テーブルを触ると、少々ほこりが指先に付いた。かなり長い間人が住んでいなかったことがわかった。
唐沢新はドアに体を預け、冷たい笑みを浮かべながら、ネクタイを少し緩めた。
なるほど、秦野幸子はこれだけの年月が経っても学習しないらしい。また七年前のように逃げ出すつもりか?
だがその考えはすぐに頭から追い払った。今の幸子は七年前のような何の束縛もなく、何の欲もない状態ではない。今持っているものを手放すことなどできないはずだ。
逃げ出したわけではないとすれば、彼への挑発だろう。
唐沢新は渡辺助手に電話をかけ、秦野幸子の居場所を調べるよう指示した。そして電話をベッドに投げ、ネクタイとシャツを脱ぎながら長い脚で浴室に向かった。
バスローブを羽織って出てきたとき、渡辺助手はすでに調査結果を彼の携帯に送っていた。
唐沢新はベッドに横たわり、長い指でスマホを掲げながら画面をなぞた。資料を最後まで読み終え、彼は感情のない薄笑いを唇の端に浮かべた。
指先で画面を数回タップした後、結局幸子に電話をかけ直した。
今回は相手が出たため、唐沢新は驚いて眉を上げた。幸子のいつもの冷淡な声が聞こえてきた。「何の用?」
唐沢新は急いで口を開く気などなく、上半身を起こして、のんびりとベッドの背もたれに凭れ、煙草の箱から一本抜き取るとライターで火を点け、深く吸い込んでから濃い煙の輪を吐き出した。
声も少しだるそうに変わった。「どこにいる?」
幸子は「青森よ」と言った。
新は「さっき電話したのに、なぜ出なかった?」と言った。
幸子は平静に答えた。「撮影中だった」
唐沢新は頷いた。「じゃあ、なぜ今は出たんだ?」
幸子は「撮影が終わったから」と言った。
唐沢新はタバコを指先で挟み、灰皿で軽く灰を落とした。「撮影が終わったなら、なぜ電話を返さなかった?」
幸子の声はさらに平静になった。「ちょうど電話しようと思っていたところ」
この完璧で非の打ちどころのない受け答え。もし唐沢新が彼女の性格を知らなければ、きっと騙されていただろう。
唐沢新は笑い声を漏らした。怒りはしなかったが、親しげな口調に変えた。「一ヶ月以上会ってないな。俺はお前に会いたいよ」
相手は十数秒沈黙した後、ようやく「私は三ヶ月間ずっと撮影があるの」と言った。
唐沢新は理解していないふりをして聞いた。「それで?」
「撮影が終わったら、帰るわ」
つまり、撮影が終わるまでは会わせないということだ。
唐沢新はもう一服タバコを吸ったが、何も言わなかった。
幸子も彼の言葉を待つ気はなく、続けた。「まだ撮影があるから、もう切るわ」
そして、カチッという音とともに、耳元には忙しい音だけが残った。実に潔い対応だった。
……
新は一人でその大きなベッドで一晩を過ごしたが、あまりよく眠れなかった。
翌日、渡辺助手が彼を迎えに来たとき、その陰鬱な表情を見て、誰かが災難に遭うのだろうと内心推測した。
この御曹司の気質は、彼が不機嫌なら、誰も幸せになれないというものだった。
案の定、オフィスに踏み込むと同時に新はデスクの奥に腰を下ろした途端、薄く唇を吊り上げ、二つの指示を投げつけた。