藤原悠佑の瞳に溢れる愛情に私は本当に驚いた。
「こ、これは、私と結婚したいということ?」
「だめよ、絶対にだめ。」
「私たちは宿敵同士よ。結婚なんてしたら大変なことになるわ。」
藤原悠佑の表情が一瞬にして曇り、息が詰まった。
苦々しい声で:「何を、言っているんだ?」
彼のその様子を見て、私は心に後ろめたさを感じた。
でも結婚は軽々しく決められることではない。
覚悟を決めて、今日だけは彼を傷つけるしかない。
「藤原悠佑、相思相愛でこそ、共に朝夕を過ごせるのよ。」
「私たちの間に愛情なんてないわ。どうして夫婦になれるの?」
「愛情がないだって?夫婦の契りは既に交わしたではないか。」
「どうして夫婦になれないというんだ?」
私は一瞬言葉に詰まった。確かにこれは私の落ち度だった。
「あの日は確かに私があなたの清らかさを奪ってしまった。」
「必ず機会を見つけて償わせていただきます。財宝でも何でも。」
藤原悠佑はしばらく黙考した。
「では、私の三つの要求を聞いてくれ。」
「それらを全て果たしたら、私たちの縁談は無かったことにしよう。」
彼が譲歩してくれたのを見て、私は即座に承諾した。
すぐに指切りげんまんをした。
「わかったわ。あなたの三つの要求を待っています。」
「今は、それぞれの家に帰りましょう。婚礼の品も持って帰って。」
私はこの馬鹿げた出来事をうまく収めることができたと思っていた。
しかし、あの日の北鎮侯高橋陽介が婚礼の品を届けた件は、結局町中の噂になってしまった。
「月華、外で噂になっているあなたと藤原遭遇のことは本当なの?」
私の姫君の母上様は優雅にライチの皮を剥いていた。
「母上様、あれは藤原悠佑があえて私を困らせようとしたんです。」
姫君の母上様は剥いたライチを小皿に盛って私の前に差し出した。
「お前の従姉妹がもうすぐ嫁ぐのよ。」
「私が用意した結納の品を持って行ってあげなさい。」
そうして私は従者を連れて南洲へ向かった。
「従姉妹が嫁いでしまえば、子供の頃のように気ままに遊ぶことはできなくなるわね。」