数人のゴシップ記者が入口でひそひそ話をしていた。
「噂では明石遥がこの部屋で男と密会しているらしい!」
「彼女はまだ無名の女優だけど、密会している相手は新人イケメン俳優の松尾一輝だって!」
「マジかよ!?もし二人の写真が撮れたら、明日は間違いなく大ニュースになるわ!」
明石遥は思わず口元をピクつかせた。
彼女は自分の上に覆いかぶさっている男性を見た。正直なところ、この名目上の夫は、松尾一輝よりも男前でカッコいいじゃないか!
あの新人イケメンの松尾一輝ってやつは、ただの女たらしで、明石遥の好みのタイプですらない。
神様が自分に二度目の人生を与えてくれた以上、以前の明石遥のように評判を悪化させるわけにはいかない。
古賀鳴人が起き上がって去らんとした瞬間、明石遥はさっとその引き締まった腰を抱きしめた。
小さな顔を、彼の広くて堅い胸に埋めた。
清冽で爽やかな、極上なモミの木のような香りが漂ってくる。
明石遥は思わず深く二度吸い込んでしまう。
うん、本当に良い香り!
明石遥の動きに気づいた古賀鳴人の表情は霜が降りるほど冷たく曇った。「明石遥、これ以上俺の忍耐を試すな」
男性の威圧的で圧迫感のある視線に対して、明石遥はまったく恐れを示さず、唇を噛みながら、それまでの高慢な態度から一転して弱々しく言った。「今あなたが出て行ったら、記者たちに私たちが同室していたことはバレてしまうわ。私が古賀奥様という身分を公表するつもり?」
「もうすぐ離婚するのに、古賀四男の元妻というレッテルを貼られたくないの」
「それに……」明石遥は彼の黒いスーツのズボンに視線を落とし、より柔らかく色っぽい声で続けた。「あなたがこのまま出ていったら、ちょっと目立ちすぎじゃない?」
古賀鳴人の胸は起伏し、額の血管が脈打っている。数秒間ばかり、この女を一発で仕留めて永遠に沈黙させてやりたいと本気で思った。
「実は、私は離婚したいだけで、松尾一輝とは何もないの。私は目が見えないわけじゃないもの。彼の男前さがあなたの三分の一にも及ばないし、風格もあなたの四分の一とも比べものにならない!」
「私がずっと自暴自棄だったのは、あなたがあまりにも冷たくて手の届かない存在だったから。私はあなたに相応しくないって思ってた。離婚したら、二度とあなたに関わらないって約束するわ!」
明石遥は以前、唐門で任務を受ける時、様々な役を演じ分けてきた。
色気のある清楚な女性から妖艶な女王まで、彼女は何でもこなせた!
古賀鳴人は無表情で彼女を見つめ、その細い瞳は光一つ通さないほど黒かった。
彼女を審査するような視線は、深遠で測り知れなかった。
これは間違いなく、明石遥が出会った男の中で最もわかりにくい男性だった。
「古賀さん、今回だけ助けてくれない?記者に撮られないように?」
明石遥の言葉が終わるか終わらないかのうちに、記者たちが部屋に押し入ってきた。
まばゆいフラッシュの光が絶え間なく光った。
記者たちは部屋の光景を見て、血が騒ぐように興奮した。
「噂通りだ。明石遥と松尾一輝は本当にやってたんだ!」
「松尾一輝はつい最近テレビで彼女がいないって言ってたくせに、裏では明石遥とベッドインとはな!」
「誰でもいいのに、なぜ評判が最悪の明石遥なんだ!」
「明石遥は業界内の共有物だぜ。松尾一輝も一晩だけのつもりだったんだろ!」
「明日ニュースが出たら、明石遥は松尾一輝のファンにボロボロに叩かれるに決まってる!」
記者たちはカメラを掲げてベッドに近づいた。
シャッターを切ろうとしたその時、ベッド上の男が突然顔を上げ、彼らを直視した。
男性の冷たく怒りに満ちた顔を見て、全員が固まった。
恐怖のあまり、手にしたカメラを落としてしまう記者さえいた。
「四、四男様?」