御し獣商會は臨淵城最大の商會であり、異空間資源の流通を管理している。
ここでは異空間から捕獲した様々な御し獣を販売するだけでなく、珍しい素材、進化薬剤、さらには珍奇な宝物までも取り扱っている。
輝は御し獣商會の壮麗な門前に立ち、頭を上げて見上げた。
建物全体がピラミッドで、五階に分かれており、それぞれの階が異なる級に対応している——
普通、エリート、優秀、史詩、伝説。
もちろん、最上階の「伝説級」エリアは年中空いたままで、異空間からの稀少な素材がたまに展示されるだけで、人々の目を楽しませている。
また、四階の「史詩級」エリアにも、わずかな史詩級素材があるだけで、その価格は目を見張るほど高かった。
輝は一階に立ち寄ることなく、すぐに三階へ上がった——
優秀級御し獣専門エリアだ。
広々とした大広間には、数十匹の様々な形態の御し獣が特製のエネルギーケージに閉じ込められ、それぞれの横には詳細情報と価格が表示されていた。
輝の視線が走ると、自動的に彼らのステータスパネルが目の前に浮かび上がった——
【玄蛇】
【資質:優秀3星】
【レベル:0階】
【スキル:毒牙咬み砕き】
【霊猫】
【資質:優秀1星】
【レベル:0階】
【スキル:機敏回避】
……
これらの御し獣の価格は通常1000万円から2000万円の間で、資質が高いほど価格も高かった。
輝は最終的に一匹の狼型の御し獣の前で立ち止まった。
これは三階全体で資質が最も高いものだった——
【蒼狼】
【資質:優秀3星】
【属性:風系】
【レベル:0階】
【スキル:疾風爪撃】
【育成提案:風霊草、暴風結晶……】
たった一つのスキルしか持たないこれらの御し獣を見て、輝は眉をしかめた。
優秀級の御し獣はすでにいい選択だが、史詩級のサキュバスと比べると、差はあまりにも大きい。
しかも、彼の手元には4億円の資金がある。完全にもっと高いレベルを求めることができるはずだ!
「すみません、御し獣商會にほかの御し獣はありませんか?」
彼はスタッフの一人を捕まえて、諦めきれずに尋ねた。
「いらっしゃいませ、お客様。展示してあるものが今年当商会の全御し獣です」
優秀資質……
彼はその蒼狼を見つめた。3星の資質は普通の御し獣師の目には珍しいものだった。
しかし史詩級サキュバスのパネルを見た後では、この資質の御し獣は彼の目に少しも魅力的に映らなかった。
そして、このような御し獣をサキュバスのレベルまで育てるとなると、4億円でも足りないだろう。
ところが、彼が失望して背を向けた瞬間……
スタッフが突然彼を呼び止めた。
「お待ちください!もう一ヶ所あります……」
輝は急に振り返り、その動作の速さにスタッフは思わず半歩後退した。
「どこですか?」
スタッフは輝に驚かされた。
「実は、毎年最新の御し獣だけを展示しているんです」
「そして前年に売れ残った御し獣は、後方部で一括管理されています」
「ただ……あまり期待しないでください。結局、人に選ばれなかった不良品ばかりですから」
この知らせを聞いて、輝の心に燃え上がった希望は再び消えかけた
他の人が選ばなかった不良品なら、どうして資質のいい御し獣がいるだろうか?
