アプリをダウンロード
4% 結婚式、花嫁を「愛人」に譲ります / Chapter 1: 第1話:偽りのサプライズ
結婚式、花嫁を「愛人」に譲ります 結婚式、花嫁を「愛人」に譲ります original

結婚式、花嫁を「愛人」に譲ります

作者: 白玉 あん

© WebNovel

章 1: 第1話:偽りのサプライズ

第1話:偽りのサプライズ

[綾崎(あやざき)詩音(しおん)の視点]

聖儀の館の応接室で、私は担当プランナーの前に座っていた。彼女の困惑した表情が、私の要求がいかに異例なものかを物語っている。

「花嫁だけを変更、ですか?」

プランナーは資料を見返しながら、戸惑いを隠せずにいた。

「はい。2週間後の結婚式は予定通り行います。ただし、花嫁を別の方に変更していただきたいの」

私は冷静に答える。表情一つ変えずに。

「しかし、綾崎様。このような変更は前例がなく……」

「お金の問題でしたら心配いりません。追加料金も含めて、全て私が負担します」

プランナーの目が見開かれた。私は続ける。

「それと、氷月(ひづき)怜士(れいじ)には一切連絡しないでください。今後のことは全て私を通してほしいの。これは絶対に守っていただきたい条件です」

「わかりました。では、新しい花嫁の方のお名前を……」

「花園(はなぞの)玲奈(れいな)です」

私がその名前を口にした瞬間、プランナーの手が止まった。

聖儀の館を出た詩音は、スマートフォンを取り出してK市行きの切符を予約した。2週間後の結婚式が終わったら、すぐにこの街を離れる予定だった。

予約を完了した直後、着信音が鳴った。画面に表示された名前を見て、詩音の唇に冷たい笑みが浮かんだ。

[綾崎詩音の視点]

「詩音?今どこにいるんだ?」

怜士の声が聞こえる。いつもと変わらない、優しい声。

「聖儀の館よ。結婚式の最終確認をしていたの」

「そうか。お疲れさま。今夜、一緒に夕食でもどうだ?」

夕食。

その言葉を聞いた瞬間、私の記憶は過去へと遡った。

――あの日のことを思い出す。

私たちが初めて夕食を共にしたのは、大学生の時だった。幼馴染だった私たちが恋人同士になったきっかけも、夕食の誘いからだった。

「詩音、大丈夫か?」

怜士が心配そうに私の肩に手を置いた。あの事件の後、私は男性に触れられることすら怖くなっていた。暴漢に襲われた夜の記憶が、私を縛り続けていた。

「怖くない。怜士だから、怖くないの」

私がそう言うと、怜士は安堵の表情を浮かべた。

「詩音、俺と付き合ってくれ」

突然の告白に、私は驚いた。

「でも、私……まだあの事件のことが……」

「時間をかけよう。君のペースで構わない。俺は待つから」

怜士の優しさに、私の心は救われた。でも同時に、私は彼に条件を出した。

「怜士、もし私たちが付き合うなら、約束して。完全な愛を誓って。もし裏切ったら、私は二度とあなたの前に現れない」

怜士は真剣な表情で私を見つめ、力強く誓った。

「詩音、俺は君だけを愛する。一生君を愛し、君を大切にすることを誓う」

その誓いを信じて、私は彼と歩んできた。トラウマを乗り越え、彼の愛に支えられて、私は再び笑えるようになった。

――そして昨夜、全てが崩れ去った。

怜士が花園玲奈と既に入籍していることを知った時、私の世界は音を立てて崩壊した。

「詩音?聞こえているか?」

電話の向こうの怜士の声が、私を現実に引き戻す。

「ごめんなさい。少しぼんやりしていたわ」

「疲れているのか?今夜はゆっくり休んだ方がいいかもしれないな」

「いえ、大丈夫よ。実は、あなたにサプライズを用意したの。結婚式の日にあげるわ」

電話の向こうで、怜士が笑う声が聞こえた。

「サプライズか。楽しみだな」

その時、電話の向こうから微かに女性の吐息が聞こえた。布が擦れる音。そして、唇が重なる湿った音。

怜士は今、玲奈と一緒にいる。

私は何も聞こえなかったふりをして、明るい声で答える。

「きっと驚くと思うわ。楽しみにしていてね」

「ああ、楽しみにしている。それじゃあ、また明日」

電話が切れる。

私はスマートフォンを握りしめ、空を見上げた。

怜士、2週間後、結婚式で起こる出来事が、あなたにとって本当にサプライズであることを願うわ。


next chapter
Load failed, please RETRY

ギフト

ギフト -- 贈り物 が届きました

    週次パワーステータス

    Rank -- 推薦 ランキング
    Stone -- 推薦 チケット

    バッチアンロック

    目次

    表示オプション

    バックグラウンド

    フォント

    大きさ

    章のコメント

    レビューを書く 読み取りステータス: C1
    投稿に失敗します。もう一度やり直してください
    • テキストの品質
    • アップデートの安定性
    • ストーリー展開
    • キャラクターデザイン
    • 世界の背景

    合計スコア 0.0

    レビューが正常に投稿されました! レビューをもっと読む
    パワーストーンで投票する
    Rank NO.-- パワーランキング
    Stone -- 推薦チケット
    不適切なコンテンツを報告する
    error ヒント

    不正使用を報告

    段落のコメント

    ログイン