中村美咲は一枚の写真を取り出し、テーブルの上に置いた。
すると、彼女は男の穏やかな瞳に千の波が激しく打ち寄せるのを見た。彼の周りの温度が急激に下がった。
彼女は自分の賭けが当たったことを悟った。
写真の女性は十七、八歳で、白いドレスに黒髪、表情は生き生きとし、花のような笑顔を浮かべていた。彼が一目見ただけで抗えない美しさだった。
秋山の氷のような視線が彼女を切り裂くように襲ってきた。まるでその場で彼女を引き裂きたいかのように。
「俺の書斎に入ったのか?」
美咲は少し苦い笑みを浮かべた。「書斎に入らなければ、あなたがずっと心に秘めていた人が……私の姉だったなんて、知るはずがなかったわ」
そう。
写真の女性は美咲とそっくりで、彼女自身でさえ見分けがつかないほどだった。
しかし美咲は知っていた。あんな愛らしい表情を見せる人は、決して自分ではないということを。
美咲は深く息を吸い込み、言った。「だから秋山、あなたが愛していた人はずっと私の姉で、彼女と結婚できなかったから、次善の策として私を娶ったの?」
彼の沈黙が、美咲の推測を裏付けていた。
彼女は笑おうとしたが、笑えなかった。
彼女は悲しみを含んだ声で、震える唇で言った。「私を彼女の身代わりにして、こんな自己欺瞞……面白いと思ってるの?」
秋山の表情に変化はなく、静かな外見の下に激しい感情が隠されていた。
光と影の中、彼の整った顔立ちはまだはっきりと見えた。
ふと、美咲は中村詩織(なかむら しおり)と彼が一緒に立っている光景を思い浮かべた。
一人は優しくて情熱的、もう一人は深く愛し優しい。誰もが「天が結んだ素晴らしいカップル」と称賛するだろう。彼女も例外ではなかった。
もし……姉がまだ生きていたら。
そう考えると、美咲の長いまつげが下がり、弱々しく壊れやすい表情になった。
ほとんど聞こえないほど小さな声で。
「私は以前のことを覚えていないけど、あの事故は私が望んだわけじゃ……」
「黙れ!」
秋山が突然声を上げた。
美咲は唇を噛み、彼の致命的な視線に耐えながら続けた。「わかってる、あなたたちは皆、姉が死ぬことを望んでいなかった。できることなら、死んだ人が私であってほしかったはず。でも、私はもう生き残ってしまった」
「……」
彼女の目から涙があふれ、感情が高ぶった。
「秋山、あなたが彼女を偲ぶのは構わない。誰も止めないわ。でも、私を一緒に引きずり込まないで」
彼女は二人の間で、一度も間違いを犯したことがなかった。姉と秋山がどのように出会い、恋に落ちたかさえ知らなかった。ましてや彼らの関係を羨むことも、割り込むこともなかった。
間違いと言えば、彼女の人生で唯一の過ちは、詩織に関することだった。
しかし彼女が償うべきは詩織に対してであり、本来詩織のものだった立場に座り、一生を秋山に捧げることではなかった。
それは亡くなった詩織にとって不公平だった。
彼女自身にとっても同様だった。
「ふん」
一声の冷笑に、美咲の体が硬直した。
秋山の表情は厳しく、黒い瞳には天地を揺るがすような痛みが宿り、静かな口調の下には強烈な皮肉があった。「美咲、今こんなことを言っても、何の意味がある」
美咲は激しく震え、唇を震わせた。「私は……」
「俺に見逃してほしいのか?」
その質問に、美咲は氷の牢獄に閉じ込められたような気分になった。
秋山が立ち上がり、暗い影が降りてきて、彼女を檻のようにしっかりと閉じ込めた。
彼の手の中の煙草の吸い殻は燃え尽き、指先が焼けたが、顔には波紋一つなく、冷たく宣言した。
「お前が生きている限り、俺はお前を許さない」
「……」
「今生、お前は逃げられない」
紙が引き裂かれ、灯りの下に舞い上がり、奇妙で悲しい光景だった。
美咲はその舞い散る破片の中で、秋山が振り返りもせずに部屋から出て行くのを見た。彼は彼女を一瞥もしなかった。
彼女の涙がついに溢れ、頬を伝って床に落ちた。
しばらくして、女性は床から立ち上がり、かがんで一枚一枚の紙片を拾い上げた。
彼女は顔を伏せ、涙の跡が残り、目の奥には悲しみが満ちていたが、さらに深い感情も溢れ出て、暗くて判別しがたかった。
最後に、破れた紙はひとまとめにされ、ごみ箱に投げ捨てられた。