しかし、せっかく来たのだからという原則に従って、輝は少し迷った後、結局後方部を見てみることにした。
後方部で収穫がなくても、三階に戻ってあの蒼狼と契約すればいいだけだ。
「でも急いでください。これ以上遅れると、彼らは廃棄処理に送されてしまいます」
……
後方部。
灯りは薄暗くて重苦しい。
銀髪の少女が隅に丸くなっていた。彼女は膝を抱きしめ、顔を腕の中に深く埋めていた。
彼女の周りでは、様々な形態の御し獣たちも同様に静かに運命の審判を待っていた。
脚を一本失ったシャドウパンサー、生まれつき目が見えない霊狐……
彼らは丸一年の間、誰にも選ばれなかった欠陥品だった。
「時間だ」
金属のドアヒンジがきしむ音を立て、制服を着た若い男性が入ってきた。
今日は臨淵城の御し獣召喚の日であり、これらの御し獣たちの最期の日でもあった。
商会は慈善団体ではなく、彼らを一年養ったのは十分な恩情だった。
処分後、素材をいくらか回収できれば、無駄にならない。
足音を聞いて、御し獣たちは無表情で立ち上がった。
しかし最も目を引いたのは、銀髪の少女だった。
彼女が顔を上げると、銀色の長い髪が滝のように垂れ下がり、精致な顔には琥珀色の瞳が嵌め込まれていた。まるで天界から落ちてきた天使のようだった。
いや、正確には——
彼女はまさしく天使だった!
スタッフはため息をついた。
一年前、この史詩級資質の天使が臨淵城に現れた時には騒ぎになった。
しかし先天的な欠陥のため、彼女は普通の御し獣よりも劣り、契約によるレベルアップもできない。
こんな「廃品」は回収価値さえほとんどなかった。
「行くぞ!」
彼が案内しようとした瞬間、急いだ足音が遠くから近づいてきた。
「待って!」
輝は息を切らせて部屋に駆け込み、額の前髪は汗で濡れていた。
彼は迷宮のような御し獣商會の中を丸半時間探し回り、ようやくこの辺鄙な後方部にたどり着いたのだ。
彼の視線が部屋を走り、瞬時にその銀色の姿に惹きつけられた。
ステータス画面が即座に表示された:
【天使(瑠華)】
【状態:未契約(損傷した翼のため契約不可)】
【資質:史詩9星】
【レベル:0階】
【スキル:聖光裁決、天国の翼、神聖詠唱】
【特殊状態:先天的欠陥(損傷した翼)(負の状態:レベル上昇不可)】
【育成提案:天使の羽、輝光星塵、聖霊石(傷の修復)】
輝の瞳孔が急激に縮んだ。
史詩9星資質の御し獣?!
これは彼がこれまで見た中で最高資質御し獣のだった……
伝説級までたった一歩の距離!
しかも史詩級の御し獣は通常2つのスキルしかないが、瑠華は……
なんと3つものスキルを持っていた!
ただ……
彼の視線は自然と彼女の背中に向けられた。
そこには神聖な翼があるはずだったが、今は何もなかった。
これが誰も彼女に関心を示さなかった理由だ!
しかしシステムは修復方法を示していた:
天使の羽×1、輝光星塵×3、聖霊石×1。
そしてこれら三つの素材は、御し獣商會に全部あるはずだ!
輝の心臓が激しく鼓動し始めた。
この子だ!
これが彼が探していた御し獣だ!
彼女の怪我を治せば、彼女の天賦はあのサキュバスを完全に打ち砕くだろう!
輝は深く息を吸い込み、ゆっくりとスタッフの前に歩み寄った。
「すみません、あの天使を買いたいのですが、いくらでしょうか?」
この言葉を聞いて……
瑠華の瞳孔が急に縮んだ。
彼女はゆっくりと顔を上げ、琥珀色の瞳に光の中に立つ彼の姿が映った。
彼は……自分のことを言っているのだろうか?
三百日以上の間、彼女はこの暗い隅に身を丸めて、何度も期待を抱き、何度も失望した。
最後には、彼女は感覚が麻痺し、誰かが自分を一目でも見てくれることすら期待できなくなった。
しかし今——
あの見知らぬ人間が、まさに自分を指しているのだ。
彼女の心臓は見えない手でぎゅっと握りしめられたかのようで、息さえも苦しくなった。
彼は……本当に自分が何を選んでいるのか分かっているのか
飛ぶこともできない廃品を……
爪が彼女の手のひらに深く食い込んだが、彼女は痛みを感じなかった。
瑠華は頭を下げ、銀髪が垂れて少し赤くなった目頭を隠した。
本当なら……もう期待するべきではなかった。
なのにどうして……心がまだ痛むのだろう?
……
……