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15.78% 夫の「死ね」から始まる家の復讐 / Chapter 3: 第03話:遺影

장 3: 第03話:遺影

第03話:遺影

[氷月雫の視点]

刹那は、もう三日も家に帰ってこない。

ソファに横たわりながら、天井を見つめていた。体の痛みが、日に日に強くなっている。

「死んでくれるなら、やっと静かになる。だったらさっさと死ねばいい」

あの日の刹那の言葉が、頭の中で繰り返される。

玲奈を突き飛ばした私を見つめる刹那の目に、もう愛情のかけらもなかった。憎悪だけが、そこにあった。

机の上に置いた遺品整理のリストを見る。書き終えるのに、丸一日かかった。

アクセサリー、服、本、食器......私という人間の痕跡を、すべて消去するためのリスト。

最期に着る服も、昨日買ってきた。シンプルな白いワンピース。刹那が昔、「君に似合う」と言ってくれた色。

そして今日は、遺影を受け取りに行く日だった。

写真屋の前で、封筒を受け取る。

「ありがとうございました」

店員の女性が、丁寧にお辞儀をしてくれた。

封筒の中には、モノクロの写真が入っている。私の最後の顔。

角を曲がった時だった。

「雫?」

聞き慣れた声に振り返ると、刹那がいた。

そして、その隣には綾辻玲奈。

二人は手を繋いでいた。

「何してるんだ、こんなところで」

刹那の声に、警戒心が混じっていた。

「まさか......俺たちを尾行してたのか?」

「違う」

私は首を振った。

「偶然よ」

玲奈が、私の手にある封筒に視線を向けた。

「あら、写真屋さんからの帰り?何の写真かしら」

わざとらしい興味深そうな声。

「もしかして、何か隠してるんじゃ?」

玲奈の言葉に、刹那の目つきが鋭くなった。

「雫、それは何だ」

「関係ないでしょう」

私は立ち去ろうとした。

でも、刹那が私の手首を掴んだ。

「答えろ」

「離して」

「何を隠してる」

刹那の手が、封筒を掴む。

その拍子に、中からモノクロの写真が滑り落ちた。

地面に散らばる、私の遺影。

静寂が流れた。

刹那が写真を拾い上げる。玲奈も覗き込んだ。

「......今度は本気で死ぬつもりか?」

刹那の声に、動揺はなかった。冷たいままだった。

「少しくらい後悔するあなたの顔、見てみたかったの」

私は、かすかに笑った。

「でも、やっぱり何も感じないのね」

刹那の表情が歪んだ。

そして、私を突き飛ばした。

「じゃあ勝手に死ねよ」

吐き捨てるように言って、背を向けた。

私はその場に崩れ落ちた。

玲奈が駆け寄ってくる。心配そうな表情を作って。

でも、私の耳元で囁いた声は、氷のように冷たかった。

「見たでしょ?あの人はもう、あなたが死んでも微塵も動じない」

玲奈の唇が、薄く笑った。

「......あなた、もう愛されてないのよ」

刹那は振り返りもしなかった。

「どうせ、また芝居だ」

玲奈に向かって、そう言い放った。

「構うな」

二人は歩き去っていく。

通りすがりの人に助けられ、なんとか家まで戻った。

ソファに倒れ込み、痛み止めを飲む。

刹那の言葉が、胸に突き刺さったままだった。

『じゃあ勝手に死ねよ』

昔は、違った。

私が重い肺炎で倒れた時、十八歳の刹那は泣きながら私の手を握っていた。

「雫.....お願いだ、薬を飲んで」

震える声で、何度も何度も言ってくれた。

「....死なないでくれ」

あの時、あんなにも私を生かそうとしてくれた人が、今は誰よりも私の死を願っている。

壁のカレンダーを見上げる。

余命の「ひと月」は、もうすぐ終わる。

.....良かったね、刹那。あなたの望んだ通りになる日が、もうすぐ来るわ。


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