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15.38% 星をくれた夫との偽りの契約 / Chapter 4: 第4話:孤児院の階段で

章 4: 第4話:孤児院の階段で

第4話:孤児院の階段で

[氷月詩織の視点]

「やっほー、詩織。久しぶり」

美夜の軽やかな声が院長室に響く。まるで友人同士の再会のような口調だった。

「美夜さんは星見の揺り籠の出資者なんだ」

怜が慌てたように説明する。

「出資者?」私は眉をひそめた。「それと養子縁組に何の関係があるの?」

「詩織、お前は本当に冷血な人間だな」

怜の言葉が胸に突き刺さる。

冷血?私が?

裏切られた側の私が、なぜ加害者扱いされなければならないのか。

「キャリアが大事だから子供はまだ作れないって、五年間も私に言い続けたのは誰?」

声が震える。

「姑に『嫁のくせに子供も産めない』って嘲笑われても、一度も庇ってくれなかったのは誰?」

怜の表情が強張る。

「それは……」

「私との子どもが欲しくないの?」

最後の望みをかけて尋ねた。

「あと数年したら考えよう」

またごまかし。またはぐらかし。

彼女は言葉を遮った。心はすでに、死んでいた。どうでもよくなっていた。

「わかった」

力なく呟く。

「雫ちゃんを引き取りましょう」

「詩織!」

怜が喜びの声を上げ、私を抱きしめた。

「やっぱりお前はいい嫁だ」

怜の肩越しに、美夜の瞳が見えた。

嫉妬の炎が宿っている。

書類上の妻の地位では飽き足らない。公的な妻の座を狙っているのだ。

「じゃあ、手続きの書類を取ってくる」

怜が院長室を出て行く。

私と美夜だけが残された。

----

階段の踊り場で、二人の女性が向かい合っていた。一人は疲れ切った表情の詩織、もう一人は勝ち誇ったような笑みを浮かべる美夜。

「雫って、怜にそっくりよね」

美夜がわざとらしく呟く。

「特に目元とか」

挑発的な視線を向けてくる。

美夜は髪をかき上げ、鎖骨のあたりを露わにした。そこには鮮やかな赤い痣が残っている。

「ごめんね、うちの旦那っていつもこんな感じで……」

キスマークを見せつけるように首を傾ける。

「怜もこんな感じだった?」

----

[氷月詩織の視点]

美夜の挑発に、冷たい怒りが湧き上がった。

「犬がエサに飛びかかるって話、聞いたことある?」

私は静かに言った。

美夜の顔色が変わる。

「あなたみたいな」

その時、美夜の視線が階段の角に向いた。人影が見える。

「なら見てみましょうよ」

美夜が不敵に笑う。

「あの犬がエサに飛びかかるのか、人に飛びかかるのか」

次の瞬間、美夜は自らバランスを崩した。

まるで私に突き落とされたかのように、階段を転がり落ちていく。


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