兄の若君様、桜井天晴が私の額を軽く叩いた。
「お前ね、後で仕返しだからな。」
兄は叔母と叔父に長い間謝り続けた。
翌日、私を都に連れ戻すと言い出した。
「行かないわ、これは私がやったことだもの。」
「今、外で広まっている噂は、きっとあの人渣のしわざよ。」
「こんな時に従姉を置いて逃げ出すなんて、私、人間じゃないわ。」
「最後まで面倒を見るつもりよ。」
私が頑として動かないので、兄も仕方なく私と一緒に留まることにした。
「一体何がしたいんだ?」
「従姉を地獄から救い出したからには。」
「当然、従姉のために本当の良い婿を見つけてあげないと。」
藤原悠佑は顎に手を当てて、じっくりと考えた。
「南洲の名家の良い若者なんて、私たちは詳しくないだろう。」
「そうね、従姉に都に行く気があるか聞いてみるわ。」
そして私たち四人は一緒に都へ戻った。
「従姉、安心して。都のことなら私が詳しいから。」
「きっと良い婿を見つけてあげるわ。」
婚約が破談になった後、従姉はかえって肩の荷が下りたような様子だった。
ただ笑いながら私とじゃれ合うだけ。
「この都で一番の若者はお前の目の前にいるじゃないか。」
「他を探す必要なんてないよ。」
藤原悠佑は笑いながら煽った。
「自惚れないでよ。あなたなんて、私の従姉に相応しくないわ。」
藤原悠佑は腰の扇子を取り出して、私の頭を叩いた。
「お前、バカなの!」
「この馬車の中には私以外にも、もう一人の男がいるだろう?」
私と従姉の視線は藤原悠佑の顔から兄の顔へと移った。
そうだわ、兄こそが都一番の若者じゃない。
兄は顔を少し赤らめた。
「ふざけるな。」
従姉も頬を染めて俯いた。
私は左右を見比べた。どうやらこの二人には気があるようね。
でなければ、どうして二人とも黙り込んでしまったのかしら。