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5% 血涙の鎮魂歌~裏切られた愛の終幕~ / Chapter 1: 第1話:裏切りの代償
血涙の鎮魂歌~裏切られた愛の終幕~ 血涙の鎮魂歌~裏切られた愛の終幕~ original

血涙の鎮魂歌~裏切られた愛の終幕~

作者: 惰眠ポン酢

© WebNovel

章 1: 第1話:裏切りの代償

第1話:裏切りの代償

退院手続きを終えた刹那(せつな)は、病室に忘れ物を取りに戻った。扉の前で足を止める。中から聞こえてくる声に、心臓が凍りついた。

「暁(あかつき)、あなた最低よ!」

響(ひびき)の怒声が廊下まで響いている。

「刹那に嘘をついて骨髄を提供させるなんて......しかも蝶子(ちょうこ)と体外受精まで!一体何を考えているの?」

刹那の手が震えた。骨髄提供?体外受精?

「仕方なかったんだ」暁の声が低く響く。「蝶子だけが適合者だった。それに、蝶子のおばあさんを安心させてあげたかったんだ」

「それが理由?」響の声がさらに鋭くなる。「そもそもあなたが刹那に近づいたのだって、月城(つきしろ)の次男への当てつけでしょう?八年前のこと、忘れたとは言わせないわよ」

月城の次男......陽介のこと?

刹那の脳裏に、十五歳の自分が浮かんだ。陽介に告白された直後、突然現れた暁。優しい笑顔で近づいてきた彼の真意が......。

「響、頼むから黙っていてくれ」暁の声に苛立ちが滲む。「全部手配済みだ。刹那は一生、蝶子ちゃんの妊娠を知ることはない。将来のことだが、この八年で刹那の存在には慣れたし、結婚してあげるつもりだ......」

結婚してあげる?

刹那の世界が音を立てて崩れ落ちた。

八年間。五年間の介護。献身的な愛情。全てが嘘だったのか。

足音が近づいてくる。刹那は慌てて角に身を隠した。暁と響が病室から出てくるのを見送ってから、何事もなかったかのように病室に入る。

「お疲れさま。手続き、終わったよ」

振り返った暁の笑顔が、今は仮面にしか見えない。

「ありがとう。帰ろうか」

車内で暁が結婚式の話を始めた。

「来月あたりに式を挙げようと思うんだ。刹那の好きな教会で......」

声が遠くに聞こえる。窓の外を流れる景色を眺めながら、刹那は過去を振り返った。

十五歳で出会った暁。事故で足を悪くした彼を、五年間支え続けた。胃の病気だと言われて入院した時も、彼は毎日見舞いに来てくれた。

胃の病気......それも嘘だったのね。

骨髄を提供するための口実。影山(かげやま)蝶子のために。

深夜十二時。

暁のスマホが鳴った。画面に表示された名前を見て、刹那の心が完全に凍りついた。

『愛しき蝶子ちゃん』

「ごめん、急用だ。すぐ戻る」

暁は慌てて家を出て行く。

刹那は震える手でスマホを取り出した。母親の番号を押す。

「お母さん?私よ、刹那」

「こんな夜中にどうしたの?」

「龍胆(りんどう)家との縁談......受けます」

電話の向こうで母親が息を呑む音が聞こえた。

「本当に?でも刹那、龍胆家と夜神(やがみ)家は敵対関係にあるのよ。暁さんが......」

「七日後に空港へ向かいます。すぐに入籍の手配をお願いします」

「刹那......」

涙が頬を伝った。でも声は震えていない。

「もう一生、夜神暁の顔なんて見たくない!」


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