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34.61% 二十年の愛を結婚式で断ち切る / Chapter 9: 第9話:真っ白

章 9: 第9話:真っ白

第9話:真っ白

[冬夜の視点]

病院を出た冬夜は、タクシーの後部座席でスマートフォンを取り出した。

紅の容態は安定していた。医師からも「問題ない」と言われ、ひとまず安心できる。

結婚式まで、あと数時間。

雪音にメッセージを送る。

『今から向かう。先にホテルで待っててくれ』

送信ボタンを押したが、返信は来ない。

冬夜は眉をひそめて、メッセージ履歴を遡った。

「あれ?」

最後に雪音からメッセージが来たのは、半月も前だった。しかも、自分の返信を見返すと、どれも素っ気ない一言ばかり。

『わかった』

『後で』

『忙しい』

冬夜の胸に、得体の知れない不安が広がり始めた。

雪音が精子提供の話をした時の表情が、脳裏に蘇る。あの時、彼女は初めて辛そうな顔を見せた。でも、自分はその時何と言ったのだろう?

「運転手さん、もう少しスピードを上げてもらえますか」

「承知いたしました」

----

雪音は空港の搭乗ゲートで、最後の搭乗案内を聞いていた。

手荷物検査を終え、出発まであと三十分。

彼女のスマートフォンには、冬夜からの着信履歴が十数件表示されていたが、電源を切った。

「もう遅いのよ、冬夜」

雪音は呟いて、搭乗券を握りしめた。

----

[冬夜の視点]

ホテルのロビーに到着すると、母親と友人たちが既に集まっていた。

「冬夜!」

母が駆け寄ってきた。

「遅いじゃない。雪音ちゃんは?」

冬夜は周りを見回した。雪音の姿はない。

「あれ、雪音は?」

友人の一人が首をかしげた。

「君一人で来たの?しかも普段着で」

冬夜は自分の服装を見下ろした。確かに、結婚式にふさわしい格好ではない。

「雪音は......宴会場のチェックをしてるんだと思う」

冬夜は取り繕うように答えた。

でも、その直後に気づく。

自分は、どの宴会場で式を挙げるのかすら知らない。

すべて雪音に任せきりだった。

「すみません」

冬夜は近くのホテルスタッフに声をかけた。

「白鐘の名前で予約した披露宴会場を教えてもらえますか」

スタッフは端末を操作して、確認した。

「はい、3号ホールでございます」

冬夜は一瞬安堵した。

「ありがとうございます」

しかし、スタッフは予約表の備考欄を見て、困惑した表情を浮かべた。

「あの......」


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