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25% 夫のそばで、私は盲目を装い続ける / Chapter 6: 第6話:裏切りの祝宴

Capítulo 6: 第6話:裏切りの祝宴

第6話:裏切りの祝宴

パーティー会場に足を踏み入れた瞬間、葵の耳に飛び込んできたのは華やかな笑い声と、そして――

「依恋ちゃん、おめでとう!」

「お腹の子は男の子?女の子?」

祝福の声だった。

葵の手を引く零司の足取りが、わずかに緊張しているのがわかる。蒼は既に会場の奥へ駆けていき、明るい声で叫んだ。

「ママ!」

その瞬間、葵の心臓が凍りついた。

蒼が「ママ」と呼んだのは、依恋に対してだった。

「蒼ちゃん、来てくれたのね」

依恋の甘い声が響く。そして、零司が葵の手を離し、依恋の元へ歩いていく足音。

「体調はどうだ?」

「大丈夫よ。赤ちゃんも元気」

零司が依恋のお腹に手を置く音。そして、そっとキスをする音まで聞こえてきた。

葵は立ち尽くした。会場の隅、スピーカーの近くに置かれた椅子に座らされ、まるで置物のように扱われている。

「葵さんも来てくださったのね」

零司の母親の声だった。だがその口調には、心からの歓迎など微塵もない。

「ええ、お義母様」

葵は微笑んだ。完璧な、何も知らない嫁の笑顔で。

その時、スピーカーから音楽が流れ始めた。葵のすぐ隣にあるスピーカーのせいで、会場の向こうの会話まで鮮明に聞こえてくる。

「零司、本当におめでとう」

友人の一人が声をかけた。

「ありがとう。やっと、本当の家族ができるよ」

零司の返答に、葵の胸が締め付けられた。

本当の家族。

では、葵と蒼は何だったのか。

「静かにしろよ。葵に聞かれたらどうする」

零司が友人たちを制する声が聞こえた。だがその直後――

「何をそんなに恐れてるの?」

零司の母親の声だった。

「聞かれたって関係ないでしょ。あの女は目が見えないんだから、あんたなしでどこに行けるっていうのよ。依恋のお腹にはうちの孫がいるんだから」

葵の爪が、掌に食い込んだ。

かつて、彼女が零司を助けて怪我をしたとき、一週間寝ずに看病してくれた零司の母親。その人が今、こんな言葉を口にしている。

「俺たちみたいな身分なら、女が何人いるのは当たり前だろ」

友人の一人が笑いながら言った。

「そうそう。葵さんは正妻として大事にしてもらえばいいじゃないか」

葵は静かに座り続けた。表情を変えることなく、ただ聞いている。

もうすぐだ。

あと少しで、ここから抜け出せる。

心の奥で、冷たい決意が固まっていく。

---

「あら、葵さん」

甘い声が近づいてきた。依恋だった。

「一人でつまらなそうね」

依恋は葵の隣に座り、わざとらしく溜息をついた。

「零司さんと付き合って、もう二年になるの。知ってた?」

葵は何も答えなかった。

「別荘で一緒に住んでるのよ。毎晩、愛し合って」

依恋の声に、勝ち誇ったような響きがある。

「お腹の子は女の子。零司さん、とても喜んでくれてるの」

葵はただ、静かに依恋を見つめた。その平静さに、依恋の声が微かに震え始める。

「潔く朽木奥様の座を譲りなさい。そうすれば……のんびり飼われていられるようにしてあげる」

最後通牒だった。

だが葵は、一言も発しなかった。ただ静かに、依恋の目を見つめ続ける。

その時、零司が慌てて駆け寄ってきた。

「依恋、何を話してるんだ?」

「あら、零司さん」

葵が穏やかな笑みを浮かべた。

「依恋さんが、旦那様がとても優しいって自慢してただけよ」

零司の表情が、安堵に変わった。

「そうか。ありがとう、依恋」

依恋は困惑した表情で葵を見つめた。なぜ、この女は自分の挑発を零司に告げ口しないのか。

葵は心の中で嘲笑を浮かべた。

愚かな女。

---

帰宅後、零司はシャワーを浴びに行った。

葵は寝室で、そっとスマートフォンを取り出した。依恋からの嫌がらせのボイスメッセージが何件も届いているが、無視する。

そして、美緒からのメッセージを開いた。

【全部準備完了。兄が予定どおり迎えに行く】

葵の心臓が激しく跳ねた。

ついに、その時が来たのだ。

「葵?」

零司の声が浴室から聞こえた。葵は慌ててスマートフォンの画面を消し、本棚に手を伸ばした。

「本を探してたの」

零司がバスローブ姿で現れ、葵を後ろから抱きしめた。

その瞬間、葵の全身に強い嫌悪感が走った。

「疲れたの。体を休ませて」

葵は冷たく零司を突き放した。

零司は困惑した表情を浮かべたが、やがてベッドに横になった。

深夜。

零司がベッドを抜け出す気配がした。階段を降りる足音。そして、階下の部屋から――

「零司……」

依恋の甘い声と、物音が聞こえてきた。

葵は目を開けた。

明日。

明日、すべてが終わる。


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