02
午後、私は直接会社に戻り、上司に退職願を提出した。
「君が退職するって話、林川美流は知ってるのか?」
上司は私の退職にとても驚いていた。結局のところ、私は航空会社で7年連続のゴールデンキャビンアテンダントだったし、会社に残れば間違いなく将来有望だったからだ。
私は苦笑いを浮かべた。「今夜彼女に話すつもりです。でも、たぶん気にもしないでしょうね」
「はぁ、ここ数年、君たち二人は一緒に新路線を飛んで、一緒に会社の最優秀賞を取って、3年前の結婚式には社長自らが出席して、みんな羨ましがっていたのに...」
主任はため息をつきながら、惜しむような表情を見せた。
そうだ、あれは確かに素晴らしい思い出だった。
でも思い出はあくまで思い出で、もう二度と戻ることはできない。
退職の手続きを終えて家に帰ると、すでに夜の10時を過ぎていた。
家の中は異様に静かで、誰もいなかった。
そんな中、私のスマホには渡辺晴彦のSNS投稿が表示された。彼が私を特別にタグ付けしていたからだ。
「美人の師匠が一日中付き合ってくれてありがとう。お礼に明日は師匠を周会長のコンサートに招待します〜楽しみにしていてください」
私には分かっていた。昼に家に帰ると言っていた美流はもう戻ってこないだろうということを。
この状況は、私たちが結婚してからの3年間で、すでに何度も繰り返されていた。
簡単にラーメンを作った後、メールボックスを開いた。
そこには10カ国以上の航空会社からのオファーが並んでいた。マウスはためらうことなくエールフランスのメールに移動し、招待を受け入れ、2日後のパリ行きの航空券を予約した。
5年前、美流がパリへのフライト中に職業人生で最大の事故に遭遇して以来、「パリ」という言葉は彼女のタブーとなっていた。
彼女自身が飛ばないだけでなく、私もそれ以来一度も飛んでいなかった。
美流、私はパリに行くよ。これで私たちは二度と会うことはないだろうね。