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墨のように深い闇が辺りを覆う。
ウェスティンホテルは、煌々と輝く灯りに包まれていた。。
静寂の続く長い廊下は、その先が見えないほどに続いており、仄暗い黄色い光が降り注ぎ、廊下を一層神秘的で豪華な雰囲気に見せている。
小柄な影が、足音を殺してプレジデントルームの前までやって来た。
部屋のドアが少し開いており、庄司奈々(しょうじ なな)は隙間からそっと中を覗いた。部屋はとても静かで、浴室からだけ激しい水音が響いていた。そこで彼女はそっとドアを押し開け、部屋の中へ入った。
振り返り、ドアを閉めようとした瞬間。
「書類は机の上に置いておいてくれればいい」突然、冷たくも魅惑的な声音が浴室から響いてきた。
奈々の心臓は「ハッ」と跳ね上がり、口から飛び出しそうだった。
背筋に冷や汗が走った。
振り返るとバスルームの人はまだ出ておらず、奈々はホッと大きく息をつき、ドアを閉めた。
部屋には天井の明かりはついておらず、ほの暗いベッドサイドランプの灯りだけが点っている。広大なフロアから窓の外に広がる東京都のきらめく夜景との対比が鮮やかだった。
だが、奈々には景色を眺めているような余裕はなかった。
彼女は宮廷風の大きなベッドの前に立ち、持ってきたあのセクシーな寝間着に素早く着替えると、深呼吸して布団の中に潜り込み、誘惑的な姿勢をとった。
その時、浴室の水音が止み、続いてドアが開いて、颯爽とした高大的な人影が中から出てきた。
さわやかな湯気と共に漂ってきたのは、彼の生来持つ気高さであり、奈々の息を止ませた。
彼はバスローブをまとい、タオルで髪を拭いていた。恐らく部屋に人がいることに気づいたのだろう、動作を止め、鋭く顔を上げた。
細く切れ長の彼の目は細められ、霜や雪のような人を震え上がらせる冷たい光を宿し、鋭い視線はまっすぐに奈々を捉えた。
奈々は今日、薄化粧をしていた。微かな光が陶器のように白い小さな顔を照らし、瞳は墨を散らしたようで、唇はさくらんぼのよう。整った顔立ちは小さいが精巧で、実に見事な美しさだった。
彼女はピンクの寝間着をまとい、それが全体を花咲かんとする蕾のように映え、摘み取られるのを待っているようだった。
しかし、彼はこの絵のように美しい景色に魅了されるどころか、むしろ眼光を鋭くし、目の中に危険な気配を漲らせ、まっすぐにベッドの上の人物を睨みつけた。
「どうしてここに?」彼は薄い唇をほんのり開かれた。声音は華麗な質感を持ち、人心を惑わすものの、冷たい深淵のようでもあった。
奈々は緊張で唾を飲み込み、何とか平静を装おうと、愛らしい顔に明るい笑顔を無理に浮かべ、目をきょろきょろと動かしながら言った。「ね、ねえ、夜は長いし、私、布団を温めに来たの……」
「布団を温める?」彼は眉をひそめ、声音は冷たく、たった一言の問いかけが、すでに殺伐とした空気を放っていた。
奈々は強い压迫感を感じ、息遣いさえも苦しくなった。 思い切って口を開いた。「そ、そうよ!私はあなたの婚約者なんだから、一緒に寝るのは当たり前でしょ……」
奈々が話すその瞬間、侵略的な男の気配が急に接近し、男の大きくて挺拔とした体躯が威圧的に迫り、精巧でさながら天が刻んだような顔立ちが目前に迫った。
奈々は身じろぎもできず、潤んだ大きな瞳で大塚正臣(おおつか まさおみ)を見つめ、心臓が激しく鼓動を打っていた。
体にかけていた布団がはぎ取られ、空気中の冷気が体を貫いた。
彼女は、こうして自分を差し出すことになるの?
しかし、今夜が終われば、彼は婚約を履行し、自分と結婚してくれる……よね?
そう思うと、奈々はサッと目を閉じ、死を覚悟したような顔をした。
もう、いっそ思い切ってやる!
PS:新作がついに皆さんにご挨拶~今回は一味違う作品をお届けします。もちろん、メインは相変わらずほのぼのと楽しいラブコメです~チュッ!
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