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「ねぇ ! クロウってば ! 」
クロウは町の中まで来ると、ようやく足を止めた。
夜も遅いと言うのに、酒場や食堂はまだまだ明るく、多くの人が行き交っている。
「無事だったの ? あのね……ダンジョンで ! 」
クロウの声を聞いた瞬間、感情が爆発するようにリリシーの瞳にワッと涙が溢れる。しかし、クロウは素っ気ない態度で一歩踏み込んできたリリシーから距離を取った。
「聞いたぜ。あいつらの事もな」
視線を落とし、足元の小石をにじりながらクロウは答える。
「わたし…… !
……助けられなかったの。どうしても…… ! 」
本来ならリリシーは、慰められ、包容され、気持ちを分かちあって欲しかったはずだ 。しかしクロウの態度に踏みとどまる。
元々減らず口の多いクロウだが、身内に対しての情は強い方なのだ。それなのに冷静すぎる……いや、冷たくあしらわれているのを察する 。
「責めちゃねぇよ。元々レベルの高い場所だったろ」
「……鎧、ありがとう。ピッタリだよ。出来るの待ってから行けば良かったかな……。それならこんな事にならなかったかなって……。未だに二人がいないことが受け入れられないの……」
顔をあげたクロウはまるで狂霊の様にリリシーを見て嗤う。
「それでその体か。匂うぜ。オリビアとエリナの匂いだ」
リリシーはドキッとして後退る。
「これは……」
「宮廷魔術師 ? ミラベルに協力 ?
おめぇ何言ってんだ ? 」
「……それは、まだ保留で……」
要求を飲まなければクロウはここにいなかっただろう。
「ゲスな魔法に手を出したな、リリシー。
てめぇ。外法に仲間を巻き込んで……今度はあの女王の手先になるのか ?
魂まで穢れたもんだぁ」
クロウはミラベルから、全て聞かされた上で城を出て来た。それもかなり事実とは歪んだ事を吹き込まれている。どの道、リリシーに言い訳をする余地は無い。傍から見ればその通りなのである。