江崎徹の剣気攻撃は僅か二メートルの距離でしか効かず、このBOSSを倒すには近接での剣気攻撃しかない。だが一度近接戦となれば、四メートルの巨剣と対峙することになる。
しかも江崎徹から見て、自分の魔法シールドが幽冥の王のフルパワーの一撃に耐えられるとは思えなかった。
百倍の増幅があってもかなり強そうに見えるが、悪夢級の幽冥の王を前にして、徹には全く自信がなかった。
こいつはちょっとおかしい。
幽冥の王が一歩踏み出すと、洞窟全体が揺れ動き、地震のような感覚に襲われた。
徹は唖然とした……
クソッたれ。
これじゃどうしようもない。
徹は幽冥の王から三十メートルの距離をとり、まずはこいつの防御力を試してみることにした。
徹は剣を抜いた。
一筋の剣の光が幽冥の王に向かって放たれた。
-1……
徹は完全に呆気にとられた。
何だこれは?
たった1ポイントのHPしか減らせないのか?
これじゃいつまで経っても倒せないじゃないか!
剣気・縱橫を使っても足りない。0.1秒で100ポイント減らせるとして、1秒で1000ポイント、10秒で1万ポイントか。
あれ……?
行けるかもしれない!
24秒あればこいつを倒せる計算になる。
徹は唇をなめた。
24秒なら十分だ。唯一注意すべきはこいつの攻撃で、おそらく何気ない一撃でも魔法シールドを破られる可能性がある。
徹は計画を思いつくと、再び縦横剣気を発動し、魔法シールドを最大まで張った。
全身の状態を引き上げる。
全ての状態が最高になったところで、ようやく幽冥の王へ突撃した。
幽冥の王は徹が突進してくるのを見て、何気なく大剣を持ち上げ、千軍一掃の一撃を繰り出した。
徹は素早く足を止め、急いで後退した。
ガンガンガン……
巨大な剣気が徹の魔法シールドに当たり、波紋が飛び散った。
徹は再び後退し、距離を取った。
魔法シールドを確認する。
ぞっとした。魔法シールドは8層しか残っていなかった。
この一撃で92層のシールドが削られたのか?
徹は思わず罵声を上げた。「これが悪夢級のBOSSだと?このクソったれは地獄級の難易度だろ!」
マジで異常だ。
魔法シールドを重ね直さなかったら、天に昇っていたところだ。
さっきのはただの剣気で、まだ直接当たっていない。
真正面から食らったら、バーベキューにされていただろう。
徹は再び状態を最大まで高めた。
特に魔法シールドは、もう一度100層に重ね直した。
24秒の時間、チャンスがないわけではない。
徹は幽冥の王の動きを注意深く観察した。先ほどの一撃は威力が大きかったが、速度は比較的遅い。そこに隙がある。
彼の攻撃の後の隙を狙えば、幽冥の王に攻撃を仕掛けられるはずだ。
その隙に攻撃すれば、時間はかかっても幽冥の王を削り切れるだろう。
徹は決意を固めた。
再び攻撃に転じる。
シュッ……
一つの影が幽冥の王へ突進した。幽冥の王は徹が再び襲いかかってくるのを見て、今度は片手で巨剣を構え、徹めがけて一筋の剣気を放った。
四メートルの大剣が天から降ってくる……
徹は素早く回避した。
好機到来。
徹はその機会を捉え、素早く攻め込んだ。
4メートル……
3メートル……
2メートル……
ダンダンダン……
無数の剣気が幽冥の王に突き刺さり、頭上に無数の-1-1-1-1……が浮かび上がった。
もちろん無数のMISSもあった。
MISS……
MISS……
MISS……
幽冥の王は両手で剣を構え、再び千軍一掃を繰り出した。徹は急いで後方に跳んだ。くそ、またこの大技か。
徹は急いで後退した……
徹は密かに時間を計算していた。一撃が終わってから次の攻撃までの間隙は3秒間ある。
つまり、この3秒間を利用して幽冥の王に攻撃を仕掛けることができる。
3秒間は長くもなく短くもない。
しかし徹にとっては十分だった。
徹は幽冥の王のHPを見た。先ほどの一連の攻撃で幽冥の王のHPは直接1000減少していた。
ただし大量のMISSも出ていた。
徹は回避した後、素早く前進し、隙をついて再び幽冥の王に攻撃を仕掛けた。今は攻撃頻度だけを頼りに幽冥の王を倒すしかない。
幽冥の王が再び攻撃を仕掛けてくるのを見て、徹は素早く後退し、攻撃が終わった後の隙を狙って幽冥の王を攻撃した。
-1-1-1-1-1-1-1-1……
MISS、MISS、MISS、MISS、MISS……
徹は同じ動きを繰り返し、幽冥の王のHPバーが徐々に減っていくのを見て喜びを感じた。
しかし次の瞬間、徹は笑えなくなった。
幽冥の王が両手で巨剣を掲げると、HPゲージが一瞬で満タンになった。
徹は唖然とした。
これはどういうことだ?
ここまで戦ってきたのに、こいつはまたHPを回復した?
全く無駄な戦いだったのか。
このクソったれは打ち殺せないゴキブリみたいなものだ。
これは完全に解決策がない。幽冥の王を一撃で倒すしかないが、祭壇内には等級制限があり、それは不可能だ。
こいつのHPは24000もある。一撃で倒せる奴なんているのか。
徹は急いで後退した……
感知範囲から離れ、幽冥の王を見ながら言葉を失った。
幽冥の王は再び座り込んだ。
徹は思案に暮れた。
おかしい。
とてもおかしい。
現在の攻め方では幽冥の王を倒すことはできない。何か見落としている点があるはずだ。
【概要:幽冥の祭壇の王者、誰も彼を倒すことはできない。シールドを破らない限り。】
これは徹が初めて幽冥の王を見たときに読んだ概要だ。
シールドを破らない限り。
徹は幽冥の王の体を覆う黄色い光に気づいた。きっとこの光のせいで幽冥の王を倒せないのだろう。
つまり、この悪夢級のBOSSを倒すには、シールドを破る方法を見つけなければならない。
だがその方法とは?
徹はしばらく途方に暮れた。
悪夢級のダンジョンはそう単純ではない。全て仕掛けがある。いわゆる仕掛けとはBOSSが何らかの力に守られており、その仕組みを破壊しなければBOSSを倒せないということだ。
青星でゲームをプレイする人なら誰でも、これがゲームメカニクスだと知っている。
徹は幽冥の洞窟に入った時のことを思い出した。入り口に二つの洞窟があり、どちらにも入っていなかった。もしかするとその中にBOSSを倒す方法が隠されているかもしれない。
そう考えると、徹は急いで引き返し、自分の予想が正しいかどうか確かめることにした。
徹は最初に来た場所に戻り、分岐点を見て、左側の洞窟に入った……