気持ちが落ち着いてきたので、スマホを取り出してSNSを見ていると、ふと目に留まる投稿があった。
高橋美羽が投稿したもので、誰かが彼女を空港まで迎えに来てくれたことへの感謝の言葉だった。
写真には人の姿はなく、綺麗な手だけが写っていた。何年も見てきた私には一目でわかる、田中和也の手だった。
頭の中が「ボン」と爆発した:
「今日、空港に美羽を迎えに行ったの?」
和也は急ブレーキをかけ、ハンドルを強く握りしめた。彼は車を路肩に停め、説明し始めた。
「美羽は早くから海外に出ていて、国内にはあまり友達がいないんだ。空港はかなり遠いし、彼女一人では...」
私は和也の言葉を遮った:
「なぜ嘘をついたの?仕事だって言って」
「君が今みたいに考えすぎるのが怖かったからだよ」和也は相変わらず冷静で、自分のしたことに何の問題も感じていないようだった。
私は突然、怒りで笑ってしまい、首にかけていたネックレスを引きちぎった:
「婚約式の日に彼氏が現れず、私に黙って他の女性を空港まで迎えに行くなんて、普通の人なら誰でも考えすぎるわよ」
「伊藤詩織、落ち着いて」和也の表情に変化はなかった。
でも長年の付き合いから、彼の忍耐が限界に達していることは分かっていた。
私は落ち着くどころか、理性も失い、ネックレスを力いっぱい投げつけた。
ネックレスは車の後部座席に落ち、そこに置かれた二つの包装袋が目に入った。
一つは国内トップデザイナー、リサスタジオの袋で、「星々」という文字が書かれ、目を奪うほど美しい指輪のデザインが描かれていた。
もう一つは今夜和也が私にくれた高級ブランドの袋だった。
手を伸ばして袋を取り、中からレシートを簡単に取り出した。一枚の注文書の日付は3ヶ月前、私と和也が婚約を決めた日だった。
もう一枚のレシートは今日の夜6時で、住所は空港近くの高級ブランド店だった。
空になった「星々」の包装袋を指さして和也に尋ねた:「これは私へのプレゼントだったの?」
和也は少し黙ってから:
「今日、美羽が突然帰国したんだ。何年も会っていなかったし、彼女へのプレゼントにしたんだ」
元々私への婚約プレゼントだったものを、何の躊躇もなく他人に渡したのだ。
そして私へのプレゼントは、美羽を迎えに行く合間に、慌てて選んだものだったなんて。