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35.71% 冷酷な夫に「妊娠した」と告げたら / Chapter 5: 第5話:最後の審判

章 5: 第5話:最後の審判

第5話:最後の審判

[雪乃の視点]

階段を下りると、沙耶が廊下で待っていた。

彼女は私を見るなり、身を縮めるように後ずさりした。

「雪乃さん……」

沙耶の声は震えていた。まるで怯えた小動物のように。

「お願いします。樹には何もしないで」

何もしない?

私は沙耶の顔を見つめた。化粧で隠しきれない疲労の跡。でも、その目には確かな敵意が宿っている。

「樹は自分の出自を知ってるの?」

私の問いかけに、沙耶の顔が青ざめた。

「何のことですか」

「とぼけないで」

私は一歩近づいた。

「あの子は玲司の子供でしょう?そして、一年前に私の子供を――」

「雪乃」

玲司の声が背後から聞こえた。振り返ると、彼が階段を下りてくるところだった。

玲司は迷わず沙耶の前に立ちはだかった。まるで私から彼女を守るように。

その光景を見て、私の心に最後の希望が消えた。

夫は私ではなく、愛人を選んだ。

「玲司」

私は夫の名前を呼んだ。

「最後に聞かせて。この子を産んでも良い?」

玲司の表情が険しくなった。

「雪乃、もうその話は――」

「答えて」

私の声は静かだった。でも、その奥に宿る感情は激流のように荒れ狂っていた。

玲司は沙耶を振り返り、何かを確認するような視線を送った。沙耶は小さく首を振る。

その瞬間、私は全てを理解した。

二人はすでに話し合っている。私の妊娠について。私の子供の運命について。

私抜きで。

「お前みたいに毒々しくて、狂っている母親から生まれてくる子供なんて、どうなるかわかるだろ?」

玲司の言葉が、私の心を完全に破壊した。

毒々しい。狂っている。

夫の口から出た言葉が、私の存在そのものを否定していた。

顔から血の気が引いていく。視界が暗くなり、立っていることさえ困難になった。

「早く堕ろしたほうがいい」

玲司は冷たく言い放つと、沙耶の肩を抱いた。

二人は一度も振り返ることなく、病院の出口に向かって歩いていく。

私は一人、廊下に取り残された。

――

その夜、自宅のベッドで横になっていると、携帯電話が鳴った。

沙耶からのメッセージだった。

『ごめんなさい、雪乃さん。彼はあなたの子を望んでいません』

添付されているのは、動画ファイル。

震える手でそれを再生した。


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