「篠原景吾、版権を返してください」
私の声は冷たく、一片の温もりもなかった。
「あなたと契約するなんて、一度も言ってないわ」
彼は私の目に宿る決意に押されたのか、眉をひそめ、怒りかけたが、視界の端でピアノの上に並ぶオルゴールに気づいた。
それは彼が以前、次々と私にくれたもので、どれも私が作った曲が入っていた。
彼はすぐに安堵の表情を浮かべ、自信に満ちた笑みが再び顔に戻った。
「星蘭、君が気分を悪くして、僕に当たっているのはわかるよ...」
「でも君の心の中には僕がいるんだ...そうでなければ、なぜ僕からのプレゼントをまだ持っているんだい?」
彼の確信に満ちた視線の中、私はゆっくりとピアノに向かった。
そして、何気なくオルゴールの一つを手に取り、腕を高く上げ、躊躇うことなく窓の外へ投げつけた。
「加藤星蘭、何をする!」
「ガシャン—」
鮮やかな砕ける音は、響き渡る平手打ちのように、篠原景吾の顔にたたきつけた。
私は止まらなかった。
二つ目、三つ目...
次々と響く「ガシャン」という音が、彼と私の間の、最も決定的な鎮魂歌を奏でた。
「加藤星蘭!俺がプレゼントしたものをそんなに大事にしないのか?」
彼は激怒して叫び、最後に「いい」を三回繰り返して、ドアを乱暴に閉めて出て行った。
スタジオの中は静寂に戻った。
私はぼんやりとピアノの前に崩れ落ち、顔の涙を無言で拭った。
この涙は、彼のためではない。
前世で踏みにじられた音楽の夢と、今世でも自分の作品を守れない悔しさのためだった。
契約式の日、結衣は早くから高級なドレスを私に着せてくれた。
スタジオの外で騒がしくなり、篠原景吾はスーツ姿で、リンカーンリムジンに座り、表情は誇らしげで得意げだった。
彼は車の窓を下ろし、見下ろすような目つきで私を見た。「協力しないってツンとしてたのに、どうした?おとなしく俺を待ってたじゃないか...」
彼の視線が私の姿に落ち、突然眉をひそめた。
「そのドレス、うちの会社が用意したものじゃないな...」
「加藤星蘭、随分と大胆だな!メディアの前で詩織の風采を奪うために、無断で服を変えたのか?」
「誰か!加藤さんを連れ戻して、私たちが用意したドレスに着替えさせろ!」
ボディガードらしき二人が前に出て、私を引き連れようとした。