「こんなに早く回復したのですか?」
通常なら、消毒して薬を塗っただけでは、この傷はが治るには少なくとも4、5日がかかるはずだ。
しかし小林威の傷にもう痂ができていた。
「康聖病院で…治療を受けたんですか?」鈴木清加は尋ねた。
威は率直に答えた。「そうです。その病院を知っていますか?」
「他の医師たちがよく口にしていました。あそこは最先端の設備を備えていて、特に外科は素晴らしいです。普通の怪我なら一度の治療で治るらしいけど、私は信じられなかったです。本当だったんですね」
清加は珍しそうに近づいて傷口を見つめた。鼻先が威のあそこに触れそうなほど近かった。
彼女の息があそこに当たるのを感じ、突然体が熱くなった。
彼は部隊で関連のトレーニングを受けていたので、通常なら反応しないはずだ。
でも今の彼は、我慢できなくなったみたいだ。
しばらく観察していたら、清加は不意に彼のあそこに気づいた。
「あっ…」少し大きくなったみたいだ。
彼女は慌ててソファの毛布を掴み、彼にかけた。
手のひらに汗がにじみ出している感覚がした。
「あの、私…わざとじゃなかったです」
威は割と冷静だった。彼はズボンを履きながら言った。「俺もわざとじゃなかったです。自然な生理反応ですから」
「じゃあ…私、仕事行きますね!」
「うん」威はただ頷いた。
清加は逃げるように部屋を出た。
……
病院。
毎朝行われる朝会が、いつも通りに開かれた。
今日、山本主任は何らかの理由で遅れた。
清加は科の別の仲の良い女医と話し始めた。
「山田さん、康聖病院のこと知ってる?予約が難しいって聞いたんだけど」
山田は少し驚いた様子だ。「どうして急に康聖病院の話を?」
「親戚が昨日あそこで診察を受けたんだ」
清加の言葉を聞いて、向かいの木村萍が嘲笑った。「本当なの?康聖病院は、お金持ちで、権力もある患者しか受け入れないわよ」
清加は尋ねた。「どんな権力なの?」
「どんな権力かは知らないけど、とにかくお金と権力両方が必要だよ。あそこは普通の外傷の診察だけでも20万円以上かかるわ。君の親戚にはそんなお金があるの?」
清加は思わず冷笑した。「私の親戚は、みんな私と同じように貧乏とは限らないでしょ。金持ちの親戚なんて、誰だって一人や二人いるわよ」
「そんなにお金持ちの親戚がいるなら、なぜ助けてあげなかったの?病院に入ったばかりの頃、教育ローンの返済に追われてたって聞いたけどね」
萍の意地悪な言葉を聞いて、山田は思わす言った。「木村医師、それは言い過ぎだよ。鈴木医師が親戚に頼らずに、自分でローンを返済できて、何が悪いの?他人に作った借りは、簡単に返せるものじゃないわ」
清加は山田さんに微笑んだ。「さすが山田さんだ。分かってくれるね」
木村は清加に白目をむいた。また何か言おうとしたが、山本主任が来た。
「すみません、渋滞に遭ってしまった。では朝会を始めましょう!」
……
夕方、清加は外来の出口に立ち、外の土砂降りを見ていた。
いつから降っていたのだろう?彼女は忙しすぎて、全く気づかなかった。
警備員はじっとしている彼女に気づき、尋ねた。「鈴木医師、傘はいりますか?」
清加は微笑んだ。「大丈夫です」
彼女の電動バイクにはレインコートがあるが、こんな大雨の中では、電動バイクに乗るのは危険だ。
室内のベンチで少し休んで、雨が小降りになるのを待つつもりだった。
そのとき、中村悠真と斎藤安信も出てきた。
清加は彼らを無視するつもりだったが、悠真が彼女の前に立ち止まり、見下すように言った。「鈴木医師、こんな大雨なのに、彼氏は迎えに来ないの?」
清加は冷たく笑った。「彼氏を自慢しに来たの?ただの男なんて、自慢する価値がないわ」
悠真は言った。「彼氏だけじゃなく、車もあるのよ。安信、車を出して。ここで待ってるから」
安信も得意げな様子だった。彼は今や家と車を持っていて、毎月住宅ローンを返済しないといけないとはいえ、愛する女性を風雨から守ることができる。
彼は悠真と浮気したことを少しも後悔していなかった。なぜなら、悠真は200万円も出して、一緒に車を買ってくれた。清加だったらそんなことはあり得ないのだろう。清加は卒業後ずっと教育ローンを返済していて、普段も外食しても高級店には行かない節約家だった。
お金持ちの女性と付き合えば、だいぶ苦労が省けるという言葉は間違いなかった。
安信が車を出しに行ったら、悠真は外来で待つことにした。
通りかかった知り合いの医師が声をかけた。「中村医師、まだ帰らないの?」
「うちの安信を待ってるの、車で迎えに来るって」と悠真は笑顔で答えた。
「安信君は本当にいい人だね、素敵な彼氏だわ」
「私もそう思うわ」
しばらくして、安信のBMW X5が入り口に停まった。悠真は清加に笑いかけた。「鈴木医師、じゃあ先に行くわね」
清加は淡々と答えた。「別に誰も引き止めてないけど」
「この雨、しばらく止まないわよ。ゆっくり待っててね」
「ご心配なく、気をつけて帰ってね」
悠真は車に乗り込み、安信に「安信、行こう」と言った。
「シートベルトを忘れたよ。締めてあげる」安信は近づいて悠真のシートベルトを締め、ついでに彼女の頬にキスをした。
「もう、ここは病院だよ」
車が病院を出ると、悠真は突然窓越しに見た人を指さした。「安信、見て、清加の彼氏じゃない?」
安信は車のスピードを落とし、その方向を見た。
大雨の中、体格のいい男性が大きな傘を差し、病院の外来診療棟に向かって歩いていた。その姿は堂々としていた。
こんな強烈な風雨でも、彼はものともしなかったみたいだ。
悠真はすぐに威の姿に魅了された。
本当に背が高くて、気品がある。
悠真が威を見ていることに気づき、安信は思わずアクセルを踏んで言った。「車でじゃなくて、歩いて彼女を迎えに来たなんて、本当に貧乏だな!」
悠真も少し考えて言った。「そうね、何やっているのかしら。二人で電動バイクに乗ったら、ずぶ濡れになるんじゃないの!」
……