「傷口は水に触れないほうがいい」
高橋翔太の手を取った時、彼は顔を横に向け、耳の付け根が怪しく赤くなった。
でも拒否はしなかった。
私は落ち着いたふりをして、彼の袖を一枚一枚めくった。
高橋翔太は私に尋ねた:「どうするつもり?招待状も配って、会場も予約済み、ゲストも招待して、結婚式の準備もずっとやってきたのに」
「あなたはどうすべきだと思う?」
顔を上げると、高橋翔太と目が合った。彼は軽く笑い、その目には何とも言えない喜びが混じっていた。
「もったいないと思うよ。無駄にしないで」
彼は木質調の香水を好み、頭を下げると温かい息が私の耳元にぴったりと届いた。
「新郎を変えてもいいんだよ」
「例えば...」
私の心が乱れた瞬間、彼の答えはまだ口に出されていなかった。
怒号が静けさを破った。
「何をしているんだ!」