장 7: 最初の手術 1
この段階になって龍飛（ロンフェイ）が医者ではないと言っても、誰も信じるはずがなかった。どうせなら、一度くらい医者のふりをしても問題ないだろう。女の腹がこれほどまでに大きいのに妊娠ではないということは、腹の中に何かがあるに違いない。腫瘍か、あるいは腹水か——そういう類だろう。
ここまで腹が膨らんで、それでもまだ生きているのは奇跡だ。ならばもう一度、奇跡を起こすしかない。少しでも何かわかればいいのだが。
龍飛は足を引きずりながら榻（たく）のそばに近づき、華佗（かだ）の真似をして、手を女の膨らんだ下腹部に当て、そっと押してみた。すると意外にも柔らかく、水をいっぱいに詰めたボールのようだった。つまり腹水と見て間違いない。ただし、それがどこから来ているかは想像するしかない。
人の臓器は限られている。心臓、肝臓、脾臓、肺、腎臓、そして大小腸。その中でこれだけの腹水が溜まって三年も生きていられるのは、胃か腸くらいのものだ。他の部位であれば、とっくに命を落としているはずだ。
もう一つの要因として、胃と腸はつながっており、そこに水が溜まりやすい可能性が高い。龍飛はふと思いつき、店主に尋ねた。
「この三年間、奥さんの排泄はどうでした？」
店主は一瞬、戸惑った。そんなことを他人に言えるはずがない。妻は女性であり、排泄のようなプライベートな話を口にするのは憚られる。思わず華佗の方を見た。
華佗はにこやかに言った。
「小兄弟が聞いたのなら、どうかお話しください。医者の目には、男も女もなく、ただ患者であるのみです。」
店主は深く息を吸い込み、答えた。
「正直に申しますと、あの者がこの病気になってからというもの、排便も排尿もどんどん少なくなり、ここ半年は十日以上たってやっと少し、という具合です。」
この答えを聞いて、龍飛の中で確信が強まった。恐らく店主の妻の胃に腫瘍ができ、それが原因で重度の腹水を引き起こしているのだ。現代の医療なら、B超やCTで診断できるが、この時代にはそんなものはない。中医学ではとても治せる病気ではない。
だが龍飛はふと思い出した。華佗は手術を行った最古の医者として知られている人物。この人がいれば、もしかしたら助かるかもしれない。そう思って笑いながら店主に言った。
「運が良かったな。他の医者には絶対治せないが、この世で一人だけ治せる人がいる。それが——彼だよ。」
龍飛は華佗を指差した。
店主は歓喜して叫んだ。
「本当ですか！ それならどうか神医さま、妻を救ってください！ いくらでも払います！」
そう言って、またひざまずこうとした。
華佗は急いで彼を支え起こしながら言った。
「ご心配なく、私は命をかけて必ず奥方を助けましょう。ただ今はもう夜遅い。明日、手当ていたします。」
店主は何度も頷きながら、感謝の言葉を繰り返した。
その後、一行が屋敷を出ようとした時、華佗は店主には話しかけず、龍飛にこう言った。
「小兄弟、さきほど軽く触れただけで、あの女性の病状を言い当てたのはお見事。私など足元にも及びませんな。」
龍飛は笑いながら答えた。
「いやいや、たまたまですよ。本当に医者じゃないんです。ただの素人。ちょっとした怪我ならどうにかできますけど、今回は完全に勘で……」
華佗は龍飛の謙遜を真に受けず、笑いながら首を振った。
「小兄弟、遠慮は無用。私はもう名声などどうでもよいと思っております。今日のこの短い時間で、小兄弟から学んだことは、他の医者が一生かけても得られないもの。今後、“神医”の称号は、あなたにこそふさわしい。」
二人がそんなやり取りをしていると、突然、先に戻っていた店主が慌てて走ってきて、声を張り上げた。
「お二人の神医様、お待ちください！ 妻が、妻が……！」
最後まで言い切る前に、華佗は振り返るとすぐに三進の奥の部屋へと駆け出した。
「鹿丸」は一瞬、龍飛を見た。龍飛は叫んだ。
「何を見てる！ 行くぞ！ 急げ！」
さっきまでいた部屋に戻ると、寝台から悪臭が鼻をついた。女はか細い声であえぎ、呼吸もどんどん弱まっている。まるで今にも死にそうな様子だった。
腹の上の布団はすでに剥がされ、上着も脱がされていて、ボールのように膨れ上がった腹が露わになっていた。その皮膚はほとんど透き通っており、青紫の血管が無秩序に走っている。
店主はそばで右往左往し、華佗は脈を診ていた。
龍飛はすぐに状況を把握した。このままでは、女は今夜を乗り切れない。救うには今すぐ手術が必要だ。最低でも腹に小さな切り口を入れて、腹水を抜かねばならない。そうしないと、まるで風船のように破裂してしまう。
「刀を持ってこい！ 水を何盆か汲んできて、綿も用意しろ！」
龍飛が店主に怒鳴る。しかし店主は何をしていいかわからず、部屋の中をぐるぐると回っているばかり。龍飛は声を荒げて怒鳴った。
「急げって言ってるんだ！ 奥さんを救いたいなら、俺の言うことを聞け！」
華佗も脈診を終え、顔を曇らせて言った。
「このままでは、今夜が峠ですな……」
「うああ……！」ちょうど戸口にいた店主は、それを聞いてその場に崩れ落ち、ひざまずいて泣き叫んだ。
「神医さま、どうか、どうか妻を救ってください！ 妻が助かるなら、家財一切、すべて差し上げます！」
龍飛は怒声を上げた。
「さっきの話を聞かなかったのか！ 助けたいなら、言った通りに準備しろ！」
寝台の上の女の呼吸は、もう蚊の鳴くようにかすかで、今にも消えそうだった。
龍飛は「鹿丸」に部屋の戸を閉めさせ、華佗に視線を向けて言った。
「おじいさん、あなたが手術をできることは知っています。今日はあなたに頼るしかありません。俺の判断では、原因は胃にあると思います。胃に腫瘍ができて、それが腹腔に水を溜めている。まずは切開して水を抜き、腫瘍が見つかれば、それを切除すれば、助かるはずです！」
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