概要
大晦日の夜、私は一枚の離婚届にサインした。夫の九条冬弥(くじょうとうや)は、初恋の相手である氷室美夜(ひむろみや)と、私の息子・怜士(れいじ)と共に新年を祝っている。送られてきた動画に映るのは、幸せそうな三人の姿。この五年間の幸福がすべて偽物だったと知った私に、美夜から追い打ちをかけるメッセージが届く。
「怜士くんが言ってたわよ。『あのババアを殺して美夜さんをお母さんにしたい』って。可愛いでしょ?」
実の息子にまで存在を否定され、育ての亲の墓参りの道中で夫に置き去りにされた私は、雨の中を四時間さまよった。高熱で倒れ、病院のベッドで目覚めた私を待っていたのは、心配ではなく「気を引くための芝居だろ」という夫の罵倒。もう、何もいらない。夫との最後の繋がりだったSIMカードをゴミ箱に捨てた時、私は誓った。これは復讐ではない。私だけの人生と夢を取り戻すための、始まりの儀式なのだと。
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