離婚禁止！陸田弁護士の長年の企み

作者: 山を聴く

章 1: 陸田弁護士が私のベッドに？

編集者: Pactera-novel

インターコンチネンタルホテルのスイートルーム。

荒い息遣いが徐々に収まり、華田濃子（はなた・のうこ）の爪が男の背中に数々の鮮やかな痕を刻んだ…

……

慌ただしいノックの音が、泥酔していた彼女を目覚めさせた。

昨夜、一体何があったのか？彼女の婚約パーティーで、婚約者の元カノが現れて彼らのセックス映像を公開したのだ。

おかげで彼女は街中の笑い者になってしまった…

そして彼女は、酒で憂さを晴らそうとして、男と寝てしまった…その男はなんと、法曹界で恐れられる閻魔様だった。

しかしそれ以上に致命的なことに、かつて彼女が若気の至りで手を出しておきながら、一日で捨てた男だった。

そのせいで陸田敬人（りくた・けいと）は長い間、京港の社交界で「短期彼氏」と揶揄されていた。

元々カレが、彼女が元カレに浮気されたところを目撃した後に「実際に」慰めに来たというのか？

華田濃子は、芸能界の「清純派女優」という仮面が完全に剥がれ落ちる予感に震えた。

「お目覚めか？」

男は傍らに寄りかかり、タバコに火をつけ、薄く冷たい笑みを浮かべた。

「華田お嬢様と婚約者殿は面白いですね。お互いに好きにされておられます？」

華田濃子は心の中でとても汚い言葉を吐いた。

陸田敬人は長い指を伸ばして、ベッドサイドの灰皿を引き寄せた。

「元々カレと寝るなんて、いかなるお心持ちかね？元カレを苛立たせるためですか？」

「どうやらお二人、一人はホロンバイルで、もう一人はシリンゴルのようです！お互いの頭に鮮やかな緑が広がっています。」

華田濃子はシーツをまとったままバスローブを手に取り、体に羽織った。

くるりと踵を返した彼女の目に映ったのは、ベッドの柵にもたれ、上半身は露わに、下半身をかろうじてシーツで覆い、指にはタバコがくゆらされた男の姿だった。

全身が怠惰で魅惑的…この世のものとは思えないほど美しかった。

その深淵のような冷たさを帯びた眼差しが彼女に注がれ、彼女の言葉を待っていた。

陸田敬人、京港法曹界の皇太子様。周知の通り、この男が扱いにくい人物として有名だった。

「陸田弁護士、どうしてあなたが私のベッドに？」

「華田お嬢様、それはこちらのセリフです。」

男はベッドサイドテーブルのスマートフォン脇からキーカードを取り上げ、華田濃子の目の前でそっと揺らした。

華田濃子の表情が目まぐるしく変わった。誰が言っていたか？法廷で陸田敬人に会ったら、下着すら持ち帰れないだろうと。

華田濃子よ華田濃子。他の誰でもよかったのに、なぜ陸田敬人と寝てしまったの？

この守銭奴の評判は、もはや歴史に残るレベルなのよ。

「昨夜は酔ってしまいまして、陸田弁護士はお気になさらないでください。」華田濃子はそう言いながら、平静を装い、ベッドの足元に落ちたシルクの白いシャツを拾い、体にまとった。

