裏切ったよね？じゃあ叔父さまに嫁ぐね
作者: さ・しょうしょう© WebNovel
章 1: あなたの体は、ちゃんと私に応えてる
編集者: Pactera-novel
薄暗い地下室。
男は目を覆われ、ベッドの上に縛られていた。
「誰だ、お前は？こんな卑劣な手段で俺の子を身ごもろうなんて、絶対に許さない！」
数日の苦しみで、男の声はすでに枯れていた。
手足は鎖で擦れ、血の跡がついていた。
だが何より耐え難かったのは、彼の上に覆いかぶさり愛撫している女の存在だった。
「うるさい！」女は騒がしさに耐えられず、桃色の唇を尖らせ、強引に彼にキスをした。
「出て行け……」
男は抵抗し、もがき、歯で女の唇を噛み破った。
血が絡み合う唇と歯の間で溶け、鉄のような生臭い甘さが一瞬にして男の口内に広がった。
この味は……男は一瞬驚いた。
それはほんの一瞬の出来事だった。
女は身を翻して男の上に跨がり、強引に彼を受け入れた――。
！！！
机に伏していた高木詩織（たかぎ しおり）は急に目を見開いた。
本来は白く繊細なその顔が、夢の熱にうなされて赤く染まっていた。
いったいどうしたというのだろう。
彼女は思わず眉をひそめた。
性のことなど何も知らないはずなのに、この二年間ずっと同じ夢を見続けている。
しかも奇妙なことに、最近ではその夢がますます鮮明になってきていた。
前回はまだ男とキスをしただけだったのに、今回は無理やり体を重ねてしまった！
あまりにも常軌を逸している！
ズキズキと痛む額を押さえながら、詩織は視界の端に、ほとんど燃え尽きたキャンドルと色あせたバラ、そしてすっかり冷めたフランス料理を捉えた。
そのとき彼女は思い出した。今夜は婚約者の加藤昭宏（かとう あきひろ）と会い、自分を捧げるつもりでいたのだ。
しかし結果はどうだったか。
ロマンチックなはずのフランス料理はすっかり冷め、空輸された高価な赤ワインも、彼女が半分近くを飲み干してしまっていた。けれども昭宏は、ついに姿すら現さなかった。
おそらく、また別の女性と過ごしているのだろう。
でも、父が彼女に残した時間はもう多くない。このまま手をこまねいているわけにはいかない。
詩織はふらふらと立ち上がり、自ら昭宏を探しに出ることにした。
よろよろと玄関まで辿り着き、まだ数歩も歩かないうちに、誰かと正面からぶつかった。
彼女は一瞬固まり、顔を上げた。
目の前には、高くそびえ立つような人影があった。
逆光のせいで顔立ちははっきりとは見えなかったが、
輪郭だけでも十分に分かった。高い鼻筋に深い眼窩――それは稀に見る精緻な美しさであり、
ことに横顔は息をのむほどだった。
まるで神が丹精を込めて創り上げた芸術品のように、完璧な線で形づくられ、一切の欠点が見当たらなかった。
不思議なことに、その顔立ちは昭宏に五分ほど似ていた。
昭宏……
詩織は朦朧とした目を瞬かせ、救いの藁をつかむように言った。「やっと来てくれたの？」
男の白いシャツはボタンが二つ外れ、筋肉の輪郭がはっきりとした胸元が少し見えていて、酔った詩織の目を熱くさせた。
加藤凛（かとう りん）は電話をかけようとしていた動作を止めた。
午後、飛行機の中で、五年ぶりに、あの激しい頭痛の兆候がまた現れ始めた。
そのため、直接実家に向かう計画を取りやめ、代わりにホテルに来たのだ。
エレベーターを降りたばかりで、部屋を見つける前に、温かな体が彼の腕の中に飛び込んできた。
彼は反射的に女性を支えた。
しかし、彼女から漂う強い酒の匂いを嗅いだ後、眉をひそめ、嫌悪感を隠さず強く突き放した。
詩織はただでさえ立ち止まることもままならず、突然このように押されたため、壁にぶつかり、背中が痛んだ。
彼女は嘲るように笑った。その声には皮肉と冷ややかさが滲んでいた。「また香水の匂いが変わったわね？急がせてしまって悪かったわ、新しい彼女とのデートを邪魔したかしら？でも残念ね。今日あなたが来なければ、私は前に進めないの……」
