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午後の陽光は燦々と降り注ぎ、そよ風が心地よい。
「菅原(すがわら)くん、今週末、旧校舎の探検に行くんだけど……一緒に来ない?」
クラス一の美少女、石井咲耶(いしい さや)。清楚で愛らしい卵形の顔、優しげな大きな瞳、整った顔立ちが彼女の顔に刻んだ二文字——初恋!
菅原英治は振り返って彼女を見た。二十歳の体はまだ初々しく、上半身は白い半袖シャツに包まれ、中央のボタンは本来負うべきでない重圧に耐えていた。
下半身はシンプルな黒のプリーツスカート、ニーハイソックスと小さな革靴が愛らしさと可愛らしさを引き立てている。
露出した白い太ももは、常人には触れられない絶対領域で、一目見ただけで誰もが虜になってしまう。
彼女の誘いを、学校中の男子で断る者はまずいないだろう。だが菅原はきっぱりと断った。
「悪いな、週末は用事があるんだ」
「えっ……」
咲耶は小さな唇を噛み、目に失望の色を隠せなかった。
「じゃあ……今夜、一緒に買い物に行かない?歩行者天国に新しい店ができたんだけど……」
「本当にすまない、家が厳しくてね、七時以降は外出禁止なんだ」
菅原はそう言うとベンチから立ち上がり、教室へ向かった。咲耶は一人残され、密かに傷心した。
菅原が立ち去るとすぐ、近くの茂みから一団が飛び出してきた。喜ぶ者もいれば、嫌そうな顔をする者もいた。
「ははは、言っただろう!石井さんが出ても菅原の石頭は動かないって!さあ、賭けだ、金を出せ!」
「ふん〜何がそんなに偉いのよ。あのバカがここまで頑固だなんて知らなかったわ。それに『家が厳しい』って、両親はもう……」女の子の一人が白目を向いて言った。
「沙織(さおり)!」咲耶は彼女の言葉を遮り、続けさせなかった。
沙織と呼ばれた女の子は口を閉じ、急に眉を上げた。「咲耶、まさか本当に彼のことが好きなんじゃ……」
咲耶が何か言う前に、彼女に好意を持つ男子が急いで口を挟んだ。「ありえないって!石井美人がどうしてあんな木みたいな奴を好きになるわけ?」
「そうだよ、もし本当に菅原のことが好きなら、俺たちと賭けなんかしないだろ」子分が附和した。
「そうね、考えすぎだったわ。教室に戻りましょう」
……
全員が教室に戻ると、咲耶は席に座り、一番後ろの菅原の方を見つめた。唇を軽く噛み、謝りに行こうとしたが、勇気が出なかった。
おそらく、いわゆる賭けという口実があったからこそ、彼を誘う勇気が出たのだろう。
授業開始のベルが鳴った。
教師は教壇で知恵を振り撒き、学生がそれをどれだけ受け止めるかは彼ら次第だった。
少なくとも菅原は傘を差し、一人美しく佇んでいた。
卒業後、彼は就職するつもりはなく、必要な書類さえ揃えば道観に入るだけで十分だった。
そう、菅原は将来に迷う大学生たちとは違い、自身に対して非常に明確な計画を持っていた。
卒業したら道観に入り、だめなら寺院、最悪でも教会に入るつもりだった。
今生では世俗との関わりを一切望まず、ただ神の庇護の下で安全に一生を過ごしたかった。
転生した当初は嬉しかった。異なる人生を楽しむつもりだった。だが、ここがどこなのか、誰か教えてくれ!
帰りたい!
社畜に戻りたい!
007の生活に戻りたい!
九歳の時、菅原は転生してきた。状況に慣れる間もなく、両親が名状しがたい生物に飲み込まれるのを目撃した。
その生物と目が合った瞬間、気を失った。目覚めた時は病院のベッドの上だった。
傍にいた女性の顔は見えなかった。胸が大きすぎて顔が隠れていたからだ。
彼女が「記憶は消去済み、感染の兆候はありません」と言うのが聞こえた。
その後、白衣を着た男たちが来た。医者には見えなかった。髪の毛が豊かすぎたからだ。
彼らは遠回しに奇妙な質問をしてきたが、菅原は愚かではなかった。こんな時に正直に答えるはずがない。
もし彼らが特殊組織で、自分の記憶が消えていないことがバレたら、組織に連れて行かれ、訓練され、あの名状しがたい生物と戦わされるかもしれない。
そんなのはごめんだ。彼は恐れていた。チート能力もないのに、そんなことをするのは愚か者だけだ。
質問に答えず、さらに問われると頭痛がすると言った。九歳の彼の欺瞞的な顔つきのおかげで、疑われることはなかった。
その後、伯母の家で暮らすようになり、現在に至る。
菅原は、自分が今日まで無事に生き延びられた理由を一言でまとめると、「好奇心を抑える」ことだと思っていた。
奇妙で不気味な場所——行かない!