バスローブが床に落ち、雪のように白い肌がむき出しにさらされた。

男はわずかに目を細め、研ぎ澄まされた目で彼女を見つめた。

「華田お嬢様は酔うと、毎回こんなにも無分別に他人のベッドに上がり込むのですか？他の男を押さえつけて強引に上に乗るのですか？」

華田濃子は弁明する気もなかった。何しろ、彼女と陸田敬人という元々カレとの関係で、穏やかな会話のやり取りなど期待できないからだ。

「そうかもしれませんね！多いときは、一日に二回も上がり込むことがあります。」

華田濃子は床に落ちたバッグを拾い、中から札束を取り出し、ベッドの足元にある長椅子に置いた。

「インターコンチネンタルホテルの最高級スペシャルサービスは一晩六万円で、こちらは十万円です。どうぞお納めください、陸田弁護士。」

陸田敬人は華田濃子が現金を取り出すのを見て、顔色がみるみるうちに陰った。

この彼を買春？

彼を風俗店の男扱いか？

「一晩十万円で、華田お嬢様は自分を買いかぶりすぎではないですか？」

華田濃子は何かを思い出したように、頷いて鞄からさらに一枚のコインを取り出した。

「これこそが陸田社長の本当の値段です。」

「ふっ——」男は冷たく鼻で笑った。

買春されるだけでなく、侮辱までされたとは。

「婚約パーティーで婚約者に浮気され、しかも浮気相手は名も知れない秘書。華田家と佐々木家は今や大混乱。華田お嬢様、もし俺が君と一夜を共にしたという情報が世に出たとでもしたら、君はどうなると思いますか？」

陸田敬人はベッドから降り、床からバスタオルを腰に巻きつけると、非情な口調をさらに深めて続けた。「俺が君なら、これ以上愚かな行為はしません。」

「君は元々佐々木良則のような頭の悪い二世坊ちゃんを見下していたのに、今や富豪ランキングにも載らない女に男を取られるとは、人前に出る顔もないでしょうね。京港一の令嬢である華田姫が、この一事を以て後世の笑い草にされましょう？」

華田濃子は軽く舌打ちした。「それが、陸田弁護士に何の関係がおありなので？」

「関係ないですが…」男は冷笑を帯びた口元で言った。「俺は君が落ちぶれる様を眺めるのは好きなんですから。」

華田濃子は嘲るように笑った。「陸田弁護士は見た目によらず、スーツを纏えば紳士然としておられても、所詮衣装を纏った獣ですね。」

「君が俺に頼みに来るのを待っています。」陸田敬人は手を伸ばし、指先で華田濃子の顎をそっと掬い上げ、冷たく言った。

華田濃子は顎の上に載った指を冷たく払いのけた。

「夢にでも思っていてちょうだい。」

……

佐々木家で、佐々木良則（ささき・よしのり）は床に跪いて震えていた。

「父さん、昨日のようなことが起こるとは本当に思っていませんでした。あの女とは…ほんの些細な遊びで。」

「何が『些細な遊び』だ？お前は高い地位と権力を持っていると思っているのか？売春婦を買って、そんな立派な言い方をするな。」

「父さん、俺も仕方がなかったんです！華田濃子とは一年以上も婚約していますが、彼女は俺に触れさせてくれません。俺は男です。欲求というものがあります！」

「畜生め！」

華田進（はなた・すすむ）は佐々木家の門に着いたところで、この言葉を聞いた。

彼は佐々木良則に歩み寄り、殴ろうとした手が上がった瞬間——ドンという轟音と共に気を失った。

……

ワゴン車の中で、マネージャーが華田濃子を睨む視線は、彼女の頭を開いて中身を見たいという思いが伝わってきた。

「他の誰でもよかったのに、なぜ陸田敬人と寝たの？華田濃子、もう芸能界で生きていく気がないの？」

「陸田敬人が本気を出したら、あなたを風俗営業法違反で通報するかもしれないよ。」

華田濃子は心の中で「あり得ない」と思った。

「それじゃ彼が風俗店の男であることを認めたようなものよ？」

「あなたが買春で捕まることと、彼が風俗店の男であることを認めることと、どちらの損失が大きい？華田濃子、あなたはまだ芸能界での地位を完全に固めていないのよ！」

「芸能界には陸田敬人を自分の弁護士にしたいタレントがどれだけいるか知ってる？」マネージャーは怒鳴りそうな勢いだった。

華田濃子は頭が痛くなり、マネージャーの腕を絡めて甘えた口調で訴えた。「とにかく、もう寝てしまったものは仕方ないでしょ？私を責めても意味がないわ！それより、どうやって対応すれば私があまり損をしないか考えましょうよ？」

