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23.07% 星の誓いは、偽りでした / Chapter 6: 第06話:殺意の味噌汁

章 6: 第06話:殺意の味噌汁

第06話:殺意の味噌汁

夕食を終えた詩織が二階の寝室で休もうとしていると、玄関のドアが開く音が響いた。

怜が帰ってきたのだろう。詩織は振り返ることもせず、ベッドに腰を下ろした。

「ただいま」

怜の声に続いて、聞き慣れた女性の笑い声が聞こえてくる。

詩織の手が止まった。

「お邪魔します」

彩霞の声だった。

詩織は階段を下り、玄関へ向かった。そこには怜と彩霞、そして使用人が彩霞の大きなスーツケースを運んでいる光景があった。

「詩織」

怜が振り返る。

「彩霞が部屋を見つけるまでの間、ここに泊めることにした」

一方的な宣言だった。詩織の意見を求める気など、最初からない。

「ほんの数日だけよ」

彩霞が申し訳なさそうに微笑む。完璧な演技だった。

詩織は静かに頷いた。

「そう」

怜が眉をひそめる。

「怒らないのか?」

「冗談よ」

詩織は微笑んだ。本心を隠して。

心の中では、すでに決めていた。三日後には自分がここを出ていく。

「詩織って本当に優しいのね」

彩霞が安堵の表情を浮かべる。

「怜、明日は詩音を遊園地に連れて行くって約束したでしょう?」

「ああ、そうだったな」

怜の顔が緩む。

「家族三人で出かけよう」

家族三人。

詩織はその言葉を聞き流した。もうどうでもよかった。

夜が更けて、詩織が眠りにつこうとした時、廊下から声が聞こえてきた。

「今夜は一緒に寝て」

彩霞の甘えるような声だった。

「だめだ。詩織は法律上の妻だ」

怜が拒む声が続く。

「結婚届に書いた名前は私よ。あの人の方が偽物」

彩霞の言葉が詩織の胸を突き刺した。

「分かった。お前が滞在している間は、詩織に指一本触れない」

怜の約束する声が聞こえる。

詩織は枕に顔を埋めた。もう何も感じなかった。

翌朝、詩織が階下のダイニングに降りると、怜と彩霞がすでに朝食をとっていた。

「おはよう、詩織」

彩霞が振り返る。エプロン姿で、まるでこの家の女主人のように振る舞っている。

「お味噌汁、作ったの。どうぞ」

彩霞が詩織に椀を差し出した。

詩織がその中を覗いた瞬間、血の気が引いた。

味噌汁の底に、栗が沈んでいる。

「私、栗にアレルギーがあるの」

詩織が静かに言った。

彩霞の目が一瞬光る。

「あら、そうだったの?ごめんなさい」

彩霞が涙を浮かべた。

「せっかく早起きして作ったのに……」

「彩霞」

怜が立ち上がる。

「詩織、彩霞の苦労を無にするつもりか?」

詩織は夫を見つめた。

「私が栗にアレルギーがあるって知ってるくせに、彼女の苦労に配慮しろって?」

詩織の声が震えた。

「私の命を危険に晒してまで?」


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