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5.26% 五度裏切った夫に、絶望を贈る / Chapter 1: 第01話:結婚三周年記念日の裏切り
五度裏切った夫に、絶望を贈る 五度裏切った夫に、絶望を贈る original

五度裏切った夫に、絶望を贈る

作者: 兎月 ぴょん

© WebNovel

章 1: 第01話:結婚三周年記念日の裏切り

第01話:結婚三周年記念日の裏切り

霜月(しもつき)雫(しずく)は会場の扉を開けた瞬間、時が止まったような感覚に襲われた。

広々とした個室の中央で、夫の神凪(かんなぎ)彰(あきら)が片膝をついている。その前に立つのは、彰の幼なじみである一条(いちじょう)美夜(みや)。彰の手には小さな指輪の箱が握られていた。

「彰さん、そんな……」

美夜の頬が薄っすらと赤く染まる。まるで本物のプロポーズシーンのように見えた。

周囲にいた友人たちが手を叩いて囃し立てる。

「おお、ついにやったな!」

「罰ゲームとはいえ、本格的すぎるだろ!」

「キス!キス!」

罰ゲーム。

雫の胸に小さな安堵が生まれかけたその時、友人の一人が大声で叫んだ。

「結婚してても美夜のことが好きなの、みんな知ってるんだから!」

会場が一瞬静まり返る。

雫は静かに口を開いた。

「何をしているの?」

その声に気づいた友人たちが慌てたように振り返る。雫の存在に気づくと、まるで何かに追われるように次々と会場から立ち去っていった。

彰が勢いよく立ち上がる。

「ただの罰ゲームだ」

怒りを露わにした彰の声が会場に響く。しかし雫の心には、友人たちの言葉が深く刺さっていた。

美夜が慌てたように雫に近づいてくる。手には温かいお茶の入ったカップを持っていた。

「雫さん、誤解しないでください。本当にただの罰ゲームだったんです」

美夜の声は震えていた。しかし、その次の言葉が雫の心をさらに抉る。

「彰さんが私を好きだなんて、絶対に信じないでください。そんなこと、あるはずないじゃないですか」

わざとらしい否定の仕方だった。まるで逆に「彰は私を好きなのよ」と言っているかのように聞こえる。

雫は無意識にお腹に手を当てた。妊娠三ヶ月。まだ小さな命が宿っている。

その瞬間、美夜の足がもつれた。

「きゃあ!」

美夜が倒れ込み、手に持っていた熱いお茶が彼女自身にかかる。

「熱い!熱い!」

美夜の悲鳴が会場に響いた。

「美夜!」

彰が駆け寄り、美夜を抱き起こす。

「大丈夫か?火傷は?」

「彰さん……痛いです……」

美夜が彰の胸に顔を埋める。

彰の視線が雫に向けられた。その目には激しい怒りが宿っていた。

「妊娠してるのにそんなことして、もしお腹の子に罰が降りたらどうするつもりだ!」

彰の言葉が雫の心を凍らせる。自分の子供に対して「罰が降りる」と言ったのだ。

彰は美夜を抱きかかえて立ち上がる。

「病院に行こう」

二人が会場を出ようとした時、雫は階段で彰の腕を掴んだ。

「待って」

「放せ!」

「今日は私たちの結婚三周年よ」

雫の声は震えていた。三年前の今日、二人は永遠の愛を誓ったはずだった。

「どけっ!」

彰が雫の手を振り払おうとする。

「お願い、話を聞いて」

雫は必死に彰にすがりついた。しかし彰の怒りは頂点に達していた。

「邪魔するな!」

彰の手が雫の肩を強く突き飛ばした。

体勢を崩した雫は――重力に引かれるように、階段を転げ落ちていった。


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