私は何も言わなかった。鈴木夫人はそういう封建的な人だ。
女は男に依存すべきだと思っている。
価値観が違うなら、無理に合わせる必要はない。
結婚前もそう思っていたし、結婚後もそう思っている。
派出所からの電話はすぐに鈴木夫人の携帯に入った。息子が事件を起こしたと聞いて、夫人は慌てふためいた。
でも彼女はその罪状を私に知られてはいけないと思い、子供の世話を頼むと言って、出かけるところだとごまかした。
私はベッドの上の白くてもちもちした赤ちゃんを見て、ため息をついた。
どう言おうと、子供は罪のない存在だ。
鈴木夫人が事態を解決した後、私は実家に帰った。
そして鈴木誠も戻ってきた。
誠は私を見ると、苦悩に満ちた表情を浮かべた。
「亜紀、俺が悪かった。高橋沙耶の誘惑に負けてしまったことが間違いだった」
私は少し悲しくなった。自分の人を見る目は相変わらず最悪だ。
「正直でよろしい」
私は無表情で誠を見つめた。
誠の顔には耐え難い苦痛が浮かび、近づいて私の手を掴もうとした。
私はすぐに避けた。あまりにも汚らわしい。
「離婚協議書にサインして」
誠は信じられないという顔で私を見た。まるで大罪を犯した人を見るような目だった。
「亜紀、こんなことで俺と離婚するのか?」
私はうなずいた。これほど大騒ぎになったのは、誠と円満に離婚するためだ。
誠は諦めきれずに私を抱きしめた。
「離婚なんて聞こえなかったことにする。俺が悪かったのはわかってる。でもうっかりしただけなんだ。二度とこんなことはしない!」
私はお腹に手を当て、冷たい目で彼を見た。
「あなたの同意を求めているんじゃない。通知しているだけよ!」
言い終わると、私はすでに荷造りした荷物を持って実家に戻った。
誠は追いかけてきたが、両親は彼を見るなり追い出した。
彼は両親の前にひざまずき、苦悩の表情で自分の過ちを認めた。
話しながら、自分の頬を平手打ちしていた。
私は思わず全身に冷や汗が出た。結婚前にどうして彼の本性を見抜けなかったのだろう?