ブエルの部屋を除き込むと、あの時市場で見かけた銀髪の猫人族の女性が天井からロープで拘束され慮辱される寸前であった
「ほう・・・それはこういう事かな?」
「ひゃぁにゃぁぁぁん!」
ブエルに媚薬を盛られた猫人族の女性は腕を軽く触れられただけで、艶めいた悲鳴を上げて、目を剝き硬直し痙攣した後力なく項垂れた
「クククク・・・しっかり効いてるじゃないか、良いぞぉ、発情したメスの匂いがする・・・特に此処からな」
ブエルは猫人族の女性の股へと手を伸ばそうとしたその時・・・・・
バッン!!
「!?だ、誰だ!!」
突然の事に驚き振り返るブエル
「き、貴様は!?オーウェル!?な、なんで此処に!」
「黙れ、貴様のしている事は奴隷虐待だ!」
先ほどまでの、あまりにも酷い光景に完全に頭にきていた俺は、此処まで慎重に事を運んでいたにも関わらず怒声を上げブエルに詰め寄る
「だ、誰かぁぁ!侵入者だぁぁ!取り押さえろぉぉぉお!!」
開いてるドアに向け、大声で助けを呼ぶブエル
バタン!
とっさにドアを閉め鍵をかけるリリィ
「き、貴様は穢れたエルフ奴隷!?・・・ゴミの分際で小癪なぁぁ!」
ブエルは、ベッドの方へと駆け出し奥へと飛び込むと
「フフフ、馬鹿共が・・・俺が一人だったら何も出来ないとでも思ったか?」
そう言うと、手にした連射式の小型の弓・・・速射用のボーガンを手に起き上がった
パシュ、パシュ、パシュ
3発の小さな矢を目にも止まらぬ速度で打ち出し、ドアの傍で祈りの体制に入り精霊術を使おうとしていたリリィの入れ墨の入った右肩を打ち抜く
「キャァァァァ」
痛みに右肩を押さえ膝から崩れるリリィ
「リリィ!!」
パシュ、パシュ
リリィの元へ駆け寄ろうとした俺目掛け、ブエルの放った弓矢が鼻先を掠める
「くっ!?」
「クククク、どうしました?オーウェルの御曹司?小汚い呪われた奴隷がそんなに大事ですか?あぁそうですね、もう貴方に残ったのはその穢れたメス豚だけでしたね?、アハハハハ」
「ブエルぅぅぅぅ!貴様ぁぁぁぁぁぁ!」
「おぉ~怖い怖い、怖くてうっかりそこの穢れたメス豚の頭を打ち抜いてしまいそうですよ?」
ブエルはボーガンの照準を覗き込み、膝をついて蹲るリリィの頭部へと狙いを定める
「ま、まて・・・・待ってくれ・・・」
俺は手にしていた、クワを床に放り投げ両手を上げブエルの方へ向きなおる
「待つ?何を待てば宜しいので?御曹司?」
口元を歪ませニヤニヤと笑うブエル
「リリィを・・・これ以上傷つけないでくれ・・・・頼むこの通りだ・・・」
俺は両手をあげたまま、両膝をつきブエルに向かって頭を下げる
「クククク、これは愉快だ、かつて社交界で注目の的だったオーウェル家の御曹司が、たかが奴隷・・しかも呪われた忌子風情の命乞いをする為、プライドを捨て頭を下げるとはな・・・・最高の気分だぁぁぁアハハハハ!!!」
パシュ
ブエルは膝をついた俺の膝元へとボーガンを打ち込み、床に矢が刺さる
「それじゃ、ガーク殿?その穢れたメス豚の命の為に、そのボーガンの矢でご自分の目をくり抜いて貰いましょうか?」
「なっ!?」
足元の矢からブエルの方へと視線を向けると、楽し気に口元を緩ませたブエルが俺に向かって「どうぞ?」と手を差し出している
ここで拒否すれば、ブエルは躊躇無くリリィの息の根を止めるだろう・・・
俺に選択肢は残ってない・・・これも迂闊に部屋へと乗り込んだ俺の落ち度だ
震える手で床に刺さった木の矢を掴み、引き抜くと鋭利な矢じりを自分の右目に向ける・・・
「さぁ覚悟を見せて頂きましょうか?御曹司、あなたの溺愛する穢れたメス豚への愛情を・・・・アハハハハ、さぁブッ刺せよ!この負け犬がぁぁぁ!!」
自分の目に異物を突き刺す恐怖と想像する痛みに気がおかしくなりそうになりながらも、リリィの命がこの震える手に掛かってるいる事への重責に頭の中がグチャグチャになる
すでに、奴隷を救い出そうとか理不尽な事に立ち向かうと言った青臭い正義感は吹き飛び、ただただ思考を押し殺しブエルに煽られるままに、震える手で握った矢を視界の先の捉え
「うぉぉぉぉぉぉ!!」
やぶれかぶれ・・・雄たけびと共に自身の右目へと押し込む
【破ぜるが良い、プロテア(木の精霊)よ】