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従順だけど野生的!? 秦野さんに振り回されるクール社長 従順だけど野生的!? 秦野さんに振り回されるクール社長

従順だけど野生的!? 秦野さんに振り回されるクール社長

作者: やわらかい梨

© WebNovel

章 1: 四年ぶりの再会

編集者: Pactera-novel

秦野詩織(はだの しおり)が再び藤井孝宏(ふじい たかひろ)と顔を合わせたのは、車の中で彼に押し倒された瞬間だった。

「この四年間、他の男に触れられたことは?」

「俺を待っていたか?」

熱い吐息と低く甘やかな声。耳にかかるその響きは小さな鉤のように、容易く彼女の心をかき乱していく。

詩織の頬がみるみる赤く染まる。

逃げようと体をよじっても、男の力は圧倒的で、彼女の動きはことごとく封じられた。

深く沈むような黒い瞳。孝宏は唇の端を吊り上げ、囁くように笑った。

「やっぱりな。四年経っても、すぐ顔に出る」

次の瞬間、視界がぐるりと反転。

今度は、彼が下で、彼女が上。

火花が散るような一瞬、詩織は必死に彼を押し返す。

「は、離して…!」

耳元を掠める唇。ぞくりとするほど冷たいのに、からかうように熱を孕んでいる。

「こうされるのは、嫌か?」

胸に押し寄せる乱れた鼓動。ほんの一瞬、心が蕩けそうになったが――すぐに我に返る。

「……いい加減にして。距離を保って」

「わかった」

孝宏は声をかすれさせ、辛抱できなさそうだったが、それでも彼女を離し、しわになった服を整えた。

掠れた声で答えると、孝宏は名残惜しそうに彼女を解放し、皺の寄ったシャツを整える。その仕草は冷徹で、まるでつい先ほどまで彼女を弄んでいたのが別人であるかのようだった。

詩織は黙って服を着直す。腰には彼の指が残した赤い痕。

彼女は見ないように目を閉じた。

――最悪だ。仕事で出てきただけなのに、どうして四年も前に別れた元彼と再会しなくちゃいけないの。

大学時代、二人は恋人で、お互いの初恋だった。

初めてを捧げた夜の痛みも甘美も、今でも鮮明に焼き付いている。

彼と共に笑い、彼と共に走り、何もかもを捨ててもいいと思った。

それほどに、彼を愛していた。

友人に「馬鹿ね」と言われても気にしなかった。

彼が同じだけ自分を愛してくれていると信じていたから。

「詩織ちゃんは、私の唯一だ」

そう囁かれ、何度も唇を重ねられた夜。

彼女は一度だって疑ったことはなかった。

――あの日、彼の本音を聞いてしまうまでは。

「孝宏、詩織ちゃんをいつ藤井家に連れて行くんだ?」

「素直で可愛いし、早く娶ってやれよ」

笑いながら孝宏は答えた。

「ただの遊びだ。本気じゃない」

その一言で、すべてが崩壊した。

これまでの言葉も、抱擁も、笑顔も、

針のように胸を刺す。

結局、自分は最初から遊ばれていただけ。

飽きたら、捨てられる。

貴族に生まれた彼が、自分のような女を本気で娶るはずがなかった。

泣いて泣いて、声も出なくなるほど泣いて

――最後に、彼女は静かに別れを告げた。

だが彼は、本気にしなかった。

どうせ彼女は従順で、甘いことを言えばすぐ気分がよくなるんだろ。

たまには駄々をこねられるのも、悪くないと思っていた。

詩織は騒がなかったし、泣きすぎて、もう涙も出なかった。

その夜、彼女は一人で荷物をまとめ、姿を消した。

彼らの間には何の束縛もなく、別れもとてもスムーズだった。

結局、彼は追わなかった。

「どうせすぐ戻ってくる」

何と言っても、彼女は彼をそんなに愛していたのだから。

しかし、彼女は観念した。

そして――四年。

彼は二度と彼女を見つけることができなかった。

今日、再び出会うまでは。

……

30分後、車は警察署に到着した。

孝宏の背を追って中へ入り、

詩織はおとなしく取調室で取り調べを受けることになった。

「氏名は?」

「知ってるでしょ」

「結婚してるか?」

澄んだ瞳で見返しながら、彼女は眉を寄せた。

「……答えを拒否しても?」

孝宏は彼女の向かいに座り、目を上げて冷たい声で言った。「ダメだ」

詩織は投げやりな口調で、「――結婚したことはない」

「実家は?」

「東京」

「付き合った男の数は?」

わざとらしい間を置き、詩織は唇を吊り上げた。

「お巡りさん、不真面目ね」

顎を引いて水を飲む孝宏。

彫りの深い顔立ちに冷ややかな眼差し。

背筋は正しく伸び、気高い光を纏っている。

見つめるほどに、詩織の胸は複雑に揺れた。

――藤井家ほどの権勢を持ちながら、どうして彼は家を継がず、南の町で麻薬捜査官なんてしているの?

「秦野さん」

視線を上げた孝宏の声は鋭い。

「私の仕事に協力してくれ。聞かれたことだけ答えろ」

冷たい。車の中での甘やかさは微塵もない。

「職業は?」

「翡翠の販売」

「なぜ相手と揉めた?」

「……殴られて当然だったから」

彼女は東京の玉器の街で、潰れかけの小さな会社を細々と経営している。

南の町に来たのは、翡翠商の取引のため。だが相手は無礼を通り越し、薬まで仕込もうとした。

部下が庇ってくれたが、返り討ちに遭い、乱闘に。

そして任務中だった孝宏が現れ、彼女を強引に連れ出した。

――車の中で、あんな風に。

あまりにも激しかったので、彼はこの四年間女性に触れていないのではないかと疑うほどだった。

孝宏はペンを取り、相変わらずの口調で

「相手側に責任がある。拘留になるだろう。示談に応じるか?」

「絶対にしない!」

彼女は即答した。部下たちがひどく傷ついているのだ。

「以上だな。帰っていいか?」

顎に指を当て、孝宏は皮肉に笑った。

「随分と急ぐな。元カレと久しぶりに語らう気もないのか」

詩織はすっと立ち上がり、淡々と微笑む。

「必要ないわ。忙しいから」

くるりと背を向ける。

「四年経っても、まだ一人なのか?」

低く響く声に、睫毛が震える。

「あなたには関係ない」

「その言い方、独り身ってことだな」

すぐ後ろから、腰を抱き寄せられる。指先が肌を擦り、強く掴まれる。

全身がこわばり、呼吸が止まった。

「やっぱり敏感だ。」

半眼を落とし、懐かしむように彼は囁く。

「目を逸らすのは、今でも俺を忘れられないからか?」

――自惚れ屋。

たかが元カレのくせに。

だが孝宏は彼女の腰を抱き、さらに近づいて

「会いたくなかったか?」

「俺は……ずっと、会いたかった。」

自分だけが知っていることだが、彼は今日彼女を初めて見た瞬間から、心が乱れていた。

顔が熱くなり、詩織は怒りを込めて睨む。「離して!性犯罪で訴えるわよ!」

その顔を見て、彼はくつくつ笑い、ようやく手を放した。

「……いつ東京に戻る?」

詩織はなにげなく

「二、三日後。用事があるから」

「どこに泊まる?」

「ホテル」

短い沈黙ののち、彼は言った。

「俺の家に来い」

「はあ?頭おかしいの?」

孝宏は軽く眉をひそめた。「清潔で安全だ。お前のためを思って言ってる」

「絶対イヤ」

「あんたが一番危険なのよ!」

孝宏は片手をポケットに入れ、目を細め、「……怖いのか?俺にまた惚れ直すのが」

挑発的な一言を、詩織は完全に無視して歩き出す。

「二十億円」

詩織の足が止まった。

「私は金で動かない」

「四十億円」

詩織は息を吸い込み、「屈するものですか!」

「十桁。足りるか?」

詩織は言葉を失う。

本気で金を投げつけてくる男。

だが直感が告げていた――この男に関わってはいけない。危険すぎる、と。

孝宏は彼女の動揺を見逃さない。

ゆっくりと歩み寄り、身を屈め、至近距離で見下ろす。

「不満か?」

「なら、秦野さん――君の望む額を、言ってみろ」


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