潤んだ瞳で男を見つめる詩織の声には、深い憂いが滲んでいた。「分からないわ。外の女たちが本当にそんなにいいの？もし私が要らないのなら、どうしてあのとき婚約解消を拒んだの？必要としているのなら、なぜ外のあんな派手な女たちと関わるの？本当に分からない……私のどこが彼女たちに劣っているというの？」
凛は眉をひそめ、彼女の手首をつかみ、シャツの襟元に入り込もうとする動きを制した。
この数年、彼の地位と身分のため、彼のベッドに上りたがる女は数え切れないほどいた。
これまで数えきれないほどの美女を見てきた自負はあった。だが目の前の女――七分ほど酔い、あどけなさと色香の絶妙な均衡を保つその姿は、彼の視線を強く惹きつけた。
この女性はとても美しい。
特にその体は。
シルクのロングドレスに包まれていても、その色気は無視できないものだった。
確かに絶世の美女ではあった。だが彼が最も忌み嫌うのは、酔った女だった――。
頭痛はさらに激しさを増し、凛には彼女に時間を割く余裕も忍耐も残されていなかった。
彼は女の顎をつかみ、冷酷な声で言った。「三秒やる。今すぐ消えろ。さもないと――うっ！」
彼の言葉が終わる前に、急に襟が引っ張られるのを感じた。
体が引き寄せられて低くなった。
次の瞬間、唇が塞がれた。
力加減を誤った詩織の唇と歯がぶつかり、唇が切れた。
鉄のような生臭い甘さが、たちまち二人の口内に広がった。
凛は女の大胆不敵さに怒りと驚きを覚え、思わず彼女を突き飛ばそうとした。
しかし次の瞬間、頭の中の鈍い痛みが、まるで刀で削られるような感覚が、三分の一ほど和らいだ。
その発見に、死水のように沈んでいた彼の瞳に、驚きの波が立った。
考えるより早く、彼の体は脳より先に動き、形勢は逆転した。
部屋に入ると、彼は女性の温かく柔らかい唇を奪い、噛むように激しくキスした。
詩織が気を失いそうになるまで、彼は彼女を放さなかった。
頭痛の症状は、このキスの後、何の前触れもなく八割も和らいだ！
凛は少し乱れた息で、詩織の混乱した顔を見つめ、不思議なことに彼女の顔がどこかで見たことあるような気がした。
彼は抑えた声で尋ねた。「お前……一体誰なんだ？」
詩織はキスで頭がくらくらし、無意識に微笑み、「私は……あなたの妻よ！」
あどけない笑顔に無自覚な色香が混じり、男の胸の内は火が灯ったように熱くなった。
「妻だと？よく言うな」
この答えで、彼はこの女の素性が怪しいと確信した。
今回の帰国は私的な用件であり、実家の者以外に知るはずがなかった。
この女は、彼の帰国を知って抑えきれず、彼のために特別な罠を仕掛けたのかもしれない――。
一方、詩織は男が動かないのを見て、唇を噛み、少し不満げだった。
今日こそ成功しなければ、彼女は一歩も前に進めない。
父親との約束も、非常に厄介になるだろう。
正気を失った彼女は、少し挑発的に指先でショルダーストラップを落とした。
シルクのドレスが滑り落ち、背中いっぱいに広がる白玉のような肌が男の目を射た。
やがて彼の腕の中へと身を滑り込ませ、その勢いのまま男を壁へと押しやり、両足の間に割り込んで身を密着させた。
「ん……」詩織は彼の体の変化を感じ取り、朦朧とした笑みを浮かべた。妖艶で、人を惑わすような微笑みだ。「わかってる。あなたが五年前のことを気にしているのは。でも本当に、私はあなたを裏切ったことなんてない。ほら……あなたの体は、ちゃんと私に応えてる。私たち……」
彼女はつま先立ちになって彼に口づけし、小さな手を彼の急所に伸ばして、せわしなくも初々しい仕草で動かした。
轟――。
男の血が沸き立ち、一気に集中して理性の糸が断ち切られた。
代わって、最も原始的な渇望が胸の奥から噴き上がった。
ビリッ！
鮮やかに裂ける音が響き、すべてが制御不能に陥りそうになる、その刹那――。
リンリンリン、リンリンリン――！
女性の携帯電話が鳴り響き、邪魔された男は不機嫌そうに眉をひそめた。
横目で苛立たしげに画面を覗くと、「昭宏」という二文字が点滅している。その瞬間、彼の目がわずかに鋭くなる。
昭宏――彼の異母兄の息子。
そうなると、この女は……
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