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Capítulo 6: 不協力_3

Editor: Pactera-novel

詩織は顔を横に向け、車窓の外に流れる夜景を見つめながらつぶやいた。

「私と彼?何があるっていうのよ」

その声が消えるころ、車はすでに会場を離れていた。

運転席の唐沢がバックミラーを覗き込み、ぼそっと言う。

「後ろ、なんか一台ついてきてますね」

詩織は眉ひとつ動かさず即答した。

「どうせパパラッチか、ファン崩れのストーカーよ。振り切って」

唐沢は首をかしげる。

最近、ストーカーでもパパラッチでも、マイバッハに乗って追跡するものなのか?

**

車は詩織の住むマンションへと向かっていたが、通りに差しかかった時点で異変が見えた。

遠くからでも、エントランス前に複数の車が止まっているのがわかる。

「……あー、まただ。」

言わずとも察した。

どうせまたパパラッチたちが押しかけてきたのだ。

静香が即座に判断する。

「唐沢くん、Uターンして!」

夏目詩織はここ数年、常に世間の渦の中心にいた。

「炎上してでも話題になる」タイプで、黒か白かではなく、ただ“目立つ”という一点でトップに立っている。

ひとたび何か起これば、パパラッチもストーカーもアンチも、蚊の群れのように四方八方から群がってくる。

詩織はそんな連中にうんざりしており、この数年だけで引っ越しを七、八回は繰り返している。

今のマンションも、数か月前にようやく落ち着いたばかり。

まだ半年も経っていないのに、また居場所を嗅ぎつけられたようだ。

車は行き先を変更し、所属事務所・輝星エンターテインメントの社員寮へ向かう。

その途中、静香がスマホを開き、何気なくSNSをチェックした。

……一瞬で顔色が変わった。

トレンド上位十件のうち、四つに「夏目詩織」の名前が並んでいる。

しかも朝からランクインしていた二つのタグに加えて、

「#薄井弦夏目詩織#」「#夏目詩織不合作#」の二つが一気に一位と二位を独占していた。

さらに「#弦は望まない#」「#弦 カップルを拒否#」というタグも急上昇中。そこには名前こそ出ていないが、内容はすべて――

詩織と薄井弦の「共演拒否事件」。

ランキングの上位十個のうち、六つが夏目詩織関連、七つが薄井弦関連。

もはや完全に二人の独壇場だった。

そして本来の主役――主演女優賞を取った森山彩――は、

わずかに第八位に沈んでいる。

薄井弦は惜しくも最優秀男優賞を逃した。

たった一票差。

前年度に同賞を取っていたため、審査基準が厳しく、

今回は別のベテラン俳優に譲る形になっただけだ。

実力的には誰も文句を言えないほどの完璧さ。

本来なら、今夜は森山彩と薄井弦がスポットライトを浴びるはずだった。

だが、またしても「話題体質」の夏目詩織が全てをかっさらってしまったのだ。

静香はため息をつきつつコメント欄を開く。

リプライ三万、リポスト十万超え。

地獄のような罵詈雑言が画面を埋め尽くしていた。

彼女を恥知らずだと罵るもの:

──「夏目詩織、ほんっとに恥知らず!自分が誰だと思ってんの!?うちの弦さまに何様のつもり!?」

話題にしがみついていると非難するもの:

──「トレンド買い占めて楽しい?その金で実家帰れ!寄付でもしろ!」

さらに単純で乱暴なものも:

「くそ、ある物」

「しね、ある動作」

「消えろ、ある姿勢」

……

静香は読めば読むほど心臓に悪くなり、隣の詩織がのぞき込んでくる。

ちらっと見ただけで、彼女は鼻で笑った。

「他人の人生に首突っ込む暇があるなんて、ヒマ人ばっかね」

その瞬間、詩織はすっと静香のスマホを奪い取り、

視線を一点にとめた。トレンド第十位――

「#薄井弦、フラれる#」

タップして開くと、そこにはレッドカーペットでの薄井弦のインタビュー映像。真剣な表情で語る彼の言葉が再生された。

「これは僕自身の体験です。

好きだった人に、フラれたんです」


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