「カチャリ!」
林田徹がグラスをテーブルに置き、澄んだ音を立てた瞬間、秦野小雨は慌てて視線を逸らした。
小雨はまだ酒を飲んでいなかったにもかかわらず、その可愛らしい顔はすでに完全に紅潮していた。
それを隠すかのように、小雨は慌てて大きく一口酒を飲んだ。
「濃厚さの中に爽やかさがあり、同時に特別なフルーツの香りも感じる……悪くない、本物のスペードAだな」と徹は評した。
彼は聞いていたのだ。利益のために偽物の酒で誤魔化す店が多いという話を。
そして徹はもう一杯酒を注ぎ、一気に飲み干した。
「惜しいのは果実の香りが少し強すぎて、酒の味が薄いことだな。比較すると、ルイ・トレーズの方が口当たりが良い……ルイ・トレーズをもう一本持ってきてくれ」
明らかに、スペードAを味わったことで徹の酒への欲求が高まっていた。
「申し訳ありません、当店にはルイ・トレーズのご用意がございません。ご希望でしたら、他の店から買ってくることも可能です」とウェイターは謝りながら言った。
「そうか、じゃあ5万円渡すから、余ったのはチップとして取っておけ。ただし、一つだけ条件がある。必ず本物を持ってくること」と徹は言った。
この言葉を聞いたウェイターは、興奮のあまり飛び上がりそうになった。
ルイ・トレーズは一本3万円ちょっとである。
5万円!
彼は1万円以上のチップを手にすることができる!
それは彼の数ヶ月分の給料に匹敵した!
「お客様、ご安心ください。私はそのお店のオーナーと知り合いで、絶対に本物をお持ちします!」とウェイターは胸を叩いて約束した。
徹はうなずき、すぐにウェイターに5万円を送金した。
もし別の人が数万円のボトルを注文したら、小雨はきっとその人が富を誇示していると感じただろう。
そして反感を持っただろう。
しかし、徹が酒を飲む時の紳士的な所作と、今酒を買う時の澄んだ瞳を見て、小雨は少しも見栄を張っているとは感じなかった。
それは純粋な、酒への愛情と鑑賞だった。
スキル:飲酒紳士、魅力無限!
間もなく、ウェイターは息を切らしながら、美しく包装されたルイ・トレーズを抱えてテーブルに置いた。
「お客様、お酒が参りました!」とウェイターは興奮気味に言った。
「パン」という小さな音と共に、瓶の蓋が開けられた。
淡い赤色の液体がゆっくりとグラスに注がれた。
徹はまず鼻に近づけて香りを嗅ぎ、それから一気に口に流し込んだ。
「よくやった、本物だ!」と徹は言った。
「お褒めいただき光栄です」とウェイターは喜んで言った。このような太客に対しては、彼の考えでは、側にずっと控えているべきだった。
ひょっとしたら、また何かチップがもらえるかもしれない。
しかし、ウェイターは向かいに座る小雨を見て、気を利かせて言った。「何かございましたら、お声がけください」
小雨は徹が満足そうな様子を見て、自分もルイ・トレーズを一口試してみた。
しかし、むせて咳き込んでしまった。
「大丈夫か?ルイ・トレーズは味わい深いけど、強烈すぎる。女性にはスペードAの方が合っているよ」と徹は言った。
「大丈夫、大丈夫……」と小雨は串焼きを一口食べて、ようやく落ち着いた。
最初の頃、徹はあまり食べ物に手をつけず、ただ数杯の酒を飲むだけだった。
しかし、時間が経つにつれ、お腹の中の食べ物が次第に消化されていき、彼も串焼きを食べ始めた。
二人は向かい合って座り、高校時代を振り返りながら、笑いあい、とても楽しい時間を過ごした。
小雨はわずか3杯の小さなグラスを飲んだだけだったが、ミスレストランを出る頃には、その可愛らしい顔は熟したリンゴのように真っ赤に染まっていた。
