장 5: ある関係は、近づけない
에디터: Pactera-novel
酒井美月はすぐ注意させようとしたが、遠藤智也は平気で、嫌がる様子も見せなかったので、何も言わず言葉を吞み込んだ。
彼女も他人の前で娘をしつけるつもりはなかった。
「今開けてもいい？」宮沢詩織が顔を上げて尋ねた。
「もちろん」
詩織は箱をテーブル上に置き、丁寧に箱に飾り付けたリボンを解いた。
箱を開けてみると、中には抱きしめられるほど大きいQバージョンの眠れる森の美女という人形が入っていた。
お姫様の顔は丸くて、とても可愛らしい。
長い髪は暇なとき、梳かしたり、三つ編みにしたりなど様々なスタイルで楽しめる。
「おじさま、ありがとうね！」詩織はすごく嬉かった：「大好きだよ！」
智也は微笑んで、さらに二枚の招待状を取り出した。
一枚は木村奈緒に、もう一枚は酒井美月に渡した。
「今日来たのは、お婆様の誕生日パーティーに兄さんと兄嫁さんを招待するためです」。また、智也は美月に向かって言った。「宮沢奥様、ぜひご主人様と一緒に弟たちと詩織を連れて参加して欲しいです」。
本日、彼は単なる招待状を届けに来ただけだ。美月と詩織がここにいるとは思わなかった。
もともと、宮沢一家を招待するつもりはなかった。
しかし遠藤秀章が愚かなことをやってしまったので、叔父として少しでも取り返したかった。
原田佳穂に関しては、まあいいだろう。
先ほど、智也は宮沢家の人だけを指定し、わざと佳穂をスルーした。
美月は身に余る光栄だと実感しながら、智也から招待状を受け取り、急いで言った：「必ず伺います」
まさか自分だちが招待されるとは思ってない。
何と言っても遠藤大奥様の誕生日パーティーだ！
招待される相手は、遠藤一族外には、八大家族クラスの家柄だけだ。
もしかすると、他に遠藤一家と深い関係を持つ人々が招かれるかもしれないが、宮沢家はそのレベルでもない。
智也は役目を果たしたので帰った。
彼は詩織という少女がかなり気に入って、彼女の頬をつまみながら言った：「また今度ね」。
智也が帰った後、美月は胸をなでながら、小声で奈緒に言った。「まさか自分が若手を前にして緊張するなんて思ったこともないね」
「あなただけじゃないわよ、私もよ」奈緒は小声で言った。
彼女の夫は智也の従兄で、しかも隙間のある関係だ。
佳穂のことがあってから、詩織は秀章と遊ぶ気はなくなった。
小さい頃から、秀章は佳穂の手口に耐えられないなんて想像もできない。
今後どうなるかしら？
どうやら前世であろうと今世であろうと、秀章は変わるらしい。
ただ今世では、二人は早めに出会ったので、詩織は秀章の愚かさを前もって知り、もう手遅れだと悟る。
美月は詩織と佳穂を連れて帰ることにした。
奈緒はようやく秀章に言った。「君は詩織を幼い頃から見て育ってきたのに、彼女がどんな性格かわからないの？なのに彼女を疑うなんて。本当に失望したわ」
「謝るよ」秀章はようやく気づいた、未だに詩織に謝っていなかったことに。
「もう帰ったよ、謝るなんてなに？早くしないと？」「謝るべきことはきちんとやるよ、ちょうど大奥様の誕生日パーティーで、詩織に直接謝りなさい。でも、それより、これから同じ過ちを繰り返さないほうが大事だよ」
*
酒井美月は詩織と佳穂を連れて家に帰った。
詩織と佳穂は後部座席に座っていて、佳穂はまだ黙って涙を流していた。
美月は珍しく彼女を慰めなかった。
佳穂は自分が美月を怒らせたことを悟った。
日々、美月がどれだけ姪の自分を可愛がってくれても、詩織のことになると、美月は常に詩織の味方になり、躊躇なく自分は見捨てられるだろう。
佳穂は頭を下げ、目には嫉妬と憎しみが満ちていた。
「妹、もう泣かないで」耳元で詩織の柔らかい声がした。
美月は意外で、バックミラーから詩織を見た。
今日は詩織が不当扱いされたと聞いたが、逆に彼女が佳穂を慰めているなんて。
三人の息子が娘を心配するのも無理はない、うちの詩織はあまりにも優しく純粋で、本当に損をしやすい子だ。
佳穂が振り向いて詩織を見て、すすり泣きながら尋ねた：「従姉さん、私のこと怒ってないの？」
「あなたがわざとやってることじゃないし、私たちは家族だから、怒る理由なんてないよ」詩織はにこにこ笑いながら言った。
佳穂は驚いて聞いた：「また、私と遊んでくれる？」
「もちろん」遊ばせてやる！
詩織は笑いながら心の中で思った。
「ハンカチを持ってないの。妹、持ってる？早く涙を拭いて、泣かないで」詩織は自分の小さいバッグを触って見た。その中には大好きなハンカチがあった。ただ彼女は佳穂の涙を拭くためにそれを使いたくない。
佳穂は持っていなかったので、手で涙を拭いた。
詩織が智也からもらった人形を抱いているのを見て、佳穂は聞いた：「従姉さん、その人形そんなに好きなの？」
「もちろん」詩織は人形を見て、目を細めて微笑んだ。
詩織は今世では宮沢家のお姫様だが、前世では地に根付けた小さな雪蓮の精だった。一生を自然のまま過ごし、外の華やかな世界を見ることがない。
彼女はただの世間知らずの小さな雪蓮の精だった。
智也が贈った人形が、本当に好きでしょうがない。
佳穂は頭を下げて口を歪み、心の中で思った：詩織は幼い頃から甘やかされてきたにも関わらず、まだ世間知らずの貧乏な様子を見せるなんて、本当に恥ずかしい。
「従姉さん、遠藤大奥様の誕生日パーティーに何を着ていくの？」佳穂は頭を傾げ、無邪気な顔で聞いた。
美月は佳穂が言いたい事が別にあると感じて、振り返って言った：「佳穂、あなたはその日行けないわ」
佳穂は驚きと傷ついた表情で美月を見つめ、徐々に目に涙を溜まって聞いた。「どうして？さっき叔父様が私たちを招待したじゃない？叔母さん、私が気に障ることをしたから、連れていきたくないの？」
美月は眉をひそめた。この姪はいつからこんな性格になったのだろう？
すぐに泣き出し、ぐずぐず言う。
美月には佳穂の言い方には問題がないと思うが、聞いていると何なく不快な感じがした。
「遠藤大奥様の誕生パーティーは、本来なら私たち家族が参加できる場合ではないのよ。遠藤若様が私たちを招待し、特に誰が来るべきか指定してくれたんだ。あなたは含まれていないのに、勝手に連れて行くのは失礼なんだ、主催側も不快に思うでしょう」と美月は説明した。「できればあなたも連れて行くけど、今回は無理だね」。
佳穂は悔し気な表情で頭を下げた。心の中では、叔母さんはやはり詩織が傷ついたと思っているから、自分を連れて行かないと決めている、罰されたと思っていた。
そうじゃなければ、ただの誕生日パーティーに自分一人を加えて参加するには別に問題ないじゃん。
「それと」美月は再度言った。「先、佳穂は遠藤若様をおじさまと呼んだでしょう？今後、そのような呼び方はしないで。人に聞かれたらよくないね。厚かましい人に思わせられるんだ。あの『おじさま』は、誰でも気軽に使える呼び方ではないのよ。私も彼より年上だけど、それでも遠藤若様と呼んでるんだ。ある関係は、勝手に近づくんじゃない」
佳穂は非常に不満を感じながら、悔しそうに言った。「でも従姉さんもそう呼んでたよ」
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