翌日、慶明大学商学部の特別入学通知書が私の手元に届いた。
私が通知書を持って階下に降りると、桐山夫人、綾瀬清香、そして藤川彰人の三人がちょうどリビングに座っていて、顔色は一様に険しかった。
彼らはすでに事情を知っているようだった。
「桐山美夏、誰に許可を得て勝手に慶明大学に願書を出したのよ?」桐山夫人が詰問してきた。
「自分のことで、あなたに報告する必要がある?」
「あなた...」
清香が弱々しい声で口を開いた。「お姉さま、向上心があるのはわかるけど、慶明商学部はそう簡単に入れるところじゃないわ。あなたこうやって...何か裏道を使ったんじゃないの?もし人に知られたら、桐山家と彰人さんに迷惑がかかるわ」
そのひと言で、みんなの怒りが再び私に向けられた。
彰人の視線が氷の刃のように私を刺した。「言え、一体どんな手を使ったんだ?」
私は手にした通知書をひらひらさせながら、軽やかに微笑んだ。
「知りたい?」
私は彼の前に歩み寄り、少し身を乗り出して、二人だけに聞こえる声で言った。
「あなたが一生手に入れられないものよ——脳みそ」
彰人の顔が一瞬で真っ黒になった。
女にここまで挑発されたことは、おそらく初めてだろう。
特にその女が、彼の目には田舎出身の粗野な女で、彼に擦り寄って媚びるべき婚約者だというのに。
彼は私の手首を掴んだ。その力は骨を砕きそうなほど強かった。
「美夏、図に乗るな。慶明に入れたからって、俺から逃れられると思うなよ」
「言っておくが、俺が一言言えば、お前は明日にでも慶明から追い出されるんだぞ」
これが藤川彰人だ。すべてを支配することに慣れ、すべての人間が彼に頭を下げることに慣れている。
彼の世界では、権力と金こそがルールだった。
残念ながら、彼は知らない。私が持ち帰ったのは、もっと上級のゲームルールだということを。
私は抵抗せず、むしろもう少し近づいて、彼の怒りに満ちた目をまっすぐ見つめた。
「藤川社長、言い忘れていたわ。私が手に入れたのは、慶明名誉学部長の直筆推薦状よ。あなたの『白月』のために、あなたのお父さんでさえ一目置く人物を敵に回すつもり?」
彰人の瞳孔が急に縮んだ。
彼の目から怒りの炎が引き、代わりに審査と疑いの色が浮かんだ。
私が言った名誉学部長とは、国内金融界の重鎮で、何年も前に引退し、滅多に人に会わない人物だ。
彰人ももちろん知っている。彼の力でも、まだそのレベルには到底及ばないことを。
そしてこの推薦状は、もちろん九条和臣の仕事だった。
私は満足げに彼の表情の変化を見ながら、ゆっくりと自分の手を引き抜いた。
「だから、藤川社長。今でもあなたは、私を追い出せると思う?」
彼は私をじっと見つめ、怒りに震える獣のようだったが、爪や牙を抑えざるを得なかった。
しばらくして、彼は歯の間から絞り出すように言った。「お前...変なことをするなよ」
私は笑った。