章 11: 第11章 子供ができた（2）
阿部美咲が驚きから我に返る間もなく、ドアの向こうの子供がそっと部屋に入ってきて、ドアを閉め、こっそりとベッドに近づいてきた。
窓から差し込む月明かりを頼りに、美咲はゆっくりと子供の姿をはっきりと見ることができた。
それは三、四歳ほどの子供で、薄い寝間着を着ていた。ふくよかな小さな顔はとても清潔で可愛らしく、黒くて大きな瞳はまるで語りかけてくるようで、とても美しかった。物音を立てないためか、子供は靴を履いておらず、裸足だったため、美咲はその丸々とした愛らしい足指までもがよく見えた。
最初は推測でしかなかったが、子供の姿をはっきりと見た今、美咲はこの子が村上家の孫様、つまり名目上の自分の息子であることをほぼ確信した。理由は単純で、この子はまだ幼いながらも、その顔立ちは村上貴明の縮小版そのものであり、認めたくなくても認めざるを得なかった。
最初に自分に数歳の子供がいると知ったとき、美咲の気持ちは間違いなく複雑だった。半人前の若い娘だった彼女は、これまで恋人さえいなかったのに。ある人の体に転生してみれば、夫ができただけでなく、子供までついてきて、その衝撃は並大抵のものではなかった。
しかし、この子を一目見た瞬間、美咲はふと心がときめくのを感じ、全身の血がたちまち沸き立つのを感じた。これこそが伝説の血のつながりというものなのだろうかと思わず感嘆した。
初対面にもかかわらず、美咲はこの子に理由もなく親しみを感じた。
子供はよろよろと美咲のそばまで歩いてくるのに時間がかかり、ハァハァと息を切らしながらベッドの側までたどり着いた。ちょうど顔を上げた瞬間、予想外に美咲の目と合ってしまった。
もともと大きな目がさらに見開かれ、明らかに美咲がまだ起きていると思っていなかったようだ。息を呑み、反射的に後ずさりしようとしたが、美咲が先に手を掴んだ。
これで子供はさらに慌てた様子で、まるで他人の縄張りに迷い込んで捕まった小動物のように、あっという間に大きな瞳に涙がたまり、泣きそうになりながらも「ママ…ママ…」とか細い声でつぶやいた。
美咲は子供の目に愛着を見たが、それ以上に恐怖と畏怖を見て、はっとした。そう言えば、元の持ち主は最初、この子を利用して村上家の若奥様の座に着き、貴明を縛りつけるつもりだったことを思い出した。
しかし、思惑とは違い、貴明は彼女と確かに結婚したものの、結婚後は完全に透明人間のように扱い、自分を脅すために利用されたこの子供にもあまり関心を示さなかった。母親が子供を頼みとして男の心をつなぎとめることなど論外だった。おまけに元の持ち主は分別のない人間で、自分がした悪事が無実の子供を巻き込んだだけでなく、最終的に自分がかわいがられないことを子供のせいにした。この子をずっと遠ざけ、時には腹いせに暴力を振るうこともあった。時が経つにつれ、子供は彼女に対して愛と恐怖が入り混じった態度を示すようになった。
だから田中がこの子について話すとき、あんなに気が進まなかったのだ。この家で本当にこの子を愛しているのは、おそらくあの老人だけだろう。
そう考えると、美咲は自分のこの体の元の持ち主をますます軽蔑した。子供に頼って男を縛りつけようとする女性は、なんと哀れなことか。こんな結末になったのも無理はない。
元の持ち主に不満を持つと同時に、この子にはますます同情するようになった。怖がって泣きそうな子供の哀れな様子を見て、美咲は思わず手を伸ばして子供の頬を伝う涙を拭き、優しく言った。「男の子は簡単に泣いちゃだめよ、わかる？」
子供は一瞬固まり、泣くことさえ忘れたようだった。自分の涙を優しく拭いて、優しく話しかけてくるこの人をぼんやりと見つめた。ママは今日…とても優しい！
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