対照的に徹は、まるでただの水を二本飲んだかのように、全く影響を受けていなかった。
小雨はミスレストランの入り口に立ち、遠くの川の景色を眺めて感嘆した。「きれい!」
「ここからは川の景色の一部しか見えないけど、あの丘に行けば、川全体だけでなく、北江城全体を見渡せるよ」と徹は近くを指差した。
「じゃあ、早く行きましょう!」と小雨は待ちきれない様子で言った。
徹はうなずき、前方へ歩き出した。
丘の上に立ち、両岸が銀河のように流れ、北江の無数の灯りが天の星屑のように輝く様子を見下ろした。
小雨の黒く輝く美しい瞳が煌めき、「きれい!」と称えた。
「ザーッ」
その時、背後から水の流れる音が聞こえてきた。
続いて、色とりどりの髪を染め、酒の匂いをプンプンさせた四人の男が、ズボンを引き上げながら、影から歩み出てきた。
「おや、ここにいい女がいるじゃないか」
「お嬢さん、俺たちと遊ばないか?」
「楽しませてやるぜ」
「そうだぜ!」
四人は小雨の愛らしい顔と完璧なスタイルを見ながら……アルコールの影響で、まるで飢えた狼のようになり、目には欲望が満ちていた。
小雨は近づいてくる四人を見て、顔色が悪くなった。
確かにこの場所は景色が素晴らしかったが、周囲は荒涼としており、監視カメラもなかった。
そして、この四人は一筋縄ではいかなさそうで、しかも酒を飲んでいた。もし……
そう考えると、小雨の顔に冷や汗が浮かび始めた。
「俺が怒る前に、消えろ」と徹は冷たい声で言った。
この言葉も四人を怯ませることはなかった。
「お嬢ちゃん、こいつがお前の彼氏か?見たところヤワそうだな、お前を満足させたことなさそうだ。今日は俺たちが、お前を気持ちよくしてやるぜ!」と赤髪の男はニヤリと笑い、黄ばんだ歯を見せた。
「そうだ!気持ちよくしてやる!」と他の三人も笑いながら言った。
四人は話しながらも、前に進み続けていた。
「小雨、少し後ろに下がって」と徹は言った。
そう言うと、徹はゆっくりと袖をまくり上げた。
次の瞬間、彼は前に踏み込んだ。
鋭く、猛烈な拳が、赤髪の顔面に強烈に叩き込まれた。
「ドン!」
恐ろしい力で、赤髪の男は地面に叩きつけられた。
しかし、徹はそれで満足しなかった。
「ドン!」
「ドン!」
彼は次々と、疾風のように拳を赤髪の顔に打ち込み続けた。
赤髪の鼻骨が折れ、歯が抜け、顔全体が血まみれになり、完全に気を失うまで続けた。
徹はようやく立ち上がると、隣の緑髪の胸に拳を打ち込んだ。
「バキッ!」
緑髪の胸の肋骨が音を立てて折れた。
「バキッ!」
「バキッ!」
徹は拳を振り続け、十数本の肋骨を折り、緑髪を泥のように地面に倒した。
残りの二人は恐怖で魂が抜けたように、逃げ出そうとした。
しかし……
徹はチーターのように飛びかかり、一人の両腕をねじ切り、最後の一人の両足を折った。
その全てが残酷で、極めて血なまぐさかった!
小雨は暴力が嫌いだったが、彼女は目を離さず、徹の一つ一つの動きを見つめていた。
その様子はまるで、徹が暴力を振るっているのではなく、魅惑的な美しいダンスを踊っているかのようだった。
スキル:暴力の美学、男の本質!
普段は控えめで内向的、会話は面白く、服装はおしゃれ、飲酒は紳士的、そして喧嘩さえも美しさに満ちていた!
ついに、小雨は完全に陥落した。
【ピンポーン!魅力のオーラが、刻骨銘心を発動!】
次の瞬間、小雨は抑えきれない気持ちで、徹の胸に飛び込んだ。
o( ̄ε ̄*)
(* ̄3)(ε ̄*)
?(ˉ﹃ˉ?)
……