恐ろしい程高い城壁。
すでに松明の準備をしている火守りと呼ばれる自警団が兵から替えの松明等を受け取っている。
馬は一気に城内へ滑り込む。
謁見の間等通さず、リリシーは直接女王陛下の居住塔へ通された。
既に辺りは夕暮れ。
ジリルに連れられ、一人広々した部屋へ通された。
いよいよミラベルと御対面である。
部屋には国の功績を称えた盾や賞状の類が並ぶ。どれも新しい物だ 。
ノアは無事に町に潜んだだろうか。
クロウはこの城のどこに居るのだろうか。
不安がピークに達した頃、絨毯を歩くタフタフと言う音が近付く。
「まぁまぁ ! リリシー ! 」
ミラベルだ。
クリーム色の質素なドレスに紅の薄い口唇。
思ったより大人しそうな印象をリリシーは受けた。
窓の外を眺めていたリリシーの側に来ると、なんの躊躇いも無く、ミラベルはリリシーを思い切り抱き締めた。
「心配していたのよ !
それに……私に聞きたいことも沢山あるでしょう ? 」
勿論ある。
それをミラベルから言うのか。
リリシーは一瞬でミラベルの波に飲み込まれてしまった。
「さぁ、食事を用意したわ。
話を聞かせて。私も話したいことがあるのよ」
廊下を歩くと十人程の侍女と、料理を担当したであろうシェフが会釈し、二人を食事部屋へ通す。
部屋は案外、狭い。
豪勢だが、女王陛下が食事をするにはあまりにもこじんまりした部屋だった。
窓際にテーブルが寄せられ、景色を堪能しながら食事ができる。
「さぁ好きな方へ座って。
ワインはいかが ? 」
「お酒は……飲みません」
「なら、これがいいわ。この辺りではベリーが沢山採れるのよ。それを紅茶に加工するの」
ミラベルはティーポットからカップにベリーティーを注ぎ、自分もそれを持ってきて、二人横に並んで座る。対面より気まずさは無いが、距離が近い。