「待て」鳳凌雲は、捨てられようとしている狐が一年前に突然彼女のそばに現れた小さな赤狐だと一目で見抜き、焦りの中、躍り上がった。決明子の手から小さな生き物を奪い取る。
その速さといったら、決明子には何が起きたのか見えないほどだった。
凌雲は狐狸を抱きしめ、ほっと息をついた。そして気がついた。彼女は——立っていたのだ。
まるで信じられないかのように、彼女は足を踏み出してみた。
異世界から来て以来、感覚のなかった膝がしびれるように震えた。
大きな喜びが彼女を飲み込みそうになる。「私の足が治った」
「ははは...私の足が治った」
彼女は大笑いしたかった。
そして、思い切り泣きたかった。
悲喜こもごもの中、彼女は決明子の肩をつかみ、抑えきれない笑みを浮かべた。「先輩、私立ち上がれました。私が立ち上がれたんです!」
七年間も足が不自由だった。
この身体の父親の甘やかしのせいで、鳳傲雪はこの両足を折ってから丸七年が経っていた。彼女が異世界からやってきてからというもの、彼女は七年間も足の不自由な体で生きることを強いられていた。
決明子は肩をぎゅっと掴まれて痛かったが、あきれ果てた様子で言った。「黒玉断続膏のような神薬があれば、お前の足どころか、全身の骨が一度生まれ変わるぐらいだ」
「黒玉断続膏?」
そのものについては聞いたことがあった。天級霊薬で、数が極めて少なく、とても貴重なものだ。
決明子は先ほど狐のそばにあった小さな陶器の瓶を拾い上げ、匂いを嗅いだ。思わず胸を打つような仕草で嘆いた。「一瓶まるごとだぞ、ちっ、惜しげもなく使いやがって。俺なら、全身の折れた骨を接合するのに三分の一で十分だったのに。なんて無駄だ。ほんとに無駄だ」
彼は足を踏み鳴らした。
凌雲は彼の心痛など気にも留めず、腕の中の赤狐はまだ眠っていた。普段は鮮やかな赤い毛並みが今は光沢を失い、白い毛が混じっているほどだった。見るからに汚れていて、決明子が先ほど「汚い狐」と言ったのも無理はなかった。
何か言いようのない感覚が心に湧き、彼女は眉をひそめながら慎重に狐を抱え、決明子の前に差し出した。真剣に尋ねた。「先輩、私の狐がどうなったのか見てもらえませんか?」
「見ないよ」
決明子は振り向きもしなかった。
乱れた髪が風にゆらめき、彼の言う「絶世の高手」というイメージを完全に壊していた。特に、まだ少し薬が残っている瓶をこっそりポケットにしまう姿は、冷たく傲慢な感じとは程遠かった。
凌雲は平然と彼を見つめ、静かに言った。「先輩、人の物を貰っておいて、お願いを断るのはどうでしょうか?」
「ここは俺の領地だ。俺がいいと思えばいいんだよ」乱れた髪が更に怪しげにゆれた。
凌雲は袖を振るい、冷たく皮肉った。痩せた体で決明子に迫り、決明子を崖のふちまで追い詰めた。今度は嘲笑うように言った。「なるほど、太行山脈の伝説の隠者もこの程度か。実に、がっかりだね!」
決明子は激怒した。この数百年、誰も彼の鼻先で罵ることなどなかったのだ。彼は激しく振り向き、凌雲を見た。竪瞳が揺れ動き、獣性を露わにした。
凌雲は一歩も引かなかった。二人の間には殺気が満ちていた。
しばらくして、決明子はようやく跳ね上がる殺気を抑え、赤狐を一瞥して言った。「霊力が枯渇して、内丹が損傷している。三ヶ月以内に死ぬだろう」
凌雲が尋ねる前に、彼は意味ありげに笑った。「これを救いたいなら、幽蘭の花を見つけて食べさせればいい。ただ、幽蘭の花は幽暗の森の奥深くに咲いていて、その近くには...」
「どうやって行くの?」
凌雲はためらいの色も見せなかった。
彼女は地獄から這い上がってきたのだ。不思議と彼女のそばにいるこの狐以外には、誰一人として身寄りがなかった!
——彼女は狐を救う。何を犠牲にしても!
決明子は一瞬驚いたが、冷たく鼻を鳴らした。「山を下りて左に曲がり、三本目の炎の木が見えたら、小道に入って真っすぐ行けばいい。小娘よ、忠告しておくぞ。入ったが最後、九死に一生だ」
彼への返事は。
高慢な少女の後ろ姿だった。
吹き荒れる雪の中、その後ろ姿は頼りなげで、強風が彼女の赤い衣を翻し、風に乗って去っていくかのようだった。あっという間に、決明子の視界から消えていった。
決明子は懐の中の陶器の瓶が急に熱くなったように感じた。彼の奇妙な顔が歪み、最後にはうんざりした様子で非難の言葉を吐きながら茅葺きの小屋に駆け込み、バタンと戸を閉めた。
俺の知ったことか。
あの小娘が霊狐一匹のために死にに行くというなら勝手にすればいい。
そう。
彼の知ったことではない!
だが、幽暗の森...