狂気は役に立つものだ。
慕容端は怒り心頭で私に会いに来た。
彼は歯を食いしばった。
「宋沐!お前は一体何がしたいんだ?」
私は片手で顎を支え、慕容端の目をじっと見つめ、突然笑い出した。
私が思い込みすぎていたのだ。皇女である私が、命の恩人に出会ったらどうするだろうか?
相手の身分に相応しい褒美を与えるか、あるいは相手の身分を上げてやるか。
それで十分だ。
なぜ私は慕容端を馬鹿にする必要があったのだろう?
「あなたを救ったのが宋沐ではなく、百里櫻だと確信していますね」
私は衝撃的な言葉を突然口にした。疑問形ではなく、断定的な口調で。
慕容端は凍りついた。
彼の体は石のように固まり、これほど多くの情報を含んだ一言が、私の口から率直に語られるとは全く予想していなかった。
彼の最初の反応は、なんと……
「何を言っているのか分からない!」
「本王」という自称すら使わなかった。
私は肩をすくめた——付け加えると、私の国、つまり鳳臨朝にも礼儀作法の教えはあるが、私は異端児だった。
「その言葉、あなた自身が信じていますか?」
私は首を振って笑った。この軽蔑的な態度は慕容端の怒りを煽った。
「宋沐、そんな怪しげな芝居はやめろ。それに、本王は百里櫻など知らない。白盈盈しかいない」
「こんなことで本王を呼び出すとは、あまりにも馬鹿げている。お前を離縁するぞと言われても怖くないのか?」
宋沐なら確かに怖がるだろう。
しかし残念ながら、私は宋沐ではない。
「宋沐は怖がるでしょうね。きっとそうでしょう。でも残念ながら、私は宋沐ではありません。王様にはもうお分かりでしょう?」
私の心の中で考えていることを、そのまま口に出した。
しかし、私が突然テーブルをひっくり返すように話を変えたことは、慕容端の予想外だった。
彼は慌てて私の視線を避けたが、私は構わず彼に真実を突きつけようとした。
「密かに宋沐を守っていたのは、あなたですよね?」
「宋婉を栄王様の前に引き合わせたのも、あなたでしょう?」
「世間は端王様と栄王様が水と油の関係だと思っていますが、実は二人が早くから同盟を結び、固い絆で結ばれていることは誰も知りません」
「端王殿下は大きな一手を打ちましたね。でも、碁盤の中の人が入れ替わるとは、想定内でしたか?」