怪しくて恐ろしいゲーム——やらない!
夜の闇——滞在しない!
彼は夜の寮に泊まることさえしなかった。学校は怪談が最も流行る場所で、夜には何が出るかわからなかったからだ。
十五時二十分、下校のベルが時間通りに鳴った。
今日は金曜日、午後の授業は一つだけ。菅原は荷物をまとめ、外へ向かった。
「あっ……」
咲耶は一時間かけて勇気を振り絞り、菅原に謝りに行こうとしたが、次の機会を待つしかなさそうだった。
校門の外、菅原はシェアサイクルを借り、市内の消防署へ向かった。
彼は消防署の向かいに住んでおり、窓を開ければ180センチを超える筋肉質の男たちが見え、とても安心できた。
公務員が怪異に対して効果があるかはわからなかったが、少なくとも心理的な安らぎは得られた。
道中の平和な光景を見て、菅原の気分も少し明るくなった。
この世界は表面上、普通の世界と変わらないように見えた。つまり、怪異な生物たちはまだ国家によって制御されているということだ。それは良いニュースだった。
彼らがさらに努力し、より大きな成果を上げることを願うばかりだった。
「菅原くん!」
自転車をこいでいると、誰かが自分を呼ぶ声が聞こえた。彼は速度を上げ、振り返らなかった。
「新入りだよ!」
キキッ!
菅原はブレーキをかけ、引き返した。
「何が入った?」
この店は中古品を専門に販売しており、菅原はよくここでゲームカートリッジや様々なお守りを買っていた。
店主は菅原の反応を見ても特に奇妙とは思わなかった。少し変わっていないと、こんなものを買う人はいないだろう。
店内から赤い絹布を敷いたトレイを持ち出し、その上には三つの品物が並べられていた。
「霊海寺の数珠、大師の直筆サイン入り」
「青雲観の八卦鏡、割れているように見えるが、超強力な赤い幽霊と戦って割れたんだ。それでもまだ強力な法力を持っている」
「西教会の聖瓶、ワハハ〜のミネラルウォーターを注ぐだけで聖水に変わる。忘れるな、ワハハ〜ブランドだけだ」
菅原はしばらく注意深く観察し、声を潜めて尋ねた。「いくら?」
「二日間」
「了解」
「鍵は持ってるな?日曜の午後には戻るから、植物の水やりを忘れるな」
「ああ」
菅原は三つのアイテムを受け取り、自転車で立ち去った。顔に微笑みが浮かぶ。どの世界でも、やはり良い人が多いのだ。
これらの物に大した価値や効果がないことは、店主も知っていたし、菅原はさらによく知っていた。
しかし店主は菅原の事情を知って以来、毎週のように似たようなものを探し、他人から数十円で買い取り、彼に渡していた。
店番の報酬として、店主が渡すものの中にはお金が入れられていた。
お金を発見したのも偶然だった。ある日、帰宅すると家に物音がし、買ったばかりの浄世琉璃玉浄瓶を手に取って投げつけた。
結果は窓が完全に閉まっておらず、野良猫が台所に入り込んでいただけだった。思いがけず瓶の中に入っていた数百円を見つけ、ようやく店主の好意を理解した。
家に帰ると、菅原はすべての電気をつけ、テレビをローカルニュースチャンネルに合わせ、台所で夕食の準備を始めた。
「夏休みが近づいています。学生の皆さんは外出時に安全対策をしっかりと行い、湖や川の近くには行かないでください……」
「暑さが増すにつれ、市民の気性も荒くなっています。どうぞご覧ください……」
「最近、当市の三仙橋付近で刃物による負傷事件が発生しました。現在警察は全力で捜索中です。市民の皆様は身の安全に注意し、その付近での滞在を避け、ドアや窓の確認を……」
二十分後、簡単に二品の料理を作り、昨日のスープと一緒にリビングルームに運び、菅原はやっと携帯電話をテレビに接続し、好きなバラエティ番組を再生した。
ニュースの内容には特に関心がなかった。緊急放送で避難場所の案内でもない限り気にしなかった。
食事中、菅原は今日買った三つの品物を見て、黒い瓶だけがお金を入れるのに適していると思い、それを手に取った。
逆さにして何度か叩いてみた。
「ん?何か詰まってる?」
菅原は手を瓶の中に入れたが、突然痛みを感じた。何か鋭いものに触れ、指を切ったようだった。
手を引き抜く間もなく、瓶が熱くなり始めた。菅原は表情を変え、すぐに右手で瓶を投げ捨て、左側のドアへと駆けだした。
しかし、遅すぎた。
周囲は一瞬で黒い霧に飲み込まれ、まるで別の空間にいるかのようで、逃げ場はなかった。
菅原の心に悲しみが湧き上がった。
日々、邪気払いの品を買い集めていたのに、今日は邪気払いの品に裏切られたのだ。
因果応報だ〜