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42.1% 異世界学園のファンタジスタ / Chapter 8: 1-8 白いジュエルナイト

Capitolo 8: 1-8 白いジュエルナイト

 時間は少し遡る。

 飛行する赤いジュエルナイトから林に飛び込んだ一つの影。いくら速度を落としたとは言え、常軌を逸した行動を取ったのは齢十五歳の少年だった。

 少年――六花は落下の勢いを利用して足場になる太い枝から枝へ飛び移り、時には細長い枝を掴みターザンスイングを決める。そんな雑技団も顔負けなアクロバティックな動きをしても表情一つ変えないのが六花である。

 林に飛び込んで数秒後、それを見つけることが出来た。

 片膝を着いた鋼色の巨人。人間の骨格と筋肉を模したその巨人は胸のハッチを開けて主を今か今かと待っている。

 暗殺者としてではなく、騎操師として初めて操縦席に座る。

 不思議と操縦桿を握る手に力が入る。

 

「行こう!」

 

 六花は真っ直ぐ前方を見詰める。魔導結界炉が稼働し、脊髄が震えるような重低音がコックピット内に響き渡る。全天周囲モニターも起動して外の世界を映し出す。言葉通り操縦席を囲うようにモニターがついているため、起動すると浮いているように錯覚してしまう。

 もちろん画質もとびっきりいい。元の世界『地球』でも普及して欲しい技術だ。

 心に余裕も生まれたところでジュエルナイトが六花の固有波動を感知する。

 直後、素体状態のジュエルナイトの全身が光り輝く。瞬く間に透明の宝石のような装甲が纏われ、額からは鬼のような二本の角が生える。背部からは先端が鋭利に尖った生物的な尻尾が伸び、右へ左へとうごめく。最後に装甲が白色に勢いよく染まり変貌を終える。

 尻尾が生えた全長十五メートルの白い鬼人。

 それが六花の駆る白いジュエルナイトである。

 六花は目を閉じて深呼吸をする。戦いにおいて闘争心は大事だが、荒ぶる心のままではあらぬミスを犯してしまう。冷静に、頭の中をクリアにする。

 その時、頭の中で一粒の雫が大きな波紋を読んだ。

 次の瞬間、決意を新たにした六花がおもむろに両手の操縦桿を前へと突き出す。

 白いジュエルナイトは両目を輝かせるや凄まじい跳躍を見せ、そのまま火線飛び交う戦場へと赴くのだった。

 

☆☆☆☆☆☆

 

 予想はしていたが、やはり黒いジュエルナイトは強かった。イカルガから逃走する際には装備していなかった大鎌を構え、軽々と縦横無尽に振い、サーニャの赤いジュエルナイトの装甲を削っていく。

 もちろん全ての攻撃を喰らっている訳ではない。

 剣で受け、弾き、捌くが、技量と手数に差があり過ぎた。

 全てのジュエルナイトの素体性能は特別な改造を施されていない限り同じである。また、その特別な改造も違法行為に当たり、技術革新が起きなければ成功できない超高難易度の問題である。

 つまり、ジュエルナイトの性能は騎操師の技量と生まれ持った稼働時間耐性と才能で決められている。

 サーニャはそのどれにも恵まれたが、特に技量に置いては日々の鍛錬と努力の結晶である。しかし、相手の黒いジュエルナイトはどれを取ってもサーニャの上を行っていた。

 自然と悪態を吐きそうになるサーニャだが、奥歯を噛み締め、戦闘にだけ思考を集中させる。

 

『もらった!』

 

 後方上空からの声にサーニャは目を見開く。

 青いジュエルナイトが高らかに剣を振りかぶり急接近してきていたのだ。赤いジュエルナイトを龍人形態に変身させた際に蹴り飛ばしておいたが、やはり行動不能には出来ていなかったようだ。

 さらに後方へと意識が向いたところを狙って正面の黒いジュエルナイトが大鎌を振りかぶり間合いを我が物にしようとする。

 下がれば青いジュエルナイト、前に進めば黒いジュエルナイト、動かなければ二騎の挟撃が待っている。

 龍人形態に変身したことで機体性能は大幅に向上し、装甲の防御力も上がっている。それでも、まともに受ければひとたまりもない。

 最悪、死も有り得る。

 

「ここまでか……ッ!」

 

 サーニャは力いっぱい目を閉じその時が来るのを待った。

 しかし、どうしてだか一向にその瞬間が訪れない。それどころか重い轟音を響かせて何かが落下していくのが分かった。

 恐る恐る目を開けると、全天周囲モニター越しに尻尾の生えた全長十五メートルの白い鬼人が大鎌の柄を掴んで動きを封じていた。

 

「お前ッ!」

『黒いのは俺が抑えるから、青いのをお願い! します!』

 

 敬語は苦手なのかたどたどしい言い方になぜだか笑みを浮かべてしまう。

 ちなみに青いジュエルナイトは六花の駆る白いジュエルナイトが白き疾風の如く突撃し、見事な体当たりを盾に直撃させたため、空中から地面まで勢いよく墜落していた。

 後始末と言う訳ではないようだが、おそらく軽い相手をサーニャに戦わせたかったのだろう。尚、弱い相手と表現しないのは青いジュエルナイトの騎操師への憐れみである。

 

『六花、やっぱりアンタはそっち側なんだね?』

『少なくともあそこは俺のいるべき場所じゃない』

『言い切るんだ』

『うん。だから……フェイもこっちにおいでよ』

 

 六花とフェイ――黒いジュエルナイトの騎操師の会話はサーニャにも聞こえている。そうなるように予め魔導通信機を設定していたからだ。

 サーニャは思わず白と黒のジュエルナイトを見てしまう。

 これ以上問題を抱えればサーニャの仕えるローゼの名に傷が付きかねない。それでなくとも暗殺者に待ち伏せされて命を狙われたのだ。

 

『残念だけど私はそっち側には行けないの。だから、大人しく刃の餌食になっちゃえ!』

 

 なんとも子ども染みた言い方だ。それとは裏腹に黒いジュエルナイトは蝙蝠のような翼を翻し、サーニャと戦っていた時には見せなかった超加速を見せる。

 

「あの機体まだ速く動けるのか!」

 

 サーニャが驚いていると地面に激突した青いジュエルナイトがゆっくりと立ち上がる。今度は隙を作るまいとすぐに向き直り、両手で剣を構え、いつでも迎え撃てるように姿勢を整える。

 青いジュエルナイトは右手人差し指にはめられた指輪を突き出す。瞬く間に指輪に埋め込まれた宝石に青白い光が収束し、一条の閃光となって放たれる。

 それも一度や二度ではない。

 サーニャの駆る赤き龍人――赤いジュエルナイトが回避するであろう方向を予測して放っている。やはりと言うか、青いジュエルナイトの騎操師の操縦技術には確かなものを感じる。ただ今までの相手や対峙する瞬間が悪過ぎたのだ。

 赤き龍人は閃光を紙一重で躱しつつ、避けきれないものは剣で弾くように受け止める。

 そうこうしている間も二騎の後方では白と黒の荒々しい旋風が巻き起こっていた。

 白い鬼人は武器を持たない素手のはずなのに、大鎌を携えた黒い魔人と渡り合えている。いや、むしろ相手が武器を持っているからこそ、戦いやすいのかもしれない。

 その証拠に常に密着状態で戦っている。黒いジュエルナイトが距離を取ろうとすれば、先端が鋭利に尖った尻尾を使って動きを牽制して離れた距離を詰めている。しかもその判断に微塵の迷いも感じられない。とても異世界から召喚された者とは思えない慣れた動きである。

 二騎のジュエルナイトがぶつかる度に空気が弾け、突風を生み出す。さらに弾かれた空気が元の場所に戻ろうとするため、風に回転が加わり、旋風となって周囲を衝撃波が襲う。

 白と黒。

 赤と青。

 勝敗に決め手がないまま時間だけが過ぎていく。そして、自ずと訪れるのは稼働限界だが、見たところどの騎操師にもまだその兆候は見られない。

 あわや両者の拮抗が続くかと思われた時、一筋の火線が白と黒の間を突っ切っていった。

 この場にいる全員が火線の通ってきた道を目で追う。

 その先にいたのは間違いなく今の六花のいるべき場所だった。


PENSIERI DEI CREATORI
武内ヤマト 武内ヤマト

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