章 6: 第6章

私は言い放った強気な言葉が斎藤彰人を押さえつけられると思っていた。

甘かった。

翌日、チンピラの一団が押しかけてきた。

彼らは祖母の家の前にペンキをぶちまけ、窓ガラスを割り、高出力のスピーカーで24時間騒音を流し続けた。

近所の人たちは怖くて外にも出られない状態だった。

警察に通報した。

警察が来たが、「経済的な争い」だと言って取り合わず、「当事者同士で話し合うように」と言われた。

加藤家に電話して助けを求めた。

あの加藤家の叔父は、電話越しに嫌味たっぷりに言った。「美桜、叔父が助けたくないわけじゃないんだ。このプロジェクトは、お前の父親が黙認したものなんだよ。お前が一軒のボロ家のために斎藤彰人を敵に回して、お父さんも困っているんだぞ」

私は怒りで全身が震えた。

父親。

自分の利益のためなら、何でも犠牲にする。私も、祖母も。

初めてこんなにも無力で絶望的な気持ちになった。

この世界には、私のための道は一つもないみたいだ。

夜、私は一人で祖母の家の玄関で見張りをしていた。手には包丁を握りしめて。

誰かが来たら、命がけで戦うつもりだった。

篠原悠真がやって来た。

彼は熱々の食事と、USBメモリを持ってきていた。

「食べろ」彼は弁当箱を私の手に押し付け、命令口調で言った。

私は頭を振って、食べられないと伝えた。

悠真はため息をついて、私の隣に座った。

「美桜、怖いか？」

私は黙ったまま、手の中の包丁をぎゅっと握りしめた。

「怖くて当然だ」彼は言った。「でも、怖がるだけじゃダメだし、命を張るだけでもダメだ」

彼はUSBメモリを私のノートパソコンに差し込んだ。

「これを見てみろ」

USBの中には、この数日間に彼とチームメンバーが密かに撮影した素材があった。

チンピラたちの横暴な姿。

近所の住民たちの、怒りはあっても声を上げられない告発。

この地区を担当する地域の区長と清彰キャピタルの人間が高級会員制クラブで杯を交わす盗撮写真。

そして、清彰キャピタルのこのプロジェクトの承認プロセスに関する詳細な資料。

そこにはあらゆる抜け道と裏工作が記録されていた。

私は震えるほど驚いた。

「どうやって…どうやって手に入れたの？」