章 10: 元の南奈は元の南奈、今の南奈はサイコパスだ。

南奈の頭の中で、次兄である中村澄也（なかむら すみや）についての情報が検索された。

そして気づく……

元の南奈がこの家に帰って約4年、この二番目の兄との接触はわずかだったが、その一回一回の接触は人々の怒りを買うに十分だった。

澄也は京市中央病院の心臓外科の主治医で、非常にハンサムで、追っかけも多いが、彼は歩く冷蔵庫のようなもので、周囲数キロの範囲では一匹のメスも近寄って声をかける勇気がなかった。彼の性格は特に淡泊で、感情がないかのようで、何に対しても興味を示さない。

因縁の始まりは2年前にさかのぼる。南奈はある時お金に困り、葵のそそのかしを信じて、彼の上半身裸の写真を盗撮し、彼の追っかけに売って、なんと200万円を稼いだ。

バレた時、彼は愛用の手術用メスを手に、彼女の部屋を訪れた。冷徹な顔で160万円を分け取り、その刃先でスマホの画面を叩きながら削除方法を“指導”すると、南奈は震え上がり、千字の謝罪文を書かされてネットに公開するはめになった。彼はようやく満足して引き上げていった。

またこの一件のせいで。

元の南奈はこの次兄をとても恐れるようになった。

彼が手術用メスを持って彼女を見つめた時、どの肉から手をつけようかと考えているように見えた。

南奈は彼を恐れていない。

元の南奈は元の南奈、今の南奈はサイコパスだ。

彼女は彼の顔を観察し、目を輝かせ、よだれをたらさんばかりだ。

『はぁ、次兄さんめっちゃカッコいい！』

澄也は南奈に向けた冷ややかな視線を一瞬止め、それから視線を戻し、允を見た。允が不満そうに彼の顔を見ているのを見た。

澄也は青白い顎を少し上げた。「病院の入り口を塞がないでくれ、患者の出入りの邪魔になる」

允は横に一歩動き、南奈も一緒に引っ張ろうとしたが、南奈は彼に反抗するかのように、あえて澄也の側に寄り、彼の体から漂う微かな消毒液の香りを嗅ぎながら、目を輝かせて遠慮なく彼の顔を観察し、何気なく話題を振った。「次兄さん、今日は家に帰るの？」

澄也は中に入っていった。彼の登場は多くの人の注目を集めた。