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「大林、前に言ってた海外支社の責任者の話、まだ有効?考えたんだけど、その仕事、引き受けるよ」
兄貴は俺が海外で頑張る気になったと聞いて、すぐに喜んだ。
「それは良かった!お前みたいな人材が必要だったんだ!でも、結婚するんじゃなかったのか?嫁さんには話したのか?」
「結婚はやめた。男はやっぱり自分の仕事を持たないとな」
俺は必死に感情を抑えた。
急いで電話を切った。
柳田青葉のパソコンに入っていた何百もの小さなビデオを見て、俺はしばらく呆然としていた。
結婚式場から、これまでの俺たちの愛の記録となる写真を選んで送ってほしいと言われていた。
結婚式で流すビデオを作るためだ。
でも青葉は今夜、友達が彼女のために開いた独身最後のパーティーに出かけていて、携帯の電源も切っていた。
仕方なく、いい素材を選ぼうと彼女のパソコンを開いたら、こんなものが出てきた。
8年間、青葉は俺の前では純粋で保守的で家庭的な女性を演じていた。
彼女はくだらない記念日を祝うことも、俺にプレゼントを買わせることもなく、無駄なお金を使わせないようにしていた。
祝日は稼ぎ時だと言って、いつもそういう日に残業していた。
俺はそんな彼女に感動して、理解のある良い女性を見つけたと思っていた。
でも、ビデオの中で様々な遊びを楽しみ、満面の笑みを浮かべている彼女を見て、俺がただの道化師だったことに気づいた。
最近、彼女は体調が優れず、よく吐き気を催し、油っこいものの匂いも駄目だった。
その後すぐに、突然結婚を切り出してきた。
俺たちの長い恋愛がついにゴールに辿り着いたのだと思っていたが、
今考えると、もう妊娠していて、俺に責任を取らせようとしていたのかもしれない。
結婚式をキャンセルすることを考えながら、携帯を取り出して直接別れを告げようとした。
だが携帯を開くと、今日は彼女から一通のメッセージも返ってきていないことに気づいた。
ドレスからホテルまで、彼女は何も気にしておらず、結婚式の全てを俺に任せていた。
SNSを見ると、最新の投稿は今夜のもので、テキストだけだった。
【最後の狂気、そして最後のチャンス】
当時は彼女の独身最後のパーティーについて言っているのだと思っていた。
今なら分かる、この言葉はビデオの中の男に向けたものだったんだ。
それならば、みんなで二人を祝福してあげよう。
俺はパソコンを再び開き、彼女のビデオを全部まとめて結婚式場に送った。
結婚式と費用は変更しないことを式場に何度も確認してもらい、彼らは秘密を守ると約束してくれた。
電話を切ると、すぐに結婚式当日の飛行機チケットを予約した。
この芝居は、彼らに演じさせておこう。
チケットを予約し終わったところで、青葉の友達から突然電話がかかってきた。
「渡辺辰哉さん、青葉が酔っぱらっちゃって。迎えに来てもらえませんか?住所を送りますね」
受話器の向こうで、青葉の馴染みのある声が「江口輝」と呼ぶのが聞こえた。
そして、あのビデオに出てきた男の声も……