章 9: 9

前回の衝突以来、退職するまで、私は二度と田中和也に会うことはありませんでした。

結局、彼は社長で、私は普通の中間管理職。仕事上で接点が多いわけではありません。

その代わり、高橋美羽が何度か私を訪ねてきました。毎回、仲直りを勧めに来るのです。

彼女のこの偽善的な態度が我慢できず、最後には皮肉な笑みを浮かべながら彼女を見つめて言いました：

「あなたが今すぐ辞めるなら、私は和也と仲直りするわ。どう？」

美羽はすぐに態度を変え、笑いながら私の言葉を受け流しました：

「まぁ、これはただの仕事よ。どうして私のことがあなたと和也くんの関係に影響するのかしら」

すべての業務引継ぎが終わり、ユーザー情報を削除し、段ボール箱を抱えて席を離れました。

自分の住まいに戻ると、この数日間私を支えていた信念がすべて崩れ去りました。

長い間迷った末、ついに両親に電話をかけました。電話が繋がるとすぐに泣き出してしまいました：

「お母さん、私、和也と別れたの」

私はめちゃくちゃに泣いていて、電話の向こうの母は途方に暮れていました。

いつもは論理的で筋道立てて話す私が、今回はかなり長い時間話しても、うまく説明できませんでした。

結局言っていることは一つだけ。私は和也と別れた、絶対に彼と結婚するつもりはない、誰が説得しても無駄だということです。

母は電話の向こうで辛抱強く私をなだめました：

「詩織、あなたが大人になってからは、常識外れでない限り、お父さんもお母さんもあなたの決断を支持するわ」

「あなたが田中和也くんと付き合うと言った時も、8年間も付き合っても結婚しなかった時も、私たちはあなたの選択を支持してきたでしょう。あなたにはあなたの理由があるはずだから」

「今、あなたが彼と別れたいというなら、きっとそうせざるを得ない何かがあったのね」

「お父さんもお母さんも、体面や人の噂話、お金や地位なんかは気にしないわ。ただあなたが幸せであればいいの」

私は電話を強く握りしめ、声にならないほど泣きました。

こんなにも多くの人に愛されている伊藤詩織なのに、なぜこの数年間、そんなに卑屈に、そんなに混乱して生きてきたのでしょう？

両親と話した後、気持ちはずっと良くなり、同級生のグループチャットで適切な紹介案件がないか尋ね始めました。