。
しかし王翠珍はかえって心配そうになる。「安心して、私たちは家族なのよ、絶対にあなたをいじめたりしないわ!約束するわ!」
王翠珍はマジで天に誓おうとしている。
李慕慕:「……」
どうして話が伝わらないのだろう?
彼女は本当にとても優しい人なのに。
*
翌日の朝早く、李慕慕は王翠珍を連れて顧柏遠を学校に送った。
学堂に近づくと、李慕慕は顧柏遠を先に行かせ、注意させる。「いつも通りに学堂に入りなさい。私たちがついてきたことは誰にも気づかないように。安心して、私たちは学校の外にいるから、絶対あなたが損をすることはないわ」
「それと、本日もし秀才があなたをどんなに罵っても、気にしないでね。彼の言うことはすべてたわごとだから!」
顧柏遠:「……」
三叔母がこんなに粗野な言葉を使うとは思わなかったが、それを聞くととても心が軽くなる。
「三叔母の言う通りにします」顧柏遠は力強く頷く。
顧柏遠が小さな足で歩いていくのを暫く見届けてから、李慕慕は王翠珍を引っ張って学堂の外に向かう。
李慕慕はすぐに立ち聞きの場所を探すのではなく、まず学堂の周りを一周して見る。
「早く壁の隙間から立ち聞きしないで、ここでぐずぐずしながら何してるの?」王翠珍は焦って促す。
「待ってて」李慕慕は王翠珍を引っ張って、飴葫蘆の行商人の前に行く。
「おじさん、毎日ここで商売しているんですか?」李慕慕は尋ねる。
「ああ」おじさんは二人の服装を見て、素っ気なく答えた。「一本欲しいのか?」
「一本いくらですか?」
「ふふ、高くないよ、二文だ」
「高くないですって?」王翠珍が叫ぶ。
「砂糖が高いんだ。俺は小さな商売だから、本当に儲けなんてほとんどないよ」おじさんは不機嫌そうに言っている。
李慕慕は考えてから、ポケットから二文を取り出す。
彼女は結婚したばかりで、顧尚卿もいないので、顧お母さんが彼女を心配して十文あげた。今日町に来て、欲しいものがあったら買えって。
「お母さんからもらったお金で、こんな無駄遣いするなんて!」王翠珍はそれを見て不満げになる。
李慕慕は自分でお金を稼がず、家に金も入れていないのに、お母さんが逆にお金をあげるなんて。
自分の家で稼いだお金の半分以上をお母さんに渡さなければならないことを思うと、王翠珍の心は少し機嫌悪くなる。
李慕慕は何も言ってない。この行商人に少し利益を与えなければ、彼から無料でそんなに多くの情報を教えてもらえないだろう?
行商人から飴葫蘆を一本受け取り、李慕慕はさらに尋ねる。「学堂の隣で飴葫蘆を売っていると、商売は良いでしょう?」
「まあまあだね。学堂の子供たちは家の状況がみんな悪くないから、少しの小遣いを持っている。放課後に通りかかると、時々一本買っていくのよ」行商人の飴葫蘆を買ってあげたので、李慕慕の質問に喜んで答え、最初よりもずっと態度が良くなっている。
「では、きっとこの学堂についてよくご存知ですね。私たちは子供の先生を探しているんですが、ここの先生はどうですか?」李慕慕はさらに尋ねる。
行商人は李慕慕と王翠珍の服装をじろじろ見ながら言う:「あなたたちは裕福な家庭ではないようだから、子供をここに送らない方がいい。お金の無駄使いだよ」
「どういうことですか?私たちは裕福ではないかもしれませんが、子供に勉強させて将来出世させたいんです。聞き込みしたら、この近くにはこの先生しかいないと聞きました」李慕慕は急いで言う。
「ふふ、彼のところで勉強するのに、学費を払うだけで十分だと思ってるのか?」行商人は今のところ商売もないので、李慕慕というお客にはまだ親切だった。「俺は毎日ここにいて、たくさん見ているんだ。あの秀才は有名な金次第の男だ。お金持ちの家の子供が彼に良い物をくれると、彼はその子に優しくして、特別授業までしてあげる。お金のない家の子は無視しているんだ。中に一人の子供がいるんだが、家はあまりお金がなくて、学費以外は何も渡せない。あの秀才は毎日他の子に特別授業をするから、他の子は当然早く学べる。そのお金のない子は進度について行けず、毎日秀才からバカだと罵られている。彼を罵る声は周りの私たちにも聞こえる程だ」