彼女が契約したばかりのスポンサー、映画、CM関係者から、今も問い合わせの電話が殺到している。何か問題が起きれば、違約金だけで彼女は大変なことになるだろう。

マネージャーは恨めしそうに彼女を睨んだ。

「佐々木家は佐々木良則とあの女性を二人とも海外に逃がしたらしい。」

「いつの間に？」

華田濃子は驚いた。彼女が復讐する前に、彼らは送り出されたのか？佐々木家は何をしているんだ？

「冗談でしょ？」

「冗談なんかじゃないわ。あなたのお父さんが彼らの家で気絶したのよ。あなたのお父さんの顔を立てなければ、彼らはあなたに何の説明もしないわ。今、あなたのお父さんの生死が分からない状況で、彼らは早めに手を打つに決まってるわ。何せ、あの女は妊娠しているんだから。」

華田濃子：「……」

華田濃子は午後にSPAに行こうと思っていた。何しろ、昨夜は陸田敬人の手にかかり、骨の髄までしゃぶりつくされ、魂だけがかろうじて残っている状態だったからだ。

まだ行動に移す前に、山本様から電話がかかってきた。

「あなたのお父さんが死にそうよ、急いで帰ってきなさい。」

華田濃子はワゴン車に座りながら保温ボトルからクコの実のお茶をすすった。

「いつも死にそうって言うけど、結局死なないでしょ？」

「そんなこと言ってる場合？あなたの次兄と他の隠し子どもはもう道中よ。早く帰らないと、あなたは一銭も手に入らないわよ。」

華田家の老爺は一途な性分で、二十代の若い娘こそが生涯の最愛だった。死ぬまでその好みは変わらなかった。

年老いてなお、次々と隠し子が現れ続けた。彼女の実母である老爺の二番目の妻、山本悠乃（やまもと・ゆの）はとっくにそんなことには慣れっこだった。老爺の隠し子何人居ようとも一向に構わないが、絶対に自分の財産の取り分だけはしっかり確保したい。

華田濃子は華田家の屋敷に戻ると、山本悠乃はすぐに彼女を寝室に引っ張り込んだ。

「すぐにでも弁護士を呼んでどう財産が分けられるか聞いてきなさい。」

「もう聞いたじゃない？遺言書はないって。」

「あなたのお父さんは今回本当にもうダメみたい。万が一に備えて、良い弁護士を見つけておかないと。」

「誰にするの？」

「陸田敬人よ。」

「ゲホッ！？」

彼女は彼と寝たばかりなのに、今さら彼に頼みに行くの？

「別の弁護士にしましょう。」

「彼は京港の不敗の神話よ。」山本悠乃は彼女を見つめ、むっつりとした表情で言った。

「ママ、私は彼と寝たばかりなのよ。これはあまりにも……」

「それがちょうどいいじゃない？セックスの後こそ、頼み事は通りやすいのよ。それとも、あの隠し子どもにあなたの財産を争わせたいの？」

華田濃子：「……」

「濃子ちゃん、二千億と二百億、どっちを選ぶ？」

華田濃子は心の中で思った。そんな馬鹿げた選択、誰が間違えるものか？もちろん二千億だ。

「あなたは今問題を起こしたところで、佐々木家はあなたの父親がもうダメになりそうだってことを見越して、家族全員で国外にに避難して高みの見物を決め込もうとしてるのよ。そうなれば、あなたは何も得られないわ。お父さんの後ろ盾がなければ、あなたは何で生活するの？芸能界で必死に稼いだわずかなお金か？そのうち、あなたの高級車や豪邸、エルメスも全部売らなきゃいけなくなるわ。プライベートジェットで買い物に行くなんてもう夢のまた夢よ。あと一年か二年もすれば、佐々木良則が子供を抱いて妻の手を引いてあなたの前に現れたら、あなたはその屈辱を飲み込めるの？」

無理だ。彼女は貧乏になっても構わないが、佐々木良則というバカが妻と子供を連れて彼女の前で威張り散らすことだけは絶対に許せない。

これこそ屈辱だわ！！！

「すぐに行きます。」

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