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장 3: 第3話 どうしてこうなった

「どうしてこうなった……」

 

 河原岸で蹲った俺は、手元にあった小石を川に放り投げる。

 それは一度だけ水面で跳ねて、ポチャンと水の中へと消えていった。

 

 あれから、俺は無我夢中で走った。

 

 頭の中を巡るどす黒い感情を打ち消すために、木を殴り倒し、草を蹴り倒し、岩に頭を何度もぶつけて砕いた。

 そうやって一日中走り回って、もがき苦しんだ末に、気がつけば俺の体は元に戻っていた。

 

 けれど完全に元に戻ったわけじゃない。

 

 俺の胸にはエカチェリーナの胸にあった宝玉と同じ色の結晶が埋まっている。

 それもエカチェリーナのように丸いものではなく、八方に切っ先を向けた刺々しいものだ。

 

 結晶にそっと触れるだけでも、昨日の禍々しい憎悪が込み上がってくる。

 俺は今日何度目かの嘔吐感にえずいてみせるが、もう腹の中には何も残っていない。

 

 だからだろうか。腹が減った。

 

 こんなときでも腹は減るんだな、と思いつつ、ポケットをまさぐっても何も出てきやしない。

 だがそのとき、ふと手元の小石に目がいった。

 

 その中でも少し色のついた石を拾い上げると、おかしな感情を抱く。

 

 美味しそうだ、と。

 

「……いやいや、石だぜ?」

 

 馬鹿な話だ。仮に俺が作った設定である【ストーンイーター】を授かっていたとしても、食料として石を食べられるわけじゃない。

 

 そんなわけない。

 

 俺はその石を放り投げようとして、沸き上がる欲望がそれを止める。

  

 そんなわけ、ないよな……?

 

「……ええい、ままよ!」

 

 俺は自分でも馬鹿なことをしているなと思いつつも、その石を齧ってみた。

 どうせ文字通り歯が立たなくて痛い目を見るだろう。

 

 そう思っていたのに――。

 

「あれ……?」

 

 ――俺は石をパキっと噛み砕いていた。

 

 そのまま奥歯ですりつぶしてみると、味がする。

 

「う、美味い……」

  

 なんというか、穀物のような味だ。全粒粉のクッキーを食べているようにも感じる。

 

 それが空腹という調味料を得て、どうにも手が止まらない。

 気がつけば、俺は他にも美味しそうな石を探し出していた。

 

 言っておくが、決して俺は石を主食にするような化け物を主人公に据えた覚えはない。

 普通は石なんて食べたら歯が欠けるか喉に詰まらせるだろう。

  

 けれど、食欲を誘う石の輝きが俺の空腹を刺激してくる。

 どの石も簡単に噛み砕けて、それぞれに風味や味があって、俺はまるでナッツを探しているような気持ちでどんどん口に運んでいった。

 

 河原の石をホイホイと口に放り込む勇者というのは中々に滑稽――を通り越して醜悪な光景だ。

 これでは勇者じゃなくて妖怪【石喰らい】である。もう立派に人間じゃない。

 

 そんなこんなで、俺は河原沿いにある美味しそうな石を食欲のままに食べていくのであった。

 

 

 ◇   ◇   ◇

 

 

「ふぅ……満腹」

  

 それから俺はあらかたその辺の食欲をそそる石を食べて、川の水を飲んで一息ついた。

 ここまで来たら生水が危険とかは考えないことにしたのである。

 

 幸いなことに今のところ腹の調子を崩している様子はない。むしろ腹が膨れてやっと動く気力が湧いてきたほどだ。

  

 そんな余裕が出てきたところで、俺は少し考えてみる。

 

 俺の書いた小説ならば、エカチェリーナの【輝祷】を受けて俺は勇者になるはずだった。

 けれど、それは祝福どころかもはや呪いのようなもので、俺はいくつも人の命を奪って、ここまで逃げた。そして今は河原の石を食ってる。

 

「俺の描いたサクセスストーリーとは真逆の没落っぷりだよな……」

  

 異世界転生には神様の存在がつきものだが、相当性格の悪い神様に違いない。

  

 性格が悪いといえば、エカチェリーナの内面の醜悪さにも反吐が出る。

 あのとき、俺の中に流れ込んできたのは確実に彼女の心だ。実感した今ならば断言できる。

 あんなに優しそうな顔をして、考えていたことは俺を利用して力を手に入れたいという欲望の塊だった。

 

「俺の考えた最高のヒロインなのに……」

 

 はぁ、と俺は落胆せざるをえない。

 あの感覚を味わったからには二度とお近づきになりたくない。

 

 そうやって項垂れていると、鳥が騒がしく飛び立つ音が耳に入った。

 続いて、ドンという体が浮きそうな衝撃を身に感じて、俺は慌てて立ち上がる。

 

「な、なんだ?」

 

 どこかで悲鳴と怒号が上がり、獣の雄叫びが空に響いた。

 誰かが戦っている。いや、襲われているのかもしれない。それも巨大な何かにだ。

 

 俺の中で好奇心と少しの勇気が沸き上がり、その方向に無意識に歩き出していた。

 しかし、危険な場所にわざわざ行って何になる、という思考がそれを止める。

 

 だが、俺はまだ勇者という存在に憧れを捨てきれないでいた。

 

 昨日殺した兵士にも家族はいただろう。エカチェリーナも無事ではないかもしれない。

 それでも、いや、だからこそ、俺は人を救いたい。

 

 俺に何かできることがあるなら――。

 

「くそッ!」

 

 ――俺は自分を奮い立たせて、地面を蹴るのだった。


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阿澄飛鳥 阿澄飛